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ゲーム世界の悪い魔女に転生した私〜バッドエンドを回避するべく善行を積んでいただけなのに、気付いたらチヤホヤされて人気者になってるんですが?!〜  作者: 閻魔天
風の国エッフェルバルト

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正体不明の来訪者


「これが村長さんの自宅かな⁉︎」


「大きくてしっかりした造りの木造住宅ですね」


「私の実家の一軒家よりだいぶデカい……‼︎」


「レムナ様のご実家……聞こうと思っていたのですが、レムナ様はどこの国出身なのですか⁇」


「え、私⁈」


「はい。おそらくエッフェルバルト出身ではないように思うのですが……その、有名な魔術師の方であれば、聞いたことくらいはあるはずなので」


 魔女レムナの出身地については不明だけど、育った国なら分かっている。

 ブランドール様と共に鍛錬に勤しみ、戦場を駆け抜けていた過去を持つことからも、人生の大半を火(・)の(・)国(・)で過ごしていたはずだ。


「火の国かな⁉︎」


「すぐお隣りの国ですね‼︎」


 まぁ昨日まで火の国にいたわけだが、あの国ではある意味有名人だからね。

 おそらく知らない人いないんじゃないかな⁇


「以前一度だけお仕事で行く機会があったのですが、あんなに大きなドラゴンを見たのは初めてでした‼︎」


「当たり前のように上空を飛んでるからね。エッフェルバルトではお目にかかれない光景だよ」


「襲ってきたりしないのですか⁇」


「うーん、基本的に怒らせたりしなければ大丈夫。見た目は大きくて怖いけど、意外と人間に対して友好的なんだよ‼︎」


「知らなかった……‼︎ わたくし、いつかドラゴンの背中に乗って空を飛んでみたいです」


 こう見えて、エステルって意外と肝が据わってるんだよなぁ。

 実際問題、危ないから竜騎士くらいしか乗れる人いないのよね。


「エステルも自分の力で飛べるようになるって‼︎」


「確かに……頑張って修行すれば、風の力で飛べるようになるのかもしれません」


 魔術は扱い方次第。

 空を飛ぶことだって決して不可能じゃない。


 風属性は直接的な攻撃というよりも、味方をサポートしたり敵にデバフを付与する能力に長けている。


 エステルの装備しているショートソードは、どこにでも売ってるようなランクの低い武器だ。

 だけど、そんな弱小武器でさえ、風を上手く利用することで、斬れ味が一味も二味も変わる。


「じゃあ今度一緒に修行しよっか‼︎」


「はい、是非よろしくお願いします‼︎」


 エステルと話し込んでいると、村長の護衛役の村人に話しかけられた。


「話は伺っております。どうぞ中へ」


 そう言われて、部屋の中へと招き入れられた。


 大きなテーブルと周りに並べられた椅子がある。

 すでに会議の準備は整っているようだ。


「なんだか緊張しますね……⁈」


「会議の内容に関してはまだ何も聞かされてないから、ちょっと身構えちゃうよねー」


 さて、誰が来るのやら。

 私が知ってる範囲の人間ならいいのだけど。

 招かれざる客人じゃないことを願うしかない、か。


 座って待つこと数分、ドアをノックする音と同時に数名の人間が室内へと入ってきた。


「レムナ様、エステル様、お待たせしました。こちらがいつも物資を届けてくださるお方、タルト様でございます」


「……」


 入ってきた人数は五人だ。

 村長と護衛役の村人二名。

 そして、リーダーと思しき人物とその部下一名。


(村長さんからの紹介に反応なしね……気難しい人じゃなければいいのだけど)


 三十秒くらい経ったが、動かない。

 ドア付近から立ち止まったまま沈黙を続けている。


「タルト様⁇ どうかなさいましたか⁇」


「……」


 目深に被ったフードで顔が全く見えないけど、やっぱり正体は隠し通す感じなのかな。

 もしや、極度の恥ずかしがり屋さんだったり⁈


 このままじゃ埒が明かないので、こちら側から挨拶をすることにした。


「今日は……よ、よろしくお願いします‼︎」


「お初にお目にかかります。エステルと申します」


「……」


 フードのせいで表情が分かり辛いが、何故か私を無言でジーッと睨んでいる気がしてならない。

 エステルがわざわざ自己紹介してるというのに、完全無視を決め込んでいる。


 と、次の瞬間、立っている私に対して、素早い動きで詰め寄り、前世でいうところの壁ドンみたいな状態に追いやられてしまった。


 右手に鋭い短剣を持ち、左手で私の服を掴み押さえつけられている。

 身動きが取れない。

 少しでも動いたら斬られる。


「ど、どうか、されました……か⁈」


「邪悪な気配を感じない……何故だ。お前は間違いなく――――悪しき魔女……」


「ひ、人違いでは……ハハハっ…………」


「ウチの嗅覚を舐めるなよ。その顔、その佇まい、そして匂い――――間違いねぇ。お前は罪人として監獄要塞ヘルヘイムに投獄された災厄を撒き散らす邪悪な魔術師の女、罪人レムナそのものだ……‼︎」


 ひぇぇぇえええ……‼︎

 そんな家中に響き渡る大声で言わなくても知ってます、分かってますって……‼︎


 ま、そう遠くない未来に私の正体がバレることは覚悟してたけどさ、こんなに早くみんなの前で暴露されちゃうとは……‼︎


 永遠に感じる沈黙が流れている。


 そんな場の沈黙を打ち破ったのは――――。


「レムナ様がどんな生い立ちだろうと関係ございません。わたくしに取っては、今(・)のレムナ様がどんなお人柄なのかの方が重要なので」


(正体を知っても尚、庇ってくれている⁈ 私、嬉しくて泣いちゃいそうだよ‼︎)


「この女がどんな禁忌を犯したか、分かってて言ってるんだよな⁈」


「えぇ、噂程度には聞いておりますが……」


 エステルは私の正体を知っていた⁈

 気付いてなかったのは私だけ⁈


「なら、どうして庇う。コイツは罪人だぞ」


「最初にレムナ様とお話をした時、直感的に感じました。この人は悪い人じゃないって。貴女の言うような最低最悪の罪人が、見ず知らずのわたくしに手を差し伸べたりするでしょうか」


 本来のレムナなら絶対にしないだろうね。


 エステルと最初に顔を合わせた瞬間、少しだけ顔を歪めたのは気のせいじゃなかった。


「一国の姫様ともあろう人間が、そんな簡単に罪人を信用してもいいのか⁇」


「貴女のおっしゃる通り、わたくしがお人好しなのは認めます。あってはならない罪を犯したのも事実かもしれません。ですが、それもやむを得ない事情があった可能性を否定すべきではないと思います」


(元暁千夏、社会人のゲームオタク。おっしゃる通り、極悪人とかいうキャラではございません‼︎)


 ふと前を見ると、私を壁際に追いやった反動で目深に被っていたフードが取れ、隠していた顔があらわになっていた。


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