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幼馴染が悪役令嬢の為に王太子殿下になってくれました  作者: みずきあきら


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第21話 覚悟

 ふわふわとした気分のまま屋敷に入ると、お兄様が真っ赤な顔で仁王立ちしていた。


「座れ」

「何ですか、いきなり」

「いいから座れ」


 帰る早々、玄関先で正座させられるシュールな出来事に遭遇した。

 渋々正座すると、


「今日のあれはなんだ」

「あれとは?」

「公園で! 抱き合ったり! 口づけしたり! 未婚の男女が! お前らはまだ婚約も交わしてないんだぞ!」

「は? 覗いてたんですか? やーらしい」

「なにぃ!? いやらしいとは何だ!」

「別にいいじゃん。初めてでもないんだし」

「な、な、な、な」


 天国のお母様申し訳ありません貴女の娘はこんなにもふしだらな子に育ってしまいましたお許しください罰するならあの男をあの男をぉぉ……

 がっくりと膝から崩れ落ち、おいおいと泣くお兄様。


「大体、お兄様でしょ。私たちを会わせてくれたの」

「あいつが……あいつが……こんなに節操のない奴だったなんて思わなかったんだよぉ」

「お兄様には感謝してます。元気出して」


 私はお兄様の肩をポンと叩いて、自分の部屋に戻ろうとした。


「ちょっと待てぃ。話はまだ終わってない」

「チッ」


 逃げ損ねた。


「ところで、アルベルトは何か言ってたか?」

「何か?」

「あいつのことだから、次の逢引の約束とか取り付けてるんじゃないか」

「だったらどうするの」

「ついて行く」

「はぁ? バカじゃないの。変態」

「変態ってなんだよ」


 この兄ならやりかねない。


「会う約束なんてしてないよ」

「嘘つけ」

「嘘じゃないし」

「あんなにお前に執着してたあいつが、そのまま帰すはずない」

「ホントだって。ひと月したら仕事がひと段落するから、それから迎えに行くって。そこら辺はお兄様の方が詳しいんじゃないの?」


 すると、お兄様は顔を真っ青にした。赤くなったり青くなったり忙しいな、この人は。

 お兄様は私の腕を掴んで唸るような声を出した。


「本当に、アルベルトがそう言ったのか」

「う、うん」

「あンの、馬鹿……」


 肩を落として頭を掻きむしる。お兄様のこんな様子を見たことがなかったので少し不安になる。


「何? 何かおかしなこと言った?」

「……本来ならひと月で片がつくような事じゃないんだよ。少なくとも数ヶ月、下手したら年単位。それをあいつはひと月でやろうとしてるんだろ。無茶苦茶だ」


 お兄様は私の頭をくしゃくしゃに撫で回し、最後にデコピンしてきた。


「お前はあいつと オ レ に感謝しろよ。あ〜あ、明日から地獄だよ。どんだけコキ使われんだろ」






 自分の部屋に入ると、着替えもせず、そのままベッドに倒れ込んだ。


 アルとの再会を思い出し、私は思わず身悶えする。ずっと会いたかった彼は、想像より遥かに素敵になっていた。好きだと言ってくれた。キスされた。1ヶ月後に迎えに来るって、約束してくれた。

 昨日には予想もつかなかった怒涛の一日だった。

 私は枕を抱きしめて身を捩る。


 やっぱりアルが好きだ。


 私は覚悟を決めなければいけない。

 王太子妃になる? この私が? そんなの、無謀じゃない?

 でもアルがそばにいてくれるなら。アルと一緒ならどんなことも耐えられる。そう思った。

 彼はあんなにも私を求めてくれた。私もその想いに応えたい。


 今、私の手の中には、別れ際に手渡されたガラス細工の女神像がある。ずっと欲しくていつも眺めていたものだ。どうしてアルがこれを? ビックリしてアルを見つめると、アルは何も言わず、優しく微笑むばかりだった。


 アルが好き。もう離れたくない。

 アルは私の為にいろいろ頑張ってくれた。犠牲にしたものも多いだろう。


「アル……アルは私が幸せにするからね」


 私の呟きは、空気中に漂い溶けて消えた。

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