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ゲーム世界の悪い魔女に転生した私〜バッドエンドを回避するべく善行を積んでいただけなのに、気付いたらチヤホヤされて人気者になってるんですが?!〜  作者: 閻魔天
風の国エッフェルバルト

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4/10

前世のショッキングな出来事


 ――――ある日のこと。


 私こと暁《あかつき》千夏《ちなつ》は、早朝五時から襲いくる眠気をおして、近所にあるゲーム専門店の入り口前に並んでいた。


 今日は待ちに待った新作ゲームの発売日だ。

昨日の夜は楽しみすぎて眠れなかったので、若干寝不足気味だけれど、早くプレイしたい気持ちが先走って目がいつもより覚醒している。


「ウフフフ、楽しみ楽しみ♪」


 側から見れば、朝っぱらから無駄にはしゃいでいる良い年こいた痛い女だと思われたでしょうね。

 まぁ私は全く気にしないたちなので、周りの目なんてどうでもいいのです‼︎


「にしても、やっと発売日当日かぁ。リリース発表からだいぶ時間がかかったもんねー」


 目的の品は、ファンタジーRPGの新作、セブンソーサリー【七人の英雄】だ。

 競合ひしめくゲーム制作会社の中でも、一二を争う老舗が、長期間の開発期間を設けて作り上げた、まさに至高の逸品とも言える力作。

 必衰のゲーマーとしては、我先にと買いたくなってしまうのだ。


 夏の蒸し暑い陽気の中、意気揚々と店内の様子を眺める私。

 店内は従業員と思われる人たちが、慌ただしくも開店の準備に取り掛かっている様子。

 時間が経つにつれ、自分の後ろにも新作を購入したいが為に、少しずつ列ができ始めていた。


(ふふ、予想通りだね。やっぱ早めに並んでおいて正解だった‼︎)


