ラスカーニュ商会
行商人の商館の並ぶ通りは、広い石畳の道に高い壁と馬車ごと入れる大きな門が並ぶ。本来ならもっと活気があるのだろうが門を閉じて人の出入りの無い建物も多く、荷物を運ぶ人々にも妙な緊張感があった。
「商人と言う奴は、どいつもこいつも怪しそうに見えますね」
「他の店が閉まっているのに自分の所だけ賑わっていると、後ろめたい事がなくても、自分の担いでいる棒の先が気になるのさ」
「この先です。門は閉まっているようですね」
ロミルの案内で向かったラスカーニュ商会の建物は、似たような鉄の格子の門が並んでいる中堅クラスの商館の一つだった。殆んどが閉まっている事もあって、良く知っているロミルの案内がなければ、どれが目的の建物か分からなかっただろう。
「入れるか?」
「上か、下か。出る時のために格子を曲げて入りますか」
門の上下を見てから、ロドニアスは縦に走る鉄格子の門に手を掛けた。ギギッと、絞り出すような音がすると、前後に曲げられた格子の間が通り抜ける程度の広さになっている。正面の門だけあって、豪華な飾りと頑丈そうな作りであったが、格子の間は元々子供なら通れる程度に広く軽く曲げるだけで通れるようになったようだ。
「えらく簡単だな……」
そう言いかけたが、通ろうとして手を掛けた門の鉄柱の太さに言葉を失った。常識で考えれば、これを曲げて入ってくる相手など想定しない。
「まだ荷下ろし場ですよ、価値がある物を置いているわけではありませんからね」
馬車ごと乗り込み荷物を下ろす場所、荷車をつける部隊のように一段高くなっている場所もある。壁沿いには空の荷馬車が置かれ、荷物を積み込む用意がされているようだったが、肝心の荷物は見当たらない。
「価値のある物は、建物の中でしょうね」
「運び込んだ商品を保存しておく地下倉庫があるはずです。大きな荷物を運び込むため、おそらくあの扉でしょうか?」
商館は似たような造りになるのかロミルは中の構造にも詳しそうだ。指した先に、上側の両端がアーチ状になっていなければ壁一面の大きさの頑丈そうな両開きの扉があった。
ロドニアスはそれに真っすぐ近づくと、迷わず剣を突き刺して、裏から扉を押さえていたかんぬきを切り落とした。
「もう少し痕跡を残さないように開けた方が良かったんじゃないか?」
「荷物を改めれば、どのみち誰かが侵入したと分かりませんかね。手間をかける必要もないと思いますが、後で穴を塞いでおきますか?」
「戻る時に考えるか」
そう言いながらも忍び込むと押し入るの違いを気にしていないロドニアスが、更に修復不能な力技を使うかもしれないのに、扉の開け方を気にしても仕方がない気がした。
大扉の奥はそのまま部屋くらいの広さのある通路が続いていたが、入って直ぐ側らに小さな扉がついていた。ロミルは迷わずその扉に入り、中の書類を調べ始める。
「ここに荷物の出入りを書き留めているので、既に持ち出した荷物についても分かるはずです」
「導師・クイス、俺たちは奥を調べますか」
ここは任せた方が良さそうだと頷くと、書類に書けないようなもっと分かりやすい何かを探して、通路を奥へ進んだ。




