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幼馴染が悪役令嬢の為に王太子殿下になってくれました  作者: みずきあきら


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第29話 涼を求めて。

 王都の夏は暑い。


 日本のようなジメジメした不快感はないが、照りつける日差しはジリジリと肌を刺してくる。

 夏はパステルの方がまだ過ごしやすかった。雪国育ちの私にとって、王都の夏の暑さには酷く魂を削られる。




 涼を求めて、ふらふらと屋敷の中を彷徨い歩く。2階の自分の部屋より、1階に居る方がまだ涼しい。いろいろ検証した結果、玄関ホールが一番マシなことがわかった。風通しもいい。中央にそびえ立つ、巨大な大理石の柱にへばり付く。ひんやりした冷たさが、熱を奪ってくれる。ああ、気持ちいい……一生ここにいたい……


 本当は、地下のワインセラーが一番涼しいんだけど、入り浸っていたら、ワイン通のお父様に見つかって、「ワインの温度が変わる!」と、巨大な拳骨を落とされ、出禁にされた。ワインと娘と、どっちが大切なのよ。




 ぐったりと柱にもたれかかっていたら、

「お前はこんなところで一体なにをやってるんだ!」

 突然、拳骨を落とされて、うとうとしていた頭が一気に覚醒する。涙目で痛みにうずくまると、お父様が仁王立ちしていて、

「はしたない、まったく情けない。お前は侯爵家の人間としての自覚が足りない。そんな格好でお前には慎みというものがないのか!」

「…………お父様、そんなに怒らないで……暑苦しいです……やめてください……あつい……ぁっぃ……」


 またモゾモゾと大理石にしがみ付く。暑さで脳が蕩けているところを、さっきのお父様の一撃でトドメを刺されたわ……

 「いい加減にしなさい」と、首根っこ掴まれて引き剥がされる。いやにゃ〜!


「そんなことではみっともなくて何処にも嫁にやれないな。わかった。王家に婚約のお断りをしてこよう」

「……どうぞお好きに。私は一生この柱と共に生きていきます……」


 スリスリと頬を柱に擦り付ける。もう一生あなたを離さないわ。




「誠に申し訳ありません、殿下。この馬鹿娘のことは見限っていただいて結構。恥ずかしくて王家に顔向けが出来ません」

「もうそのくらいにしてあげてください。婚約を断られたら私が困ってしまいます」


 お父様がアルを連れて来ていて、そんな会話をしているのを、ぼんやりと遠くに聞いていた。


「ある……?」

「大丈夫かい?」

 アルが隣にしゃがんで、顔を覗き込んできた。


「大丈夫なように見えますか。暑くて溶けちゃいそうだよ……」

「ヴィーは暑がりなんだな」

「王都は暑い。パステルに帰りたい。帰っていいかな? いいよね?」

「う〜ん、それは俺が寂しいな」

「じゃあ、アルも一緒に帰ろう?」

「そうしてあげたいのは山々なんだけどね」

 そう言って、頬に触れてきた。


「うわ、ホントに熱いんだね」


 アルの仄かにひんやりした手のひらが心地よく、

「気持ちいい……」

と、うっとりしてしまった。


 アルのもう片方の手を取り、頬に押し付ける。

「気持ちいい……」


 自分の手のひらでアルの頬を包むと、やっぱり仄かにひんやりしてて、

「気持ちいい……」


 アルをその場で押し倒し馬乗りになって、されるがままのアルの首筋に触れながら、気持ちいい……気持ちいい……と、うわ言のように呟き続けた。


「やっぱり私、柱と結婚するの止めて、アルと結婚してあげてもいいよ……」

「それは光栄だな」

 アルは苦笑いしていた。


 アルの服の中に手を突っ込もうとした時、

「無礼だぞ!!!」

と、お父様に思いっきり首根っこを引っ張られて、ギャン!と我に返る。


 私の脳は、やっぱり蕩けているに違いない。

季節にそぐわない話になってしまい、申し訳ありません。

書いていたのがちょうど暑い時期だったので……(言い訳)


話は次回に続きます。

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