51.もう一つの衝撃
「ーー以上が、全てだ」
アレクシスが全てを話し終え小さく息を吐く。リシェルの方を向き、頭を下げる。
「リシェル嬢。…今まで長らく苦しめた事、王家を代表して謝罪させてもらう。ーー王家のせいで君の…母君の人生を狂わせ、君を長い時間苦しめ続けてきた。……本当に、申し訳なかった」
リシェルが慌てふためき両手を胸の前で振る。
「い、いえ…!そんな、と、とんでもないです!頭をあげてくだ…」
「正式な謝罪は追ってさせて欲しい」
リシェルは目を瞬いた後、上げていた手を握り少し俯く。そして、ゆっくりと顔を上げ、クラウスの顔を見る。目が合うと僅かに首をかしげ微笑むクラウス。ついで、侯爵夫妻、セレナ、グレイと、ゆっくり見つめた後アレクシスに向き直る。
「ーーーーいえ…必要ありません」
「なぜだ?」
頭をあげ、アレクシスが問う。リシェルは段々小さくなる。
「…確かに、怖かったし、苦しかったです。このまま、皆と離れ離れになるって……でも…助けて、くださいました。生んでくれた母の事は、悲しいですが…お父様と、お母様が、大切に、守ってきてくださいました。……それに………私は、今……」
アレクシスをまっすぐに見て言う。
「幸せですから……」
ふわりと笑うリシェルに一気に場が和む。
「リシェル…」
「お、お姉様…うっ…」
セレナと夫人は半泣きだ。
「……君は、そう言うだろうな。…取れるものはぶん取ってやればいいのに」
「く、クラウス様……!」
クラウスの突然の容赦ない発言にリシェルは慌てふためき、一同吹き出してしまう。
侯爵はやや遠い目をしている。
若干引きつりながらアレクシスが気を取り直したように言う。
「リシェル嬢……。寛大な配慮に感謝申し上げる」
アレクシスが再度小さく頭を下げてからリシェルを見て言う。
「ガルディア達は全員逮捕した。もうこれで君たちを脅かす存在はいなくなったはずだ。今後同じ過ちを2度と繰り返さないように尽力していく。…これからは、堂々と陽の当たる場所で、クラウス殿とともに幸せになって欲しいと願う」
「はい…!ありがとうございます」
リシェルが目に涙を浮かべて頭を下げる。
「団長さんも、ありがとうございました…」
頭を下げるリシェルにジークフリートが微笑む。
「いやいや、私は何もしとらんよ。……しかし、いつも仏頂面で鬼だの氷だの呼ばれているクラウス君が惚れたのがこんなに可愛いお嬢さんだなんてな」
「うるさいですよ団長」
皆もそれぞれに王太子、ジークフリートに頭を下げ礼を言う。皆で喜びを分かち合い、リシェルとセレナは抱き合って喜んでいる。それを周りの皆は微笑ましく見ていた。
◇
和やかな空気の中、アレクシスが少しそわそわし始める。ややあって、戸惑いがちに切り出す。
「………それで、今度王家主催の夜会で正式な即位の発表を行おうと思う。それに、ぜひ皆で出席していただきたい」
侯爵は夫人と視線を交わし、戸惑いがちに答える。
「それは……リシェルも、でしょうか…」
「もちろん」
リシェルは困惑し、クラウスに助けを求めるように視線を送るが
「いいんじゃないか。俺がエスコートする」
「エ、エスコート……無理です!」
「ドレスはもちろん贈る」
「きゃー!お姉様、よかったです!やっと一緒に参加出来ますね!とびっきり綺麗にしてもらいましょうね!」
さらっと言われてリシェルの顔が真っ赤に染まる。セレナが何も言えないリシェルを見てにやにやしていると、ふと、王太子が近づいてきてセレナの前に立つ。
「……その、」
真っ直ぐセレナを見る。
「…え、私ですか?」
「ーーーもし、君に、決まった人がまだいないなら………」
わずかに言いづらそうに俯いたが、いったん言葉を切り、決心したように顔を上げる。
「私に、エスコートさせてもらえないだろうか」
ーーー沈黙。
「えええええーーーーー!?」
全員の声が見事に重なった。




