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銀河太平記   作者: 大橋むつお
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396『陛下、うちの神社で誓いやがる』

銀河太平記 


396『陛下、うちの神社で誓いやがる』 ハナ 





 経費節減というか予算が無えというかで、氷室神社に本殿は無え。


 柱と屋根だけの拝殿があるきりだ。


 あ、本殿てのは神さまが居るところな。神さまは目に見えねえからよ、ふつうは玉とか鏡とかのご神体を置いて、いや、祀ってるとこな。拝殿てのは、人が神さまを拝むとこだ。


 それで、氷室神社は屋根以外は柱しか無えって神社なんだ。


 海辺の神社なんで風の強いときは、屋根を床まで下降させる。まあ、その分屋根だけは立派で、その凝った作りのせいか、風が拝殿に共鳴してウォンウォン音がして、聞きようによっては神さまの御託宣ぽく聞こえやがる。


 島の偉い奴らを引き連れた陛下は、えらい奴らの前に立って気を付けした。


 バサリ バサリ


 シゲ爺が幣を振って恭しくお払い。


 それから、お決まりの二礼二拍手一礼。


 シゲ爺が「かけまくも畏きぃ……」って祝詞をあげやがる。


 そんで。


 ハナは拝殿の板敷をシズシズ進んで。後にも先にもこれしか知らねえ巫女舞を舞う。


 

 天地あめつちの~ 神にぞ祈る~  朝なぎの~  海のごとくに~  波たたぬ世を~♪



 前にも言ったけどよ、普通にやったら10秒もかからねえ『浦安』を5分かけて、チョー静かにゆっくり舞う。   


 あ、どこの神社でも浦安は5分はかけるんだぞ。うちだけがトロトロやってるわけじゃねえ。するとよぉ『海のごとくに~』ってあたりから、なんだか体が熱くなってきやがる。


 ハナの体はよ、目につくとこはメグミがきれいにしてくれたけど、見えねえとこはツギハギだらけ。そのツギハギのとこが熱くなってきてよ、なんか噴きだしそうってか、自分じゃねえ何かが湧いてきてアップテンポになって、シゲ爺もそれに合わせやがって、三回も舞っちまった! そのあいだ、陛下も島のみんなも文句も言わねえで調子を合わせやがるしな。


 ハナが舞い終わると、陛下は静かに回れ右して、島のみんなの方を向きやがる。


「高祖高祖、八百万の神々もご照覧くださっていることでしょう。これより、わたくしの決意をお伝えしたいと思います」


 あらかじめ打ち合わせてあったのか、ツギの親父がハンベにタッチすると、仮想カメラが陛下の前に現れやがった。


「西之島全島民のみなさん、そして日本中、世界中のみなさん……」


 え、ネット配信してんのか!?


「わたくし、ただいまは西之島氷室神社の前に居ります。つい今しがた、氷室神社の拝殿を通して、皇祖皇宗、八百万の神々にお誓いいたしました」


 誓った……え……なにを?


「本日、ただいまを持って、玄武守扶桑道興げんぶのかみふそうみちおきを摂政に任ずることをお伝えし、日本と世界に浦安のような平和を招来させることを誓いました」


 ええ!?


 みんな驚いて、ハナも瞬間はビックリしたけど、すぐに——あ、そうかぁ——って理屈じゃなくて腹に落ちるものがあったぜ。


「わたくしの体は、二宮親王がやったように、PIした義体なのです」


 ええ!? 腹に落ちた、それよりも深いところから直球の陛下!


「わたくし、子供のころから病の種を抱えていましたので、即位する前から万一のために義体が用意されていました。幸い、国民の皆さん、周囲の人々の励まし、お世話のお陰で、ここまで無事に過ごしてまいりました。しかし、先般、舞鶴において重篤な症状に陥ってしまい、今のこの身体にPIせざるを得なくなりました。むろん、ここに宿るソウル、魂は紛れもなく皇祖皇宗から受け継いだ、わたくし自身のものであります。しかし、心身合一。心あっての体、体あっての心。皇嗣である心子は火星から、さらに彼方の星を目指して銀河宇宙を突き進んでおり、万一の時に間に合わぬのではと心配いたします。また、一見健やかに見える義体ではありますが、いつ、ソウルが損なわれ、形骸となってしまうかもしれません。ソウル、魂の無い形骸となってしまっては、今以上に国内は混乱し、諸外国にも迷惑をかけてしまいます。そのために、わたくしと同じく成治天皇の五世孫である玄武守を摂政に任じ、静養に努めようと考えた次第です」


 居並ぶ島の偉い奴たち、カメラの向こう、ハンベとかの端末で見ている奴らを思い浮かべて、話を続けやがる。


「本来ならば皇室会議にかけ、また衆参両院と国民の皆さんのご賛同を得るべきなのですが。みなさんご存じのように、国内では皇統をめぐる争い激しく、国の境では外国による武力干渉を受けております。可及的速やかに、この混乱と脅威を取り除くため、わたくしの意思で決めることにいたしました。なにとぞ、玄武守にご協力いただき、日本が浦安の歌の通りに平安の道を進んでいかれるよう祈念いたします」


 陛下が静かに頭を下げて、みんなはそれ以上に頭を下げて、中継は終わったぜ。



 

☆彡主な登場人物


大石 一 (おおいし いち)    第一師団曹長、一をダッシュと呼ばれることが多い

穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府書院番士 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子

緒方おがた 未来みく     第一師団軍医、一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中だった

平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 

加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない

姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡

扶桑 道隆              扶桑幕府将軍 

扶桑 徳子             道隆の御台所

扶桑 道興             玄武守、道隆の弟、二人の息子(道次・道忠)と娘がいる

本多ほんだ 兵二へいじ     書院番士小姓頭、彦と中学同窓

胡蝶                元小姓頭 将軍直属の隠密

児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ

孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 東鈴(妻) 悟遼(息子)

テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      

森ノ宮茂仁王            心子内親王はシゲさんと呼ぶ

ヨイチ               児玉元帥の副官

マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)

アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)  銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン

氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)

村長マヌエリト          西ノ島 ナバホ村村長

主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者

及川 軍平             西之島市市長

須磨宮心子内親王ココちゃん    今上陛下の妹宮の娘

劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ

王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI

胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女

栗 尊宅りつそんたく       元輸送船の船長  大統領秘書官

朱 元尚 少将           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

三枝さえぐさ仲夫        元上海領事館二等書記官 朱のブレーンの一人


※ 重要事項


扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ

グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略

扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信

西之島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地

御山       西之島の火山

パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)

氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王

ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス

奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟

         

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