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前回のあらすじ
ミミカちゃん達に見られたよ
「しっかし、ランクアップ試験ねえ〜」
ギルドを出てしばらく通りをブラブラと歩く。
しかし、ミミカちゃん達ギルドの受付嬢に見られながらは、流石のおれもキスをすることなど出来るはずもなく、泣く泣くシルクちゃんの家へと帰る事にした。
あの後、ロココちゃんが、わーきゃー騒いでいたが受付嬢はニマニマした表情で笑っていた。ミミカちゃんだけは羨ましそうな視線だったが。
さてと、シルクちゃんの家に帰る前にちょっくら、試験の準備でもしますかな。
そう思い、冒険者御用達のよろず屋に向かおうと踵を返そうとした時だった。
「舐めてんじゃねぇぞっ!!!」
怒号が聞こえてくる。丁度、踵返す方だった。
「…………何だ? 喧嘩か?」
声がしたのは建物と建物の隙間、まだ昼過ぎたってのにもう酔っ払いか? おれは気になったので遠目でよく見てみると、どうやら違うっぽい。酔っ払い同士の喧嘩だったらどうでもいいかと思ったが、これは捨て置けないぞ。
何故なら、絡まれているのが美少女だったからだ。おれはそっと建物の壁際まで近づき、様子を伺う事にした。
美少女をよく観察してみると、これまた美少女だということがわかる。燃えるように赤い髪をツインテールにして、怒鳴った男を睨んでいる瞳は灼眼。体型はこれから成長を期待した子供体型。とまぁ、とにかく目も醒めるような美少女具合だ。
「しかし、何をそんなに怒っているんだ? あの男は……」
しばらく様子を窺っていると、話の内容は大体理解できた。
どうやら、あの男と美少女はパーティを組んでいたらしいが、報酬の分け前で口論になっているらしい。美少女の方は取り分が少ないとか、男の方はお前の働きだったらこれでも多い方だみたいな。そう言ったことを口々に言っている。
おれはあの男と美少女について、よく知らないからな。客観的に見れない。おれとしては、もちろん美少女に味方したいが。
と、何やら様子がおかしくなったきた。剣呑な雰囲気だ。すると、男が美少女の発言に頭に来たのか、得物のブロードソードに手をかけた。
「……まずいな」
流石に美少女が傷付けられるのを見逃すわけにはいかない。
おれは彼女たちに声をかける事にした。
「おい、街中で殺傷沙汰はやめてくれ」
「──誰だ!」
おれの声に反応して振り向いた冒険者の男。丸刈りでなかなかいかつい顔をしている。こんな男に食い下がるとは美少女はかなり気が強いと見える。
「おれが誰でも良いだろう? それよりお前、今、その剣を抜こうとしたろ? 街中でその様な行為は認められていないぞ」
「うるせぇ!! オメェには関係ないだろ!! 引っ込んでろ!!」
これは話のわからん奴だ。こうやって大声を上げて相手を威嚇する奴は無駄にプライドが高い奴が多いからな。面倒この上ないし、自己中心的で相手をする方は溜まったものじゃない。こんな相手は無視するに限るが、今回ばかりは美少女がいる為、放っておくことはできない。
「関係なくないぞ? おれは美少女の味方だからな」
「──はぁ? オメェ何言ってんだ? 頭おかしいのか?」
「いや、本気だぞおれは」
いや、ちょっと待て。確かにいきなり現れて(おれは美少女の味方だ)なんて言う奴がいたらどう思うだろうか? 想像してみると、結構やばい奴だった。
確かにこの男に言う通り、おれはやばいやつかかもしれない。だが、この男にどう思われようがおれにはどうでもいい、本当にどうでもいい。が、美少女にやばい奴と思われるのは頂けないな。……さて、どうしたものか。
「本気か何か知らねぇが、これはおれとこいつの問題だ!! 口出しすんじゃねぇ!! すっこんでろ!!」
「ちゃんと、話し合いだけで決着が付くならおれも出てはこなかったさ。だが、お前が剣に手をかけたから出てきたんだ」
「うるっせぇな!! ただ剣に触れただけだろうが!! 抜くつもりなんてサラサラねぇんだよ!! ぶっ殺すぞオメェ!!」
冒険者の男と口論になる。
いまいちこの男が言っていることはよく分からないが、多分一言で言うと(すっこんでいろ)と言うことなのだろう。
だが断る。
おれは美少女とまだ一言も話していない。美少女と会話できるまでおれはここに居続ける所存です。
すると冒険者の男が剣に手をかける。こいつやる気か? 街中で抜刀するとか頭がイカれているとしか思えないな。しょうがない、ここはおれの《頑丈》チートの出番だな。
「おらぁ!! しねぇ!!」
冒険者の男がおれに向かって剣を振り抜く。
だが、常時《頑丈》チートを発動しているおれは腕でその一撃を受け止める。
ガァキィィィィィン!!!
