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北棟に隔離されていた令嬢、騎士団副団長との出会いで運命が動き出す~隠された秘密と家族の真実~  作者: 冬野 灯
第三章 少しずつ変わる日常

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21/50

21.好きすぎて困っている

しばらく更新出来てなかったのでこの後続けて投稿します!良かったら見ていってくださいm(__)m

「ミレイナのこと気にしてるのか?」

 

 図星だった。リシェルの顔が一気に熱くなる。



「ち、違……!」

「違わない顔してる」


 クラウスがわずかに笑みをうかべながら遮る。リシェルは完全に言葉を失った。


 …近い、顔が近い!

 真っ直ぐ見つめてくるから誤魔化せない。心臓がうるさい。みるみるうちに顔に熱が集まっていく。


「その……」


 どう言えばいいのか分からない。すごく気にしていたし、胸も痛い。今だって2人の姿を思い出すだけで泣きそうだが、それを認めてしまうのが怖い。しかも近い。この気持ちをどう表現するのかも分からない。そして近い。リシェルは完全にパニックで半泣きになっていた。

     

 クラウスはそんな彼女をじっと見つめていた。耳まで真っ赤だし、視線は泳ぎっぱなし。涙目になって何かを言おうとしてはやめる。



 …分かりやすすぎる。

 

 そして、妙に嬉しい。つい顔が緩んでしまう。


「リシェル」

「……はい」

「嫉妬か?」

「っ!!!!」


 リシェルが勢いよく後退った。


「ち、違います!!」

「本当に?」

「ほ、本当にです!」



 全く説得力がない。クラウスは口元を押さえた。笑いを堪えている。



「な、何で笑うんですか……!」

「いや」


 クラウスは珍しく楽しそうだった。


「可愛いなと思って」


 リシェルの思考が停止する。


「…………え?」

「嫉妬してる、可愛い」



 笑顔でさらりと言われた。



 ーーもう、無理だった。

 心臓が限界を迎える。


「か、からかわないでください……!」

「からかってない」

「絶対嘘です!」


 リシェルは顔を覆った。恥ずかしくて死にそうだ。誰か助けて…。

     

「ふ、安心しろ。ミレイナはただの幼馴染だ」


 リシェルはそっと顔を上げた。


「……そうなんですか?」

「…ああ、くっ。昔から、ふ、兄妹みたいなものだ」


 すぐに顔をあげ安心したような表情に思わず吹き出しそうになるのを我慢しながら言う。可愛すぎだろ。吹き出さない俺を誰か褒めて欲しい。本当なら撫で回したい。


 リシェルは笑いを堪えているクラウスにムッとしつつも胸の奥が少し軽くなる。自分でも驚くほど簡単に。クラウスはそんな彼女を見て、さらに確信する。ーーやはりリシェルは、おそらく自分のことが好きだ。だが本人はまだ自覚しきれていない。今まで恋をしたことがないのだろう、それも至極当然だ。長い間閉じ込められていたのだから。

 

 そう思うと妙に愛しくなった。

     

「リシェル」

「……はい」

「一つ聞いていいか」


 低く穏やかな声。

 リシェルはどきどきしながら頷く。


「君は、俺が他の女といると嫌か?」


 直球だった。



 リシェルは言葉に詰まる。嫌だった、胸が苦しかった。でもそんなこと言えるわけがない。


「……う…、わかり、ません」


 やっと絞り出した声。


「ただ……」

「ただ?」

「苦しく、なりました」


 小さな告白だった。クラウスは目を細める。愛しさで胸がいっぱいになる。


「……ふ、それは嫉妬だな」

「うぅ……」

 否定出来ない。

 リシェルはもう俯くしかなかった。


 するとクラウスが不意に手を伸ばす。そっと彼女の髪へ触れた。


「クラウス様……?」

「安心した」

「え?」

「君は俺に興味ないんじゃないかって、少し不安だった」


 リシェルが目を見開く。


「そんなこと……!」


 あり得ない。むしろ好きすぎて困っているくらいだ。だがそれを口にする勇気はない。それ以上は言えないが必死に否定するリシェルにクラウスは小さく笑う。


「ならよかった」


 その表情が優しすぎて、リシェルはまた胸を押さえる。こんなの反則だ。



     ◇



「お姉様ー!」


 突然、遠くからセレナの声が響いた。二人が振り返る。セレナは何故か全力疾走してきていた。


「大変です!!」


 クラウスが眉を寄せる。


「どうした」

「お母様が!」


 セレナは息を切らしながら叫ぶ。


「『娘の恋愛相談に乗りたい』って張り切り始めました!!」

「…………」



 一瞬、空気が止まった。

 リシェルの顔が真っ赤になる。



「なっ……!?」

「しかもお父様まで『男を見る目は大事だ』とか言い始めてて!」

「やめてぇぇぇ……!!」



 リシェルはしゃがみ込んで頭を抱えた。恥ずかしい、死ぬほど恥ずかしい。

 クラウスはしばらく呆然としていたがーーやがて吹き出した。



「ははっ……!」



 もうダメだ、限界だ…!珍しく声を上げて笑う。リシェルはさらに赤くなる。



「笑わないでください……!」

「悪い」


 全然悪いと思っていない顔だった。

 クラウスは笑いながら、くしゃりと彼女の頭を撫でる。


「でも嬉しいな」

「……何がですか」

「君の家族に認められてるみたいで」



 その言葉に。リシェルの胸がまた温かくなる。家族、恋愛。…未来。少し前まで想像も出来なかったものが、今は、すぐ傍にあるような気がして。


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