↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰の世界の機巧士  作者: yakumo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/40

二年後

『試合終了』


『勝者――アシュラ』


 場内表示が切り替わった。


 僕はすぐに端末を開く。


「またそれか」


 隣で迅が呆れたように言った。


「最後の回避、少し遅かった」


「Cランク戦で勝った直後なんだけどな」


「勝ったことと、問題があることは別だから」


「二年前から変わんねえなあ」


 二年前。


 アシュラがFランクで初めて闘技場に立った時も、似たようなことを言われた。


 あれから。


 二年が経った。


     ◇


 十八歳になった。


 僕と迅は、今も探索士を続けている。


 依頼を受ける。


 探索する。


 浪華へ来た時には、アシュラを闘技場へ出す。


 戦闘記録を工房へ持ち帰り、調整する。


 そして、また戦う。


 それを繰り返してきた。


 アシュラの闘技場ランクはC。


 Fから始めて、E、Dとシーズンを重ねながら上がってきた。


 そして。


 僕と迅の探索士ランクは、B。


 少し前に、二人とも昇格審査を通った。


 Bランクになって変わったことはいくつもある。


 その一つが。


 端末だった。


     ◇


 浪華を出て、黒瀬へ向かう。


 町からかなり離れたところで、端末が震えた。


「律」


「うん」


 迅も気づいたらしい。


 僕は運転したまま、端末を迅へ渡した。


 普通なら。


 ここでは通信なんて入らない。


 一般の端末が使えるのは、基本的に町の中だけだ。


 でも。


 Bランクへ昇格した時、協会から新しい端末を支給された。


 見た目は、それまで使っていたものとほとんど変わらない。


 違うのは。


 町の外でも、通信できることだった。


「協会から」


 迅が画面を見る。


「やっぱ繋がると便利だな」


「うん」


 僕たち二人しかいないから、こうして普通に使える。


 でも。


 この端末のことは、誰にでも話していいわけじゃない。


 存在を知っていいのは、基本的にBランク以上。


 Cランク以下の探索士や一般人の前では、町の外で通信機能を使わないように言われている。


 Bランクへ昇格した時。


 そのことは、かなり強く念を押された。


 理由も聞いた。


 町と町の間には。


 一般には知られていない通信網がある。


 黒瀬。


 浪華。


 京洛。


 六甲。


 それぞれの町にある協会や行政、研究機関。


 重要な施設同士が連絡を取るためのものだ。


 町と町の間には、通信を繋ぐ中継局が点在しているらしい。


 主要な道から外れた場所。


 人がほとんど近づかない場所。


 正確な位置は、僕たちにも知らされていない。


 電源は中継局ごとに確保され、普段の点検は整備機巧が行う。


 定期的に人間の整備班も入る。


 そして。


 重要な設備だから、警備用の機巧も配置されているという。


 故障した中継局の修理や、その護衛がBランク以上の依頼として回ってくることもあるらしい。


 僕たちの端末は。


 その通信網へ接続できるようになっている。


 ただし、どこでも使えるわけじゃない。


 中継局から離れすぎれば切れる。


 山の裏や地下でも繋がらないことがある。


 それでも。


 町を出れば完全に連絡が途絶えていた頃とは、大きな違いだった。


「内容は?」


 僕が聞く。


「帰ったら協会に来いって」


「それだけ?」


「ああ」


 迅が端末をこちらへ向ける。


 黒瀬探索士協会。


 短い文面だけが表示されていた。


 ――久世律、橘迅。


 ――帰還後、探索士協会へ来訪されたし。


「指名かな」


「たぶんな」


 Bランク以上の依頼は、一般の依頼一覧には出ない。


 そもそも人数が少ない。


 必要な探索士を協会側が選び、直接話を持ってくる。


「内容くらい送ってくれてもいいのにな」


「外で見られたら困る依頼なのかも」


「ああ。そっちか」


 迅が端末を返してくる。


 画面を閉じる。


 二年前。


 僕たちは端末に並んだ依頼を見ながら、次に何を受けるか考えていた。


 今は。


 協会から呼ばれる側になった。


「帰ったら、そのまま行く?」


「うん」


「アシュラの調整は?」


「明日やる」


「珍しいな」


「依頼の内容が気になる」


「結局、好奇心じゃねえか」


 迅が笑った。


 僕は前を見る。


 黒瀬までは、もう少し。


 二年前。


 砲脚を前にした僕たちは。


 逃げることしかできなかった。


 あの頃から。


 僕たちは少しずつ力をつけてきた。


 探索士Bランク。


 闘技場Cランク。


 まだ上はいる。


 ずっと上に。


 それでも。


 二年前と同じ場所には、もういない。


 端末には。


 協会からの呼び出しが残っていた。


 Bランクになってから初めて受ける、本格的な指名依頼だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。