激しい金属音が鳴った。
生身の腕な当たってなる様な音ではないな、これ。冒険者の男は目を見開いている。まぁ確かに剣で切ろうとしたのに、生身の腕で受け止められたらそうなるよな。わかるよ?
だが、無抵抗のおれに剣を向けた事についてはそれ相応の報いは受けてもらおう。おれの伝家の宝刀、腹パンでな。
おどろきにとまどっている冒険者の男。
その男の懐に一瞬で入り込み、鳩尾に腹パンをクリーンヒットさせる。
「ぐぅおおっっ……」
ドサっと倒れる冒険者の男。
どうやら気絶してしまった様だ。まぁあの腹パンはバジリスクですら耐えられないようだからな。人間如きが耐えられる筈がないな。もりろん手加減はしっかりしているが。人間に向かって本気の腹パンをした日には身体が弾け飛んでしまうぞ。腹パンしてから思ったが、コイツどうしよう。
「…………やっちまった」
後悔先に立たず、と言う言葉はこう言う時にふさわしいのかもしれない。しかし、おれはしっかりやった上で後悔している。やらずに後悔するよりはやったほうが何万倍もマシだ。
と、誰が聞くわけでもないのに、言い訳を一通り考えていると、
「あんた、よくやってくれたわ!」
「…………ん?」
美少女の方へ振り向くと、腰に手を当て、仁王立ちになった彼女と目があった。その瞳は爛々と輝いていて、とても印象的だった。
美少女はツカツカと倒れた冒険者の男の方へと向かうと、しゃがみ込み男のバックを漁る。おうおう、ヤベェなコイツ。気絶している相手のバックをいきなり漁るとは……。まぁ気絶させたのはおれだけれど。
まぁ、話を盗み聞いていた時、何やら報酬は最初山分けって事になっていたらしいからな。この男がその通りにしなかったのが悪いっぽいし別に良いのかなとおれは思う。取り敢えずおれは基本的に美少女の味方だからな。
「あったわ! これよこれ!」
美少女がバックから取り出したのは硬貨が入った袋だった。ジャラジャラ音がするから多分そうだろう。その袋に頬擦りするとニンマリを顔を緩ませ、半分だけ自分の懐に入れて残り半分を男のバックへとまた戻した。
「……普通に戻すんだな」
「当たり前じゃない、私は最初の約束をただ守っただけよ。それよりあんた、何者? そこの倒れている男、私よりはよわいけどそれでもDランクよ? それをあんなに簡単に倒すなんて……」
彼女はいぶかしげな表情を浮かべている。どうやらかなり怪しんでいるらしい。
「ただの通りすがりの冒険者だぞ?」
「うそ、ありえないわ。だってあの男が倒した一撃が全然見えなかったもの。この私がよ?」
この私がよって、こいつなんでこんなに偉そうなんだ? 初対面のおれに対して普通にタメ語だし。初対面の人には敬語で話さなければいけないというルールを作って欲しいな。
タメ語になるのはある程度親しくなってからだな。まぁでも? 美少女だから少し言葉遣いがきつくても全然許せるけど、同じことを男がしたら腹パンだけど。




