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前回のあらすじ
《鑑定》のスキルロールをもらったよ
おれは、部屋の中央にあるソファーへと腰掛ける。ロココちゃんもおれの隣へと座った。え? 隣? と思ったがこのような美少女を隣の侍らせられる機会のそうそう無いと思ったので口には出さなかった。
「それとマナブくん、もし良かっただけど──ランクアップ試験を受けてみる気はないかな?」
「ランクアップ試験?」
なになに? ランクアップ試験とな? おいおい、おれはついこの間Fランクすっ飛ばしてEランクになったのに、もうランクアップか。そんなにポンポンあげても大丈夫なのか?
「そう、ランクアップ試験。取り敢えずマナブくんにはCランクの試験を受けてもらおうと思うのだけど……いいかな?」
「ん……まぁ、問題はないが……いいのか? また一段階飛ばしてランクアップさせても」
「それは問題ないよ? 何か言われてもわたしが全部責任を持つからね♪ そこは気にしなくても大丈夫だよ? と、言うかマナブくん程の実力者をEランクにしておく方がおかしいよ」
「そうか、まぁ評価してくれるのはありがたいな。それで、試験内容は?」
「試験はハチミツ採集だよ」
ハチミツ採集ときたか……。それだけ聞くと何だか他愛もない試験のような気がしてくるがそうではないのだろうな。
「Cランクの試験だ、そんなに簡単ではないんだろう?」
「それは勿論! ハチミツと言ってもただのハチミツじゃないからね♪ スクロースの森にいる《キラービー》の巣から採ってくるのが今回の試験内容だよっ」
キラービーねぇ……。聞いたことがないモンスターだな。まぁハチミツ採集っていうくらいだからやっぱ蜂だよね、見た目。日本では小さな蜂だけどこの世界ではマジでデカそうだな。ハチミツもたんまり採れそうだ。余ったらシルクちゃんにプレゼントしようかな。
「それで、試験は何時ごろ開始なんだ?」
「試験は二週間後の朝、ギルドの前に集合だよ。それまでに準備とか色々済ませておいてね?」
「あぁ、わかった」
試験は二週間後ね。サクッと試験を突破するか。そして、この世界に来て甘い物を食べる機会グッと減ってしまったのでこれを機に何か甘い物で作って、可愛い美少女達を誘ってお茶会でも開こうかな。マナブ主催のティーパーティーってな。
おれがもう試験を潜り抜け、美少女達と戯れるシーンを妄想していると、ロココちゃんが何やら言いたそうにこちらを見つめていた。全然気がつかなかったぜ。
「ん? どうしたんだ?」
「……えっとね、その試験なんだけど……ちょっとマナブくんにお願いがあるんだ……」
「お願い?」
お願いとは何だろうか? まぁロココちゃんの頼みならいくらでも叶える所存ではあるけれど。おれのできる範囲でのことに限るがな。
ロココちゃんは言いづらそうに、少し顔を俯かせながら困ったように語り出した。
「うん、実は今回のランクアップ試験何だけど、もう一人受ける子がいるんだ」
「そうか、それは別に構わないと思うが、何か問題でもあるのか?」
一体何が、ロココちゃんをこんなにも困らせているのだろうか? ちょっと、いや、かなり知りたくなってきた。
「ちょっと一緒に受ける子に問題があってね。いい子なんだけど、何ていうか、こう、コミュニケーションに問題があるっていうか……」
「コミュニケーション……ね」
要するに、コミュ障ってやつか。まぁそれをいうなら、おれもそれ程コミュ力が高いとはいえないけどな。美少女にはグイグイ行くけれど。
そもそもフィーリングが合わない相手と無理に仲良くする必要はないと思うんだ、おれは。みんな仲良くとか、無理に決まってんだろ。自分を好きでいてくれる人とだけ付き合っていればいいとおれは思うな。
人生は嫌なやつと付き合ってるほど長くはないからな。もっと有意義に時間を使っていきたいところだ。
「……それで? ロココちゃんはおれにどうして欲しいんだ? その冒険者のお守りでもすればいいのか?」
「そうだね、有り体にいえばそういうことになるね。あの子一人だとかなり無茶をするだろうし、何より今回の試験の難易度はあの子一人でどうにかなるレベルを越えているからね」
「そうなのか? その子の実力がどれほどのものか知らないからおれは何ともいえないが、今回の試験はそこまで厳しいのか……」
これはしっかりと準備を整え、試験に臨むべきだな。うんうん、気合いを入れてハチミツをゲットしよう。それで美少女達とお茶会だ!
