↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲーム世界の悪い魔女に転生した私〜バッドエンドを回避するべく善行を積んでいただけなのに、気付いたらチヤホヤされて人気者になってるんですが?!〜  作者: 閻魔天
風の国エッフェルバルト

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/10

追放


 まさか自分がゲーム世界の悪い魔女になってしまったなんて、夢にも思わなかった。

 どんなルートへ向かったとしても、必ず主人公パーティに倒されてしまう残念な悪役キャラ。

 憎まれ、疎まれ、蔑まれ、非道の限りを尽くした魔女は、どうあっても消え去る運命にある。


 バッドエンドだ。

 言い換えれば、主人公に取ってのハッピーエンド。 それ即ち、私の死を意味する。


「うわーん‼︎ なんで私がこんな目に‼︎」


 ゲーム内における罪人レムナ・フローレンスは、ブランドール卿に斬られたことで強固な憎しみを抱き、主人公一向に立ちはだかる極悪非道な魔女として度々邪魔をしてくる厄介な敵である。


 だけど、私に復讐心は一ミリもない。

 それどころか、愛でられたい。

 カッコよくて美しく、気高く崇高な存在、私が愛してやまないブランドール卿に愛でられたい‼︎


 憎しみ⁈ 復讐⁈ あり得ない‼︎

 むしろ、ちゃんと謝らせて。


 一緒に数多の戦場を駆け抜け、互いに切磋琢磨しながら世界の平和のために強大な敵を打ち倒す。

 そんな儚い願望も序盤から呆気なく崩れ去り、完全に敵対してしまっているのが何とも悲しい現実だ。


「私の煌びやかな第二の人生は、もう終わってしまったのね……」


 悪役キャラとして名を馳せる魔女レムナの生い立ちに関しては、攻略本でいくらか目にしたことがある。


 捨て子だったレムナは類稀なる魔術の資質を見出され、強力な魔術を操る家系として高い実績を有する、フローレンス伯爵家の養子として育てられてきた。

 幼少期の頃から魔術の才能が開花し、無尽蔵な魔力量と卓越した技術力によって、レムナは次第に周りから一目置かれる存在となっていく。

 同時に、レムナの魔術に関する探究心は日に日に増していき、ついには完全に魅入られるようになってしまっていた。


 そんな折、偶然出会ってしまった黒の書物。

 禁忌とされる闇の術式が刻み込まれている経典の一つである。

 この世界では、黒の書物を読み解くことは固く禁じられている。


 厳重に警備された禁書庫の封印を破り、禁を犯したがため、レムナは罪人として罰を受け、辺境の地へと追放された――――。



 ◆



 そして、ブランドール卿に斬られてから一週間という長い昏睡状態から回復した私は、目の前にある豪華な鏡をマジマジと眺めていた。


「うわぁ、どっからどう見てもレムナ本人じゃん‼︎」


 何度も顔をつついてみたり、引っ張ったりしてみたが、やっぱり正真正銘、魔女レムナだった。


 真っ黒な髪の毛が特徴的で、如何にも邪悪な魔術師といった風貌の女が映っている。

 信じたくはなかったけれど、改めて自分が誰なのかを再認識して絶望している。

 まさか大好きなゲームの悪役キャラに転生してしまうなんて、夢にも思ってなかったからね。


 少なくとも、生前の私は悪事を働くような物騒な人間ではなく、どちらかと言えば真面目な部類に入るただのゲームオタクだったはず。

 休みの日なんて一日中ゲームに没頭したりするくらいだから、インドア派なのは間違いない。

 増してや杖を振り回してブランドール様と戦うなんて……無理無理、絶対無理〜‼︎


「なんでよりにもよって最低最悪の魔女に転生しちゃうかなぁ。神様も意地が悪いよね」


 鏡に映る自分は邪悪な魔女でしかないが、よくよく見てみると、キリッとした目鼻立ちでスタイルもそこそこな美人さんだ。

 王国直轄の騎士団総隊長である、あのブランドール卿とも双璧を成した過去を持つのも頷ける風貌だ。


「見た目だけは……ね」


 上半身のはだけて破れかかっているローブはそのままの状態になっている。


 替えの服くらい置いといてくれてもいいじゃない、何日お風呂入ってないと思ってるのよ‼︎


 とは言え、前世の私、暁千夏では考えられないようなプロポーションには驚かされる。

 とても豊満な…………いやいや違うって。

 注目すべきはそこじゃないでしょ。

 首筋からヘソ下辺りまでを一刀両断された傷跡が、痛々しくも残っている。


