表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
討伐は、安楽椅子で  作者: 海土竜
英雄のナイフ
14/50

城壁

 城壁は下から見上げるより幅の広い造りになっていた。高さも長めの階段を上がってから更に数階分登らなければ、街の外を見下ろせはしない。今は景色を楽しんでいる場合ではなく、途中の壁の間を迷路のように走る通路を通って地下へ降りる。

 薄暗い通路をロドニアスが白い光を放つ球を出して照らす。初めは狭く入り組んでいた通路も地上より下に潜ると広く歩きやすいものになっていった。


「上より明るいな」


「古い石の方が研磨されてますからね。光をよく反応するんですよ」


 遮るものが少ないだけでなく、壁や床は光に照らされるとしばらく光ったままでいるかのように影が出来るのが遅い。別の場所に光源があるのかと錯覚しそうになるが、歩くには問題ない。


「こいつはまるで、地下迷宮だな」


 感嘆のこもった言葉が漏れた。足元に階段の終わりが見えると、遮っていた壁が途切れて広い空間に出た。そこは、淡い色を放つ石材と黒く艶やかな床が光を放つ地下神殿のようだった。


「気を付けてください。はまりますよ」


 踏み出そうとした足を慌ててひっこめた。黒く光った床石だと思った場所は水が溜まっていたのだ。波ひとつなく鏡のように周りの光を反射して、底が見通せない。その間を飛び石のように四角い床石が並んでいる。


「貯水池なのか?」


「川から引き込んだ水を街の下に循環させてるのですよ。石の隙間を通っている間に、ろ過されるんです」


 そう言われてよく見てみると、水は非常にゆっくりだが動いていた。水は壁の石の隙間、非常に薄く指も入らない隙間から飛沫も立てず静かに流れ出ている。あちこち繋がってはいるが人が通れるとは限らないとはこういう事か。さらに奥へ向かおうとすると階段の上から足音が追って来た。


「勇者様。御用でしたら、この私、南朱門守備隊隊長・ラゴリュートにお命じ下さい。このような所に足を踏み入れるなど、高貴な方々には、御無用の事……」


 話し方も、格好も、位の高さを表しているのだろうが、無駄な装飾品が多く、ガチャガチャとよく音の鳴る鎧が地下ではことさら不快だった。


「なぜ、地下に兵を配置していない?」


「はぁ、街の外の魔物を見張るのに手いっぱいでして……」


 ロドニアスの問いに、首をかしげながら守備隊隊長が答える。城壁に置いて地下道の役割は、壁を乗り越えて攻め込んできた敵を迷わす罠に近い。そこを警備していないからと言って叱咤される言われはないだろう。ロドニアスの話を遮って、代わりに質問をした。


「地下に抜け道があると言う話を聞いた事はないか?」


「抜け道……」


「知っているのか?」


「おお、それでは、神官様のおっしゃっていた事はまことですか!」


「神官だと?」


「神官長・エバム様がいらっしゃいまして、冒険者どもが街の地下に抜け道を作って逃げ出そうとしているから警戒するようにと、おっしゃっておりましたので……」


「その割には警戒していないようだが?」


「いえ、その勇者様。城壁の警戒で手一杯でして……、地下はなにぶん、私どもも不慣れでして……」


「まぁ良い。その抜け道とやらを、早いとこ見つけるんだな」


「はい! 直ぐに!」


 ラゴリュートの隊長としての手腕はそれなりの物で、直ぐに兵士たちを編成し効率よく地下の探索に当たらせた。おかげで足場の悪そうな地下道を歩き回らずに済み、兵士たちの詰め所で報告を待つだけだった。


「しかし、神官長が先に警告に来ていたとは」


「教会の方でも何か情報を握っていたのか、それとも……」


「それとも?……」


「何か始めようとしているのかもって事ですよ」


「陰謀にかかわっているのは、教会だと?」


「怪しい点を上げれば、街の地下、過去の建物の構造なんかは、守備隊より教会のほうがずっと詳しい筈なんですよ。それをわざわざ、『警戒するように』などと曖昧な警告をしますかね?」


「守備隊に人手を割かせて?……」


 守備隊の警戒が緩んだところをどうにかするにしても、ラゴリュートが地下の探索を始めたのは、今しがた。勇者が来なければ、何もしなかったであろう事から、何かを企んでの行動なら不確定すぎる。


「まだ何も決まった訳ではありません。ですが、教会にも話を聞きに行った方が良いでしょうね」


 そう結論付けた所に、兵士の一人が報告に駆け込んできた。地下の抜け道を発見したのかと思いきや、兵士の口から意外な話がもたらされた。


「冒険者ギルドの長・フマサーサ殿が殺されました」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