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銀河太平記   作者: 大橋むつお
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395『マイさんの重すぎる話』

銀河太平記 


395『マイさんの重すぎる話』 ハナ 





 オイドが戻ってきたのに気づくと、陛下は神社を素通りして溜まり場に戻っていきやがる。むろん辺境伯もだし、東鈴ママも悟遼を抱っこしたまま後に続きやがったぜ。


 ちぇ、せっかく上等の巫女服に着替えたのによ!


 仕方ねえ、天冠(ここ一番て時の巫女用の冠)を外して千早(ここ一番て時の巫女用上着)を脱ごうとしたら、いつの間にか戻ってたシゲジイがしゃくでオイデオイデしてやがる。


「え、シゲジイも正装か?」


「ああ、陛下が何事か大事のお祈りに来られる様子だったんでな。着替えるのは後だ、マイさんの表情がマジすぎる」


「じゃ、急ごうぜ」


「いや、ここで見ていよう」


 笏の手元を触ったかと思うと、50インチの仮想モニターが出て溜まり場を映したぜ。


「え、溜まり場は機密特Aだぜ」


「特Aにしたのは儂だ、かまわん」


「そうか、それなら……」


 

 大モニターの前、静かに、でも、厳しい顔でマイさんは立ちやがったぜ。


『さっき、東京会病院の記者会見があったわね』


 みんなが頷くと、マイさんは深刻な表情になって続けたぜ。


『じつは、やまぶき幼稚園からの連絡で……』


 やまぶき幼稚園というのはシマイルカンパニーが買い取って、マイさんが秘密基地にしてるところだ。マイさん元々は児玉元帥、元の部下どもを半分に分けて、半分は北海道でロシア軍を食い止め、残り半分はヨイチ准尉が指揮して諜報活動をやってやがる。


『ヨイチ准尉の報告では、二宮殿下はPIの前に薨去されている』



 え………!?



 ハナもシゲジイも息をのんだぜ( ゜Д゜)。


『画面に映った二宮殿下にソウルは無い、あれは殿下の個性とスキルをコピ-しただけのロボット、いえ、機械人形』


「そんな……」


 社長が絶句しやがる。


『PI用の義体は技研(国立技術研究所)の試作品を使う予定だった。最終調整のために病院長が技研に向かったけど、パルス機の事故で死亡したわ』


 ただの死亡じゃねえ、みんなも分かってる。けど、問題はその先だろうぜ。みんなも、そのまま話を聞く。


『おそらく、院長は殿下が死亡していたのを知っている。院長は殿下の主治医だったしね。あの病院を支配しているのは漢明の朱元尚、胡盛徳大佐の部下だった男』


 ああ、あいつ、島にも来て情報盗んでいったゲス野郎!


『それなら、殿下がただの機械人形であることを知らせればいいんじゃないかしら』


 メグミが怖い顔で言いやがる。ハナもそう思うぜ。


『それが……あの機械人形には、殿下の子供を成せる器官が移植されている』


 ええ!?


 東鈴が眉を曇らせ赤ん坊の悟遼を抱きしめ、お岩がその肩を抱きしめやがる。


『科学的にも人倫のうえでも問題ない話よ、ご本人の意思ならばね。しかし殿下ご本人の意思でないことは明らか。畏れながら、ここにおられる陛下、そして国民の多くも戸惑わざるを得ない。本人の意思も愛情も介在しない子づくり、血統の保持は……』


 マイさん、さすがに言いよどみやがる。


『日本人の奥底の感性……大和心に馴染みません』


『ならば、その機械人形もろともにその勢力を駆逐すればいいだろ!』


 退役大佐が乱暴に言いやがる。


『北からはロシアが、国内はで皇統会、菊水会が争い、天狗党も不気味な沈黙を守って機会をうかがっておるという。政府は松代に疎開。そこへ、今般は漢明の勢力がプリンス・ニノミヤの遺伝子を弄んでおる。日本は累卵の危機にあると言っていい。外国人の儂が言うのは口幅ったいが、ここで正義正統の旗を立てて突き進まなければ日本は終わるぞ』


『ありがとう大佐。西之島戦争を共に戦った仲間の言葉として受け止めさせていただきます』


『わがアメリカも二度の南北戦争を経て、やっと三度目のユナイテッドステーツに戻れた。太平洋を挟んだ二国がしっかりしなければ、世界は再び危うくなるぞ!』


 うう……このオッサン暑苦しいぜ。


『とりあえず、陛下を見送って東京に出てみるというのはどうでしょう。扶桑の服部大使も来島されておられます、その大使館再開を支援するかたちで東京に進出すれば、無理のない形で陛下を、すなわち日本の秩序を、我が西之島が支持していることが伝わるでしょう。不肖、この及川軍平、官僚時代の関係を利用して松代の政府にも働きかけてみますが』


『自分も意見を』


 今度はサブ。続いてマヌエリト。ついには悟遼まで「ウマウマア~」って言ってラチがあかねえ。


 昔みたいに意見の食い違いで手の付けられねえケンカになることはねえけど、一通り言っちまったらお通夜みてえになりやがる。



『わたし、神社にお参りするところだったんです。果たせていませんでしたので、どうでしょう、みなさんごいっしょにいかがですか』



 陛下が穏やかにおっしゃりやがると、ここで陰気臭くしてるよりはいいだろうって、みんな腰を上げやがる。


「お、ハナ、大勢さんだぞ。準備だ準備だ!」


「お、おお!」


 外した天冠をキリリと被りなおして拝殿の準備をしたぜ!




☆彡主な登場人物


大石 一 (おおいし いち)    第一師団曹長、一をダッシュと呼ばれることが多い

穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府書院番士 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子

緒方おがた 未来みく     第一師団軍医、一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中だった

平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 

加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない

姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡

扶桑 道隆              扶桑幕府将軍 

扶桑 徳子             道隆の御台所

扶桑 道興             玄武守、道隆の弟、二人の息子(道次・道忠)と娘がいる

本多ほんだ 兵二へいじ     書院番士小姓頭、彦と中学同窓

胡蝶                元小姓頭 将軍直属の隠密

児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ

孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 東鈴(妻) 悟遼(息子)

テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      

森ノ宮茂仁王            心子内親王はシゲさんと呼ぶ

ヨイチ               児玉元帥の副官

マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)

アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)  銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン

氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)

村長マヌエリト          西ノ島 ナバホ村村長

主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者

及川 軍平             西之島市市長

須磨宮心子内親王ココちゃん    今上陛下の妹宮の娘

劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ

王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI

胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女

栗 尊宅りつそんたく       元輸送船の船長  大統領秘書官

朱 元尚 少将           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

三枝さえぐさ仲夫        元上海領事館二等書記官 朱のブレーンの一人


※ 重要事項


扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ

グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略

扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信

西之島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地

御山       西之島の火山

パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)

氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王

ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス

奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟

         

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