尋問 3
狭く薄暗い部屋を直視できないほど強い光が満たしている。人工的な、地下でロドニアスが照らし出す魔法の光の何倍も強い、輝きだけではなく視界を白く塗りつぶしたような光だった。
「闇を払う光の前に、偽りなき言葉を語りなさい」
光の中から少女の声が語りかける。大神官・ラミュエルの声だ。強い光に目がなれると、彼女が背を向けて立っていると分かった。頭一つ分高い帽子のさらに上に位置する笏の先端が光を放っていたのだが、光が向けられているのは彼女の正面に座っている神官の方だった。
直接光を向けられていなくてもこれだけの明るさ。正面に座っている者は、光が反射して真っ白なのっぺらぼうのように表情どころか性別さえも見分けがつかない。
ラミュエルの声は穏やかに語りかけられ、痛みや苦痛が与えられているわけではないが、はた目から見れば精神的に追い詰める拷問に思えた。
だが、彼らにとっては異なった受け取り方でもしているのだろうか?
強い光で視覚的に周りと隔絶され、大神官の声だけしか繋がりの無い世界は、罪を告白する懺悔室でもあるかのように、すらすらと話し出す。
話すほどに救われたような安堵が声に含まれる。
だいたいは報告を受けた通りの話だった。だが、穏やかに語っていた者たちも話の終焉にさしかかると、突然、興奮し始める。
「叫び声が、叫び声が、老人も子供も、男も女も、喉が張り裂けんばかりに叫んでいる」
「熱い、熱い、熱い。焼ける! 大地から噴き出した炎がすべてを焼き尽くしているのだ!」
熱に浮かされたように叫んだり、泣いたり、感情を吹き出させた。刷り込まれた記憶を、今、まさに経験しているかのように。
「訪れる終焉の恐怖から逃れるため、怪物を育てると言う禁忌にも目をつぶっていたのか」
「恐怖、ですか」
「その記憶を刷り込んだのも、ディナエルと言う事なのだろうな」
ラミュエルの尋問の方法が、そのまま別の記憶を植え付ける方法にも思えた。背を向けている彼女は本物なのだろうかとの疑念が浮かんだがすぐに頭から追い払った。
「大神官の尋問は苛烈だな」
筈だったが、思わず言葉の端が零れた。
「そうでしょうね。……ディナエルを斬らねばなりませんから」
感情の起伏さえなかったが、ロドニアスの言葉は地下迷宮の出口を告げていた。
薄暗い通路の先の光は、地下に巣くう怪物よりも、街に攻めよる魔物よりも、解き明かさねばならない光明だった。
苛烈なまでに職責を果たし真実を求める少女の姿は、責任感や正義感などでは語れないだろう。
その結果が、妹の死刑宣告に繋がるのだから。
目の前の事実から導き出される真実に答えはない。
探すべき答えは、ディナエルが何をして、何をしようとしているのか。
それを、解き明かさなければならない。




