私物の付与は別料金です!
「ん?この靴を?」
私の作業机に置かれたのは焦げ茶色のショートブーツ。
とても質の良い革だ。
「はい」
その隣でニッコリとルークが頷いた。
さっきお昼に言っていた頼みたいこと⋯⋯
この靴みたいなんだけど。
「ユーリ先輩。この靴に付与をつけていただきたくて!」
ん?
「それって?この靴は誰がすごい偉い人のとか?そういうのなの?」
確かに良い靴。
しかも⋯⋯量産品には見えない。
私が靴を見つめながら尋ねると。
「いえ。自分の靴です」
ん?
⋯⋯は?
「ちょっとルーク⋯⋯私物?自分でやりなさいよ⋯⋯」
私物に付与しろってこと?
ルークはすごい魔力持ってるんだし自分でできるのに⋯⋯
「とにかく、よろしくお願いしますね!」
ルークはニッコリ笑うと
引き止める私を無視して行ってしまった。
⋯⋯
靴を見つめて首をかしげる。
どういうつもりよ⋯⋯
「私物の付与かよ。ユーリちゃん。そんなの『バナナを踏んでも滑らない』付与でも付けとけばいいよ」
私の背後からジンさんの声。
「聞いてたんですか〜」
私が言うと、ジンさんは
「聞こえたからさ〜」
のんびりと笑った。
「つかジンさん、バナナを踏んでも滑らない付与って⋯⋯そんなのどうつけるんですか⋯⋯」
カズが呆れたように言った。
付与は何でもかんでもつけれるわけじゃない。
魔法はイメージ⋯⋯
イメージできるものは魔法と言うカタチに表せるんだけど。
そこは本人の魔力とか、力とか経験。
バナナを踏んでも滑らない付与は⋯⋯
⋯⋯まぁ付けれるけど⋯⋯
私は靴を見つめる。
「それ〜オーダーシューズね。普通には売ってないヤツだわ⋯⋯さすが金持ち坊ちゃんねぇ」
リキさんが私の横に立ってそう言った。
えー
そうなの?
私はまじまじと靴を見つめる。
オーダーシューズですってぇ?!
羨ましい!!
バナナを踏んでも滑らない付与
と
足が少し遅くなる付与
に決定だわ
ジトーっと靴を見つめる私にリキさんが
「⋯⋯革の寿命を縮めるヤツ付与しておきなさぁ〜い。経済回すためにたくさん買い替えていただきましょう〜」
!!!
さすがリキさん。
それも追加だわ⋯⋯
リキさんは私を見てウインクすると、私に紙を渡す。
「あと、ちゃんと料金もらうように!タダ働きは駄目よ?3割増にしておくように!」
「はい!」
私はリキさんから受注受付の紙を受け取る。
何の付与を結局つけようか⋯⋯
「ユーリ⋯⋯結局何の付与にしたんだ?」
カズがデスクの上の靴を見つめて尋ねる。
「え?靴だし撥水防水?」
私はのんびり答える
「ふーん。靴にはそれだよな。バナナなんかつけれねーよな。そもそもそんないくつも付けれないしなぁ」
カズはそう言って笑ったけど。
んふふふふ
あとは、『バナナを踏んだら染み込む』付与
を追加しておいた!
しかもわからないようにこっそりね!
後で、ルークには、バナナと靴をセットで渡そう〜。
カズの言うとおり、1つのものにたくさんの付与はつけられない。
というか、つけづらい。
普通は撥水加工と防水加工は
撥水防水加工でなんとか付けれる。
似てるから。
他にも付与を重ねてつけるとすると上書きされちゃったり混ざって消えちゃったり⋯⋯結構厄介みたい。
そこは色々研究されているんだけどね。
だから基本的には1つの物に大抵1つ。相性が良いもの同士で2つかな?
でもね⋯⋯私の眼鏡はたくさんの付与がついているんだけど⋯⋯
実は、私は大抵何でもつけたいだけ付けれる。
それがやっぱりみんなと違うから、隠しておかなきゃいけないこと。
それは⋯⋯
死んだ母さんから言われ続けてる⋯⋯魔力を隠すこと。
でもこれは必ず守らなければならないