尋問 2
一息つこうと陶器のカラフェから飲み物をコップに注ぐと、入っていた飲み物はルビー色の液体で甘い香りがする。容器が透明でない事が勿体ないと思える美しさだった。
興味深い飲み物を堪能したいところだが、今は、そんな事に気を回している場合ではないかった。
「あっちは、どうなっているかな」
ため息に混じって、思っていた言葉が漏れた。
どんな相手でもロドニアスは問題ないだろうか、ラミュエルの方は心配だった。
神官たちは言ってみれば彼女の仲間、身内のような者だろう。そういう相手から、白か黒かではなく、初めから黒と結論が出た後で話を聞き出さねばならない。
しかし、彼女の言葉は彼らに絶対の力を持っている。彼女がここにコップがあると言えば、無いと認識する自分がおかしいと思うほどに彼女の力は大きいのだ。
その影響力を使わない手はない。
考えながら指で回していたコップの中身を飲み干した。兵士たちは好んで飲んでいるが、苦いような酸っぱいような薄い酒だった。
「クイス導師、どうでしたか?」
ノックもなしに部屋に入って来たのはロドニアスだった。口に含んだ酒の苦さにしかめた顔で彼を出迎えた気もしたが。
「こっちは、ほとんど何も知らなかったようだな。まぁ、信者たちにまで話が広まっていれば、秘密にしてられないだろうからな。分かったのは、名前くらいか。アル・バ・アランチェと呼んでいたようだが」
「地の底に住む者。地上と地下の世界の間にある門の番をしている怪物の名前ですね」
「その番犬が、門から出て来たのか?」
「昔話に出てくる怪物ですよ? 地下に住む巨大な怪物を便宜上そう呼んでいるだけで、本物ではないでしょうね。……ヴェイルは苦いでしょう」
「ヴェイル?」
ロドニアスは陶器の酒壺を手にしていた。
手酌で注いで、舌に絡まぬよう一息に飲み干す。それが、これの飲み方らしいが、もったいない気した。
「それでは、あの怪物は何だったんだ?」
「神官たちが言うには、三か月ほど前に大神官が持ち込んだそうです。井戸に放り込む前は、人の頭くらいだったらしいのですが、数日で触手が這い出してきたそうですよ」
「ディナエルが持ち込んだと言う事か……」
「そうでしょうね。しかし、まだ成長途中で、あと二か月くらいで完全体になるらしいですよ。それまでには駆除できると思いますが」
「二か月後か。完全体になると、何が起こるか話したか?」
その時点で別の計画があるのなら、それを逆手に取る方法も考えられる。もちろん、怪物を暴れさせるだけでも十分な効果がある事だし、それ自体が目的であるのかもしれない。
「まだ、そこまでは聞き出していないようでしたが、見に行きますか? 神官たちが知っている事なら、ラミュエルに聞き出せない事はないでしょうからね」
まるでラミュエルが一人で尋問をしているような話し方が気になったが、頑丈な造りの建物の中へ入ると尋ねる必要もなくなった。




