表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北棟に隔離されていた令嬢、騎士団副団長との出会いで運命が動き出す~隠された秘密と家族の真実~  作者: 冬野 灯
第四章 平和な日常の終わり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/50

31.運命的ですね


 轟音がして、屋敷正面広間が半壊した。クラウスの一撃によって、石床が大きく抉れている。


「ぐぁっ!?」


 王宮魔術師達が吹き飛ばされた。圧倒的だった。ただ剣を振るっただけで、空間ごと叩き潰される。魔術師たちでは手も足も出ない。


「化け物……!」

「こんなに強いとは…!副団長の過去の戦闘記録以上だぞ……!」


 だがクラウスは止まらない。群青の瞳には明確な怒りが宿っていた。クラウスにとってリシェルを狙った、その一点だけで、既に許容範囲を超えていたのだ。

     

 一方、ルヴァインは静かにその姿を見つめていた。


「……興味深い」


 彼の目には全く恐怖がなく、むしろ研究者特有の好奇心が滲んでいる。



「感情による出力上昇…しかも理性を維持したまま」


 普通の魔術師なら暴走しかねない魔力量だ。だがクラウスは制御している。鳥肌がたった。不敵な笑みを浮かべながら言う。


「貴方も十分、研究価値がありますね」

「気色悪いな」


 クラウスは冷たく吐き捨てた。


「人を実験動物みたいに見るな」

「事実でしょう?」


 ルヴァインは笑う。


「才能ある者は研究されるべきだ。国家発展のために」

「だから子供を壊したのか」


 そういうとルヴァインの笑みが薄れた。


「…十八年前の研究、お前も関わってたな」

「ええ」


 あっさり認めた。


「当時はまだ助手でしたが」


 王宮魔術院で行われた禁忌研究計画。

 『原初の魔喰い』生成実験。


「成功寸前だったんですよ」


 ルヴァインの声音は、どこか恍惚としていた。


「あと少しで、人類は新たな段階へ進めたんです。それなのに…」

「その結果、王都半壊か」

「何を仰ってるのですか?いつの時代も、進歩に犠牲はつきものじゃないですか。歴史がそれを証明していますよね?」


 クラウスの殺気が膨れ上がる。


「外道が」


 ルヴァインは気にした様子もなく鼻で笑う。


「ふ。……ですが、唯一の成果が残った」


 その瞬間。

 クラウスの目が細まる。


「……リシェルか」

「ええ」



 ルヴァインは愉しそうに笑った。


「完璧ではない。だが、限りなく成功例に近い。彼女は奇跡ですよ!暴走を繰り返しながら、人格を維持している」

「黙れ」

「しかも貴方と共鳴まで起こしている。実に興味深い」

 

 ルヴァインの目に狂気を感じた。いや、狂気そのものだ。こいつは狂っている。研究対象を見る目。人として見ていない。

     

「……絶対に渡さない。お前なんかに研究対象にされてたまるか」


 クラウスの声は静かだった。だが底知れない怒りがある。ルヴァインは肩を竦める。



「…残念です、本来なら協力者になれたでしょうに」

「なるわけないだろ!」

「愛は非合理ですね」


 その時だった。突然、クラウスの胸が熱くなる。


「……?」


 魔力共鳴。

 リシェルだ。不安、恐怖、そして、

 『助けて』


 言葉にならない感情が流れ込んでくる。

 クラウスの目が変わった。

     

「もう時間切れだ」


 彼の魔力がさらに跳ね上がる。空気が悲鳴を上げた。


「なっ……!?」


 ルヴァインが初めて目を見開く。速い、さっきまでとは別次元。クラウスは一瞬で距離を詰めていた。


「ぐっ……!」


 ルヴァインが防御障壁を展開。

 だが。


 バキィン!!

 障壁ごと斬り裂かれる。


「馬鹿な……!」


 吹き飛ばされたルヴァインが壁へ叩きつけられる。王宮魔術師達が騒然となった。


     ◇


「撤退だ!!」


 誰かが叫ぶ。


「副団長が本気だぞ!!」


 恐慌状態だった。クラウスは剣を構えたまま、冷たく見下ろす。


「次は殺す」


 ルヴァインは口元の血を拭ったが、その目には怒りより興奮がある。


「素晴らしい」


 狂気じみた笑み。


「やはり貴方は鍵だ」

「……何?」

「リシェル嬢が安定する理由。それは貴方の魔力が『対』だからでしょう」


 クラウスが眉を寄せる。ルヴァインは立ち上がりながら続けた。


「原初の魔喰いには、本来“制御核”が必要だった。つまり貴方達は、最初から一対だった可能性がある」



 クラウスはぞっとした。空気が止まる。



「……何を言ってる」

「魂結びは偶然じゃないかもしれませんよ?」


 ルヴァインは笑う。


「運命的ですね」


 言い終わらないうちに転移魔術が発動した。光に包まれながら、ルヴァインは最後に囁く。

「必ず迎えに来ますよ、リシェル嬢」


 そして姿が消えた。



     ◇



 静寂が戻ってくる。


 クラウスは険しい顔で立ち尽くす。最悪だ。王家は本気でリシェルを狙っている。しかも、自分とリシェルの関係まで把握し始めている。


「……急がないと」


 クラウスはすぐ踵を返した。まずは彼女を安心させる。今はそれが最優先だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