すると、ロココちゃんがおれの手を取って、上目遣いで見つめてきた。彼女のくりくりっとした瞳におれの姿が映り込む。女の子の柔らかい手の感触がおれの手を包み込んだ。
「それでね? さっきマナブくんが言った通り、その子が無茶しないか見張っておいて欲しんだ」
「それは別に構わないが……それだとその子為にならないんじゃないか?」
「そうだね、確かにそうなんだけど、わたしはね、その子には今回の試験でパーティで戦う大切さを知っておいて欲しいと思っているんだ。一人の力じゃ限界があるんだよって教えたいんだよ。だけどあの子はなかなかわかってくれなくてさ、実力のあるからしょうがないところのあるんだよね」
「なるほどな、実力があるが故にという事か……おれもソロばかりで人のことは言えないが何とかやってみようと思う」
「本当に!? ありがとう!」
ガバッと抱きつくロココちゃん。ふわりと軽い感触がおれの胸元に収まる。やっぱり本当に軽いな、全然無駄な肉とかついていないんだろうな。
「しかし、ロココちゃんはちゃんと食事を取っているのか? めちゃくちゃかるいぞ?」
「えぇ? そうかな? わたしこれでも結構ガッツリ食べる方なんだけど」
「そうが? ほら、こんなに簡単に持ち上がるぞ?」
おれは、ロココちゃんの脇に手を入れ、グイッと持ち上げる。ほとんど力を入れずに上がった。いや、本当軽いな。
「わっ! ちょっとマナブくんっ! お、おろして!」
「っと、ごめんな。いきなり持ち上げて」
おれは膝の上にロココちゃんを下ろす。ちょうど向かい合うような感じになった。結構この体勢は見る人によっては勘違いをされる可能性があると思うのだが、気にしないでおこう。この銀髪美少女を膝の上に置けることなんてなかなかないことだろうからな。
「んもう、ダメだよ? これでもわたしはギルドマスター何だから。威厳ってものがあるんだからね?」
人差し指をたて、ぷんぷんとかわいく怒るロココちゃん。全然怖くない、あと威厳も全然ないぞ。言わないけれど。
おれの膝の上に乗っている事については全然言及しないのな。まぁおれとしてはこのままの体勢で話した方が嬉しいが。
「でも軽すぎじゃないか? もっと食べた方がいいぞ?」
「そうかな? でもこことかお肉が結構ついてると思うけど……触ってみて?」
と、ロココちゃんは二の腕のぷにぷにしている。見た感じそんなには肉は付いていない気がするが彼女に取っては違うのだろう。彼女からお触るの許可が出たので有り難く触らせてもらいます。
ぷにぷに……。
「…………ん、やんっ」
「……………………」
とても甘美な声が上がった。
自分で出した声なのに、かなり恥ずかしかったのかロココちゃんの顔は真っ赤に染まっていて、ぷるぷると小刻みに震えている。
おれはそんなロココちゃんを御構い無しに、二の腕を触り続ける。
「…………や、んぅ」
「……………………」
二の腕の感触はおっぱいの感触だ! みたいな噂を聞いたことがある。つまり二の腕を揉むことはおっぱいを揉むことと同意なのである!!
しかし、ロココちゃんはこう感じやすい体質なんだな。二の腕を触っただけでこんなに反応するとは……。
こう言っている間も、おれは膝の上にいるロココちゃんの二の腕を愛でている。ぷにぷに。
「…………マナブく……ん」
「…………ロココちゃん?」
何やらロココちゃんの瞳が潤み、艶のある表情を浮かべ、おれの顔を見つめた。何か獲物を見つけたような表情だった。
彼女がどんどん綺麗な顔をおれの方へと近づけてくる。このままだとキスしてしまそうだ。これはまずいのではないか? いやまぁおれとしてはキスするのは吝かではないが。
いや、逆にしたいくらいなのだが、こんなギルドマスターの執務室でこのような行為をしてしまって、果たしていいのだろうか? 許されるものなのだろうか? まぁ誰が許す許さないの判断を下すのかはさておき、誰も見ていなきゃ問題ないだろうと、そう思うおれもいるわけで……。
目の前にこのような銀髪美少女がキスしようと迫ってきているのに、ここで拒むことこそ万死に値するのではないだろうか?
よし! ここはキスしてから後々のことは考えよう。そうおれが決めてロココちゃんと受け入れる体制を整えつつあったところ……。
ソファーに座っている後ろの方から、何やら複数の視線に気がついた。後ろを振り向くとドアの隙間からミミカちゃんを筆頭に受付嬢の女の子達が複数こちらを覗き込んでいた。おれに釣られてロココちゃんもドアの方を見る。ビクッと震えるロココちゃん。どうやら彼女も気づいたようだ。
そして、おれの視線に気づいたミミカちゃんが一言。
「お構いなく続きをどうぞ、なのです」
「……………………」
「……………………」
いや、こんな状態では無理だろ。
どう言い訳したらいいのだろうか……いい言い訳が出てこないおれだった。




