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討伐は、安楽椅子で  作者: 海土竜
街道の罠
31/50

街道の罠 3

 煙が上がり始めると、離れていても木々の間に嫌な匂いが立ち込め始めた。


「クイス導師、そっちから来そうですか?」


「いや、こっちには居ないと思う……」


 見張りに立っていると思われたのか、手を振るロドニアスに返事を返した。余り離れると背後から魔物が出てくる事もあるのか。しかたなく凄惨なバーべキュウ現場に戻ろうと歩き出すと、視界の先の高い木々は揺れ始めた。

 予想していたよりずっと大きな物が近づいてくる。黒く光沢のある外殻に包まれた巨大な尾を振り上げた百足か蠍のあいのこのような知性的とは思えない怪物だったが、その方が戦いやすい気もした。


「来るぞ!」


 叫んだと同時に、冒険者の一人が悲鳴を上げた。腹を押さえ苦しそうに体を曲げたかと思うと、黒い塊となって、急に跳ね上がった。遠くから紅い石を飛ばして、冒険者の一人に寄生したのだ。

 ロドニアスが変化した冒険者を空き地から蹴り出すが、魔物はさらに複数の紅い石を撃ち出しながら空き地へと入ってくる。


「何をしている? まだ、動いている人間がいるではないか」


 思わず体が強張った。何処からその声を出したのか、その姿からは信じられないほど流暢な言葉だったからだ。


「料理番はどこだ?」


「そいつは、もうちょっとで焼ける所だ!」


 ロドニアスが叫ぶと同時に剣を振り下ろし、巨大な百足の長い胴体を両断した。堅い外殻が果物の薄皮のように切り裂いて、斬り飛ばした胴体を空中で、更に半分に斬り落とした。だが、魔物の体は地面に落ちる前にバラバラに千切れた。

 それは地面に落ちると、殻が分かれた節ごとに別々な方向へ走り出した。個別の生物のように。

 大きさこそ二メートルほどの長方形だが、黒光りする甲羅の下で無数に動く足を動かし、素早く雑草の中を走り回る姿は、あまりに生物的な嫌悪感を感じさせ思わず荷台に飛び乗っていた。


「ロドニアス、集めろ!」


 叫んだのは荷台で魔力共鳴砲を構えていたマカカイア・ジェストだった。ばらばらに逃げ出した相手を簡単に集められれば苦労はない。どうすべきかアドバイスする前に、ロドニアスは半ば炭になりかけている樽を蹴り上げた。煙の跡を残して地面に落ちると脆くなっていた樽が粉々に砕け、アルコールの焦げた匂いが噴き出した。

 瞬間的に湧きあがった強烈な匂いに口を押えたが、それは人間よりも魔物に対して強く作用した。高度な知能をもって人間と変わらず話をしていたはずの魔物が、残飯に集まる虫のように一斉に樽の残骸に群がり始めた。


「一匹一匹は、見た目通りなのか?」


 それなら集まっただけで、知能を持てるわけではない。どれかが他の個体を統率していると考えるのが妥当だろう。だが答えの代わりに、耳障りな金属音が響いた。

 マカカイア・ジェストの魔道兵器だ。改良されたためか音量は前ほどではないが、不快さは増している。そして、一直線に森を焼き払った光線は、空中の一点で回転しながら範囲を広げ地面を半球形に削り取った。残されたのはすり鉢状の大穴。その範囲にあった木や石も魔物ごと全部消し去ったのだ。


「倒せたのか?」


 周囲の草むらを見ても動き回る魔物の姿はない。


「いや、何匹か逃げられました。恐らく逃げた個体が仲間を増やし、また元に戻るのでしょう」


「厄介だな。あんな魔物に街中で増えられると……」


「そうですね。入る前に、駆除した方が良いでしょうね。まぁ、対策を準備する時間は十分ありますが」


「そうなのか?」


「ええ、あれだけ体を失えば、抵抗の出来ない弱い生物から新しい部品を増やしていかなければならないからね」


「なるほど、獲物に返り討ちされる可能性があるからか」


「はい、それに元になった生物の性質を受け継ぐなら、全体の能力も個々の能力に影響するのでしょうからね」


「強くなるまで攻撃はしてこないと言う事か」


 時間の余裕は出来たが、殲滅するには厄介な相手だ。城門の外で捕まえられる罠を考えるか。

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