 ドヤ顔で先頭を陣取っていると、ついに七時の開店時間を迎える。


「待ってましたー‼︎‼︎」


 自動開閉式のドアが開けられると同時に、一斉に人が店内へと雪崩れ込んでいく。


 ここからは早いもの勝ちだ。

 熾烈極まる競争だ。

 経験のない人はこの無毛な争いに驚くこと請け負いだが、場慣れしている私は、この程度の争いで動揺したりしない。


 事前に置いてある場所は偵察済み。

 一直線にセブンソーサリーの場所まで向かう。


「新品ホヤホヤ……いぇい、いっちばーん‼︎‼︎」


 はい、これでも一応大人なんです。

 歴としたキャリアウーマンなんです‼︎


 無事にゲームの確保に成功し、レジに立っているおっちゃんと向き合う。


「これ、買います‼︎」


「お、千夏ちゃん、今日も朝から元気いっぱいだね。はしゃぎ過ぎて帰り道事故らないように気を付けなよ」


「私はもう子供じゃないので大丈夫ですって‼︎」


「俺に取っちゃ、千夏ちゃんはまだまだ子供だよ。なんせ、高校生の時からずっとお店に足を運んでくれているんだ」


「うへへ、私たち、長い付き合いですもんね‼︎」


 たまに割り引いてくれたりするのは凄くありがたいのだけど、いまだに子供扱いしてくるんだよね。

 もう立派な大人のレディになって久しいっていうのに、失礼しちゃうよ‼︎


「ま、今回の新作は定価でしか売れねぇんだ。知っての通り、めちゃくちゃ人気の作品だからな。予約も殺到していて、店内に置ける量も限定的なくらいだ」


「大丈夫ですよ‼︎ 店長がまけてくれるって言っても、私はしっかり定価で買うつもりだったので‼︎」


「相変わらずゲームへの愛が深いな、お前さんは……‼︎ んじゃ、毎度あり‼︎」


 私はゲームが入った小包を片手に、颯爽と店内を出た。


「今日が記念日だね♪」


 大袈裟とか言ってくれるな。

 私に取っては、初めて彼氏が出来るよりも遥かに嬉しいイベントなんだからね‼︎

 まだできたことないけど‼︎


「もぉー、興奮し過ぎだよ、ちなっちゃん‼︎」


「だってぇ、ずっと楽しみにしてたんだからしょうがないじゃーん」


 いきなり隣に現れたのは、私と同じくゲームが大好きな親友の優奈。

 ブラックな会社に根性だけで乗り切ってきた唯一の生き残りであり、同期の女性だ。


 実は今日一緒に並んでセブンソーサリーを購入する予定だったのだが、ゲームを愛する者として恥ずべき失態、まさかの寝坊をしでかしてしまったのだ。


「優奈寝癖ヤバいって。頭のテッペン鏡で見てみなよ、アンテナ立ってるから」


「あ、マジだ。これは過去一酷いかも⁈ てか、ちなっちゃんも服装ラフすぎでしょ‼︎」


「今日は走りやすい服装にしてみました‼︎ んで、戦利品がこれ‼︎」


「おぉぉ、光り輝いて眩しいっ……‼︎」


 二人して、朝っぱらからテンション高めである。


 興奮覚めやらぬままに、私が住んでいるアパートへと向かう。

 家に入るなり、早速ゲーム機を起動して円盤を挿入する。


「うわぁぁぁ、なんて美麗なグラフィック‼︎ エモい‼︎ 可愛い‼︎」


「ちなっちゃん、顔が真っ赤になってるよ‼︎ 少し落ち着いて座りなはれ‼︎」


「確かに、こんなところで度肝を抜かれているようじゃ先が思いやられるよね‼︎」


「体力は温存しておかないと‼︎」


 壮大なBGMと共に現れたのは、超絶リアルなキャラクター達と、その背景に描かれる美しき自然の景色。

 リアル感満載の美麗なグラフィックに魅了されながら、画面に吸い込まれるように、二人して見入ってしまっていた。


「優奈氏……これは壮大な冒険になる予感がするよ……‼︎」


「うんうん、違いない‼︎ 情報通りの出来栄えで思わずひっくり返りそう‼︎」


「こりゃしばらくの間はちなっちゃんの部屋に通うことになりそうだなぁ……‼︎」


「当分の間は完売状態で手に入らないしね。まあ二人でプレイした方が楽しいし、私はいつでも大歓迎だよ‼︎」


「さっすが千夏、ノリが良い♪」


「ふふん♪」


 それからというもの、休日になると、毎回のごとく私の自宅へと通うようになり、二人でセブンソーサリーを着々と進めていくのだが……ある日突然事件は起きてしまった。


 あろうことか、ゲームにしか興味のなかった優奈が……春めいてしまったのだ。


 世間一般では私たちはだいぶ若い部類で、結婚を考え始める年齢だってことをすっかり忘れてた。


 そう、初めての彼氏が出来たらしい。

 この年になるまで、彼氏いない歴イコール年齢を貫いてきた同志が、ついにいなくなってしまった。


 "ちなっちゃんが隣にいるんだから、彼氏なんていらない‼︎"とか、ついこないだまで言ってたのに、ちゃっかり彼氏が出来ちゃってからは、自宅に遊びにくる頻度も減ったんだよね。


 久しぶりに遊びに来たと思ったらさ、前よりもメイクとか服装が女らしくなっちゃってるし、決まってゲームそっちのけで彼氏とのイチャラブストーリーを聞かされたりして、挙げ句の果てには……今度お泊まりデートするんだって‼︎ あぁお熱いことで‼︎


「ふんっだ‼︎」


 別に優奈を取られたなんて、全然思ってないんだから……‼︎


 悔しくなんてないもん……‼︎


 悔しくなんて……‼︎


 悔しく……。


 悔……。











「優奈の裏切り者〜〜〜‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」




 ◆




「裏切り者〜‼︎‼︎」


「わわっ、レムナ様、どうかされたのですか⁈」


 見慣れない天井が広がっている。

 瞬きを数回したあと、心配そうな表情を浮かべる美少女の顔面が目の前に……‼︎


「エ、エステル……⁈」


「はい、エステルですよ。昨日は宿屋へ案内していただき、ありがとうございました‼︎」


「う、うん……こちらこそ‼︎」


 そうだった。

 私はゲーム世界に転生したんだ。

 夢から覚めて、この世界がまぎれもない現実であることを改めて理解した。


 外はもう明るく、日差しが燦々と窓に照りつけていている。ずいぶんと長く爆睡してたみたいだ。


「今日は良いお天気ですね‼︎」


「だね〜、無事に朝を迎えられて良かった〜‼︎」


 エステルのにこやかな笑顔を見ながら、私はベッドから起き上がった。


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