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銀河太平記   作者: 大橋むつお
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394『東京会病院の記者会見』

銀河太平記 


394『東京会病院の記者会見』 ハナ 





『東京会病院理事の三枝仲夫です。本日は二宮親王殿下の義体変換手術、略称PI処置とその成果についてご説明するためにお集まりいただきました。ここに集まられた各報道機関の方々、またネットでご覧の各方面、一般の視聴者のみなさまにご報告できますことを筆頭理事として嬉しく思い、まずは御礼申し上げます。さて、まずは、ここに至った経緯でありますが……』


 うう……元官僚だからなのか性格なのか、前置きが長え、長すぎる。おめえが病院の理事とかになった経緯とか、どーでもいいんだ。こいつ、表情無くて読めねえしよ。モー! サッサと言いやがれ!


『で、けっきょくPIはどうなったんですか!?』


 記者の中にハナと同じにイラついてやがる奴が居て急かせやがる。


『失礼しました、ええと……これから二週間の経過観察となりますが、術直後の検査で数値は全て正常の範囲内で、とりあえず日常の御生活に差しさわりはございません。経過観察は義体処置法に基づく処置で通常は十日となっておりますが、殿下の場合、ご高齢でもあり、その後の御公務に関わることでありますし……』


『前置きは、そのくらいでよいでしょ、三枝君』


 横っちょから声がしたかと思うと、カメラが切り替わって、どこか別の部屋のオッサンが映りやがった。


『あ、殿下!?』


『術後の隔離なので、別室から失礼します。PI術を無事済ませました、二宮です。外形が50代なので面食らわれるかもしれませんが、みなさんのハンベで——二宮親王50代——と打ち込んでいただいたら、この姿が出てくるかと思います』


 カチャカチャカチャ…………おおお(# ゜Д゜#)!


 記者の奴ら、ハンベを操作して歓声を上げやがる。溜まり場のみんなもハンベをいじって、こっちからは歓声というよりは唸り声。


 ムムムム……!


 三枝ってやつのうさん臭さはマイさんやお岩も言ってるしよ、領事館の二等書記官やろーが、なんで、でっけー病院の筆頭理事に収まってやがるのか怪しすぎるしよ。


『なんせ百歳、倒れた時には陛下並びに皇室、国民の皆さんのお役に立てぬまま生涯を終えることを口惜しく思いました。が、こうやって、今少し陛下と国民の皆さんのお役にたてることになって喜んでおります』


 よかった……


 陛下のやつも、小さく呟きやがった。


 立場上喜ぶしかねえんだろうけど、ハナはよ、むつかしいことは分からねえ。けど、なんかうさん臭ぇと思っちまう。皇居で会った時の車いすの爺さんはボケボケだったけど、こういううさん臭さはなかったと思うぞ。


 記者の奴らがしょうもねえことばかり聞きやがる『食欲は?』『お元気になられて、最初に行きたいところは?』『いまの御気分を色で表したら?』『国民の皆さんに一言……』『お若くなられて公務もご活発化されると思いますが、内廷費というか皇族費というか、増額を求められますか?』『殿下は、独身を通してこられましたが、お若くなられて、ご結婚などはお考えに……』


 最後の質問には、三枝のおっさんが身を乗り出して答えやがる。


『血統は皇室の根幹、一番大事でありますので、PIに当たっては、元のお身体から、そういう機能に関わる器官を移植させていただきました。今後の検査に待たねばなりませんが、可能性は十分に考えられるとか……いや、あくまでも希望を繋いだということですが』


 おおおお!


 また歓声が上がりやがる。


 陛下はなにも言わねえで優しく微笑むと、そっと立ち上がって外に出ていきやがった。辺境伯が後に続いて。ツギのやつも立ちかけたけど——おまえはここに居ろ——と肩を叩きやがる。


 あ、ひょっとしたら神社に!


 そう思って、ハナも外に出たぞ。神社に行くんだったら巫女がいなきゃ。食堂のお仕着せのまんまだから、ちゃっちゃと巫女服に着替えなきゃだからな。


 社務所で着替えてっと、窓から東鈴ママが悟遼を遊ばせてるのが見えやがる。近ごろ砂が貯まって海岸ぽくなった海辺をあやしながらのお散歩だ。


 神社に直行かと思ったら陛下は辺境伯といっしょに東鈴親子に笑顔を送って海を見てやがる。たぶん、なにか話してやがる。ハナの聴覚なら二人の話も聞けるんだけど、ハナもちっとは成長したぜ、その分、しっかり着替えていつも以上の巫女服姿。


 ほうきを持って鳥居のあたりから掃除。


 ブゥ~~~~ン


 かすかな爆音に目を上げると、西の空からマイさんのオイドが戻ってくるところだったぜ。


 

☆彡主な登場人物


大石 一 (おおいし いち)    第一師団曹長、一をダッシュと呼ばれることが多い

穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府書院番士 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子

緒方おがた 未来みく     第一師団軍医、一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中だった

平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 

加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない

姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡

扶桑 道隆              扶桑幕府将軍 

扶桑 徳子             道隆の御台所

扶桑 道興             玄武守、道隆の弟、二人の息子(道次・道忠)と娘がいる

本多ほんだ 兵二へいじ     書院番士小姓頭、彦と中学同窓

胡蝶                元小姓頭 将軍直属の隠密

児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ

孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 東鈴(妻) 悟遼(息子)

テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      

森ノ宮茂仁王            心子内親王はシゲさんと呼ぶ

ヨイチ               児玉元帥の副官

マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)

アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)     銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン

氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)

村長マヌエリト          西ノ島 ナバホ村村長

主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者

及川 軍平             西之島市市長

須磨宮心子内親王ココちゃん    今上陛下の妹宮の娘

劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ

王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI

胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女

栗 尊宅りつそんたく       元輸送船の船長  大統領秘書官

朱 元尚 少将           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

三枝さえぐさ仲夫        元上海領事館二等書記官 朱のブレーンの一人


※ 重要事項


扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ

グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略

扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信

西之島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地

御山       西之島の火山

パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)

氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王

ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス

奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟

        


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