「一生残りそうな傷だよねぇ。さすがにゲーム世界の回復魔術で治療してもらってるから、一週間で綺麗に塞がってはいるけど……」


 王城に勤めるプリーストの素早い応急処置によって、ギリギリのところで一命は取り留めたものの、やはり傷痕が完全に消えることはないみたい。

 思い返してみれば、レムナの胸元に切り傷のような痕が残っていたような⁈


 まぁ、一人の女としてはあまりにもショッキングではあるけれど、あの巨大な炎剣で切り付けられて命があっただけでも幸運というべきかもね。


 レムナとブランドールの戦いは、サブストーリーとして若干触れられてはいたものの、実際にはゲーム内では出てこないシーンだ。

 言わば、この二人の戦いは、私が初めて経験するイフのエピソードということになる。


「レムナは敵として登場するシーンでしかお目にかかれないし、レムナの生い立ちとか全く興味がなかったからね」


 今の私は間違いなく罪人だ。

 だけど、手錠や足枷の一つも付けられていない無防備な状態にある。

 牢屋に投獄されているわけでもなく、ごく普通の部屋でゆっくり過ごせているし、とても罪人を捕らえておく場所には見えず、自由そのものである。


「もっと早い段階で転生していれば、こんなことには……あぁもう、神様の馬鹿、バカぁぁ‼︎‼︎」


 ブランドール様は本来心優しき武人であり、裏切り者である私に、ここまでの温情を与えてくださったのが身に染みる。


 あの人にもう一度会って謝りたい。

 事情を話せば分かってくれるかも⁈

 いやいや、既に悪さをしまくった後なのだから、どんな言い訳をしても手遅れだ。


 だけど、未来は変えられる。

 ゲームでは追放されたあとも、ひたすら悪事を働く大罪人として世に悪名を轟かせていくのだが、そうはならない。


 私は善行を積む。

 そして。


「ブランドール様とイチャイチャ……失礼、一緒に冒険するのです‼︎」


 力強く意気込んだのも束の間、物々しい足音と共に部屋の扉が開かれる。


「出立の準備が整った。直ちに正門前へと向かうぞ」


「は、はい‼︎ 承知しました‼︎」


「んっ、貴様らしくもない振る舞いだな。今更そのように取り繕ったところで、罪が軽くなるわけでもあるまいに」


 突如部屋に入ってきた数人のゴツい騎士に驚く間もなく、半ば強制的に外へと連行されて部屋をあとにする。


「ちょっと‼︎ か弱い女の子に乱暴しないで‼︎」


「はぁぁ⁈ 貴様がか弱いだと⁈ 馬鹿も休み休み言うんだな」


「私は、暁千夏二十二歳独身彼氏いない歴イコール年齢のか弱い女‼︎ まぁ彼氏なんていらないけど‼︎」


「ふ、そのように心神喪失状態を装っても無駄だ。忘れたわけではあるまい、貴様が色んな男を誑かしてきた事実を……‼︎」


「し、し、知りません、何も‼︎ 私は魔女レムナじゃなくて、暁…………」


「ええぃ、罪人は黙って我々に着いてくればいいんだ‼︎」


 強引に手を掴まれて引っ張られた。

 けど思ったより痛くない。

 てか、全然痛くない‼︎

 ブランドール様のチート力に比べたら、赤ん坊に毛が生えた程度のレベルだ。


 この場で反抗してメタメタにしてやるのも一つの選択肢だけど、さすがに次は百パーセント処刑でしょうね。


「ほら、早く歩け。情けない姿を民に見られたくなければな」


「分かったから強く引っ張らないで‼︎」


 王城を出て、たくさんの民に見られながら巨大な都市部を抜けていき、これまた大きな正門の前へと到着した。


「罪人レムナ、最後に言い残すことはあるか⁇」


 この国は私の育った場所とも言える。

 皆に憎まれながらも、伯爵家の魔導士として色々とお世話になった事実は変わらない。


 おもむろに問いかけられた私は、咄嗟に自分自身の本音を吐露した。


「罪を償い、再びブランドール様と共に戦える日がくることを、心から願います……‼︎」


「貴様、ふざけているのか⁈ 冗談でもそのような弁を述べるような人間ではなかったはずだが……いいや、騙されんぞ。何を言おうと、罪人レムナの追放は筒がなく執行される。この王都から遠く離れた辺境の地にて、自らの行いを悔い改めるといい」


 そう言うと、前もって止めてあった馬車のようなカゴ車に乗せられ、騎士の間に挟まれる形で座らせられた。

 馬によく似た魔獣が馬車を牽引して動き出す。


 ちょっぴり淡い期待を抱いていたけど――――やっぱり追放されました‼︎


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。