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幼馴染が悪役令嬢の為に王太子殿下になってくれました  作者: みずきあきら


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第23話 王宮にて

 翌日から、正妃教育の為、王宮へ通う日々が始まった。


 リベラル・アーツといった、文法学・修辞学・論理学、および算術・幾何学・天文学・音楽に加え、礼儀作法や護身術などを学ぶ。これらは正妃教育の基礎知識らしく、本来ならもっと幼い頃から叩き込まれるものらしい。目が回る忙しさで、正直へこたれそうになりながらの毎日だ。


 同じ王宮内にいるにも関わらず、アルとはすれ違いが続いている。アルは、元々たくさんの公務を抱えているのに加え、今年から学園にも通っている。この国の王立学園は満15歳になる王侯貴族や裕福な家柄のご子息ご息女が数多く入学しており、18歳で卒業するまで通う。私も来年、入学予定だ。




「ヴィーちゃん、お勉強の方はどう?」

「ついていくのがやっとです……」


 私はちょっと泣き言を言ってしまった。


 正妃教育の合間に休憩を挟み、王妃様がお茶に誘ってくださった。王妃様は私を『ヴィーちゃん』と呼び、可愛がってくださる。ありがたいことだ。


「ヴィーちゃんなら大丈夫よぉ。優秀だって聞いてるもの」


 王妃様はゆったりとした口調で話された。穏やかな雰囲気のとても美しい方で、人を惹きつけるオーラを纏っている。私の憧れの方なのだ。


「ヴィーちゃんがあの子を選んでくれて本当に良かった」


 あの子とはアルのことだろう。いつまでたっても子供扱いなことに可笑しくなる。

 ……て言うか、選んでもらったのは私の方ですよ、と謙虚に思っていると、


「あの子、昔からヴィーちゃんのことばかりなのよね。ヴィーちゃんの前だとあんなにも柔らかく笑うの、初めはすごく驚いたのよ。私たちには絶対に甘えたりしない子だから。あんなに表情豊かな子だって、全然知らなかった。貴女には本当に感謝してるの。これからもアルベルトのそばにいてあげてね」

「は、はい。勿論です」


 そう答えると、王妃様は満足気に微笑んだ。




 王妃様とのお茶会の後、どうしてもアルに会いたくなってしまった。今までは仕事中で忙しいのがわかっているから、執務室には極力近づかないようにしていた。ヴィーならいつでも来ていいのに、とアルは言ってくれているが、真に受けないようにしていた。公私は分けなくちゃダメだよね。


 でも、今は無性にアルに会いたい。

 先程の王妃様の言葉が耳に残っている。私にしか甘えられないアル。愛しくて、少し悲しい。


 気がつくと、私はアルの執務室の前に立っていて、ドアをノックしていた。


 「はい」と返事がして、側近のクリス様がドアを開いた。私を見るなりわずかに頬を緩め、

「これはこれは」

 そう言って、

「殿下」

と、中のアルに呼びかけた。


 アルは机に向かって何か書き物をしながらお兄様と話をしていたが、私の姿に気がつくと、目を見開いて途端に顔を綻ばせた。


「ヴィー! どうしたの」


 アルが駆け寄ってきて、強く抱きしめてきたので、ドキッと胸が高鳴る。


「急にごめんなさい」

「どうして謝るの。君より優先することなんて何もないよ」


 手を引かれ、ソファに促された。


「何かあった?」

「ううん、ちょっとアルに会いたかっただけ」


 そう告げると、アルは満面の笑みで、嬉しいな嬉しいな、と髪をこねくり回し頬を擦り寄せてきた。


「もう、ヴィーが可愛くて堪らないよ」

「ふふ。アルも可愛いよ」

「ヴィーの方が可愛いよ」

「アルの可愛さには敵わないよ」


 ……なんだ、この会話。


 若干引き気味に、お兄様が苦言を呈してきた。

「お前ら、いい加減にしろ。ヴィアンカ、お前が来るとこいつの気が散って仕事が進まないんだよ」

「あーヤダヤダ。小舅殿は口うるさくて」

「誰が小舅だ」


 ふふ。アルとお兄様は仲がいいね。




 あまり邪魔をするのも悪いので、そろそろお暇しよう。


「ね、アルの部屋で待っててもいいかな」

「当然だよ。鍵は渡してあるだろ。俺に断らなくても自由に使っていいんだよ」

「うん、ありがとう。お仕事頑張ってね」


 私は執務室を後にした。





 アルの部屋はいつ来ても感嘆の溜息が漏れる。リビングがあって、寝室と書斎とが別に分かれていて、簡易的なシャワールームまで備わってるんだから驚きだ。


 私は書斎の扉を開き、中に入る。壁一面に本が並んでいて、いつ見ても壮観だ。大半は専門書だが、中には小説の類もある。もともと本を読むことは好きなので、この部屋は私のお気に入りだ。書斎なんて勝手に入っていいのかなと最初は思ったけど、好きにしていいって言ってくれたので、遠慮なく自由に入り浸らせてもらっている。

 ズラリと並んだ本をひとつひとつ吟味していると、懐かしい本が目に飛び込んできた。それは小さな頃好きだった恋愛小説で、当時は何度も読み返したものだ。

 アルも恋愛小説なんて読むんだ。意外。ホント可愛いよね、あの人は。ふふ。

 私はそれを手に取り、椅子に座る。座り心地最高な椅子に深く腰掛け、本のページを捲った。




「ヴィー、風邪ひくよ」


 気がつくと、アルが椅子の肘掛けに座って、私を揺さぶっていた。


「あ……ごめん。寝ちゃってた……?」

 目を擦りながら言った。まだ半分寝ぼけてぼんやりする。


「ヴィーは寝顔も可愛い」

 そう言って、アルは軽く頬っぺたをつついてきた。


「君のそんな無防備な姿を見ていいのは俺だけだよ」


 アルが覆いかぶさってキスしてきたので、私はアルの首に腕を回した。




「なに読んでたの?」

と、アルが聞いてくるので、私はニコリと笑いながら、本を見せる。


「アルもこんな本読むんだね」


 中をパラパラと捲った。


「私も大好きだった本。小さい頃夢中で読んだよ」

「知ってるよ。昔、話して聞かせてくれたことあっただろ。ヴィーがそんなに好きならと思って、取り寄せてみた」


 なんと。予想外の答えに戸惑う。


「ヴィーが言ったことは全部覚えてるよ。俺の大切な想い出」

「ええと……」


 私は思わず言い淀んでしまった。


「アルって、ホントに私のこと大好きだよね……」

「なんだ。今頃気づいたの」


 アルは苦笑して、私の頬に指の腹で触れた。


正妃教育にリベラル・アーツは無関係です。多分。

全て妄想です。

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