↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰の世界の機巧士  作者: yakumo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/40

力をつける

 砲脚との遭遇から二日。


 南西方面の一部は、協会によって危険区域に指定された。


 調査依頼も一旦停止。


 砲脚については、Aランク以上の探索士を対象に、非公開で討伐依頼が出されたらしい。


 当然、僕たちの端末には表示されない。


「Aランク以上か」


 迅が呟いた。


「それくらい危険ってことだね」


 Cランク四人が遭遇して、二人が死んだ。


 普通の銃ではほとんど歯が立たず、僕たちも戦わずに逃げた。


 今の僕たちでは、どうにもならない。


「律はどうしたい?」


「どうって?」


「もう南西行くのやめる?」


 僕は少し考えた。


「やめない」


「だよな」


「でも、今のまま奥へ行くのは危ないと思う」


 砲脚だけじゃない。


 もっと奥へ進めば、同じくらい危険な機巧がいるかもしれない。


 その時も逃げるしかないのは嫌だった。


「いつか、あれも倒せるくらいにはなりたい」


 迅が笑う。


「じゃあ、力つけるしかないな」


「うん」


     ◇


 必要な装備を少し調べただけでも、今の僕たちに足りないものは多かった。


 普通の銃では、大型機巧の装甲には通用しない。


 徹甲榴弾。


 対装甲用の手榴弾。


 もっと大きな火力を持つ武器。


 僕自身も、拳銃だけでは何もできない。


 迅もR20より強力な武器を考え始めている。


 アシュラにも、まだ手を入れたいところはいくらでもある。


 問題は。


「高いな」


「高いね」


 強い装備は高い。


 今すぐ全部揃えるのは無理だった。


「結局、稼ぐしかないか」


「依頼は続けよう」


「Dランクになって、前より報酬も上がったしな」


「それと」


 僕は工房の奥にいるアシュラを見る。


「闘技場」


「やっぱ出す?」


「うん」


 元々、そのつもりで改装した。


 それに今は、もう一つ理由がある。


「戦闘データも欲しい」


「ああ」


 今のアシュラは、大きく手を入れたばかりだ。


 まだ、この状態でまともに戦ったことがない。


「探索中に試すのは危ないから」


「失敗したら俺たちも巻き込まれるしな」


「闘技場なら、実際に戦わせられる」


 戦えば記録が残る。


 どの動きに無理があるのか。


 どこに負荷がかかるのか。


 何が使えて、何が足りないのか。


 工房へ持ち帰って、それを直せる。


 そして。


「勝てば金も入る」


「なるほどな」


 迅が笑う。


「依頼と闘技場、両方で稼ぐか」


「うん」


「しかもアシュラも強くなる」


「そのつもり」


「一石二鳥だな」


「もっとあるかも」


「欲張るなあ」


     ◇


 翌朝。


 僕たちは黒い四駆にアシュラを載せて、浪華へ向かった。


 数時間後。


 浪華機巧闘技場。


 前に来た時とは違い、今日は出場者用の入口へ車を回す。


 アシュラを荷台から降ろし、受付へ向かった。


「新規登録です」


「機巧も一緒ですね。では、こちらで受付します」


 職員が端末を操作する。


「機巧名をお願いします」


「アシュラ」


「所有者は?」


「久世律です」


 職員が入力していく。


「それと、試合時の表示についてですが」


「はい」


「機巧名と所有者名のほかに、一枠だけ所属先や改装工房、スポンサー名を表示できます。どうしますか?」


 少し考える。


「久世工房でお願いします」


「久世工房ですね」


 入力が終わる。


 画面に表示された。


 機巧名――アシュラ。


 所有者――久世律。


 表示――久世工房。


「新規登録はFランクからになります。このあと実地審査です」


「分かりました」


     ◇


 審査はそれほど時間がかからなかった。


 指示された動作を順番にこなし、最後に戦闘を想定した動きを確認する。


「アシュラ、前へ」


 走る。


「右」


 進路を変える。


「車輪」


 足元が滑るように動き、アシュラが横へ移動した。


 僕は端末に表示される数値を見る。


 まだ少し姿勢が揺れる。


 背部腕の追従にも、わずかに遅れがある。


 直せそうだ。


「楽しそうだな」


 少し離れたところから、迅が言った。


「そう?」


「めちゃくちゃ」


 自分では分からなかった。


     ◇


 審査を終え、しばらく待つ。


 やがて受付端末に結果が表示された。


 ――審査合格。


「正式登録になります」


 職員が手続きを進める。


 画面が切り替わった。


 機巧名――アシュラ。


 所有者――久世律。


 表示――久世工房。


 闘技場ランク――F。


「登録完了です」


「ありがとうございます」


 僕は画面を見る。


 F。


 一番下からのスタート。


「ついに出るのか」


 迅が横から覗き込む。


「うん」


「目標は?」


「まず戦ってみたい」


「ランクじゃなくて?」


「今のアシュラが、どこまでやれるか知りたい」


「やっぱそっちか」


 迅が笑った。


 砲脚には、まだ届かない。


 今の僕たちでは、戦うことすら難しい。


 でも。


 依頼をこなす。


 闘技場で戦う。


 金を稼ぐ。


 装備を整える。


 アシュラも強くする。


 一つずつでいい。


 いつか。


 あの巨体を前にしても、逃げる以外の選択肢を持てるように。


 そのための一歩が、ここから始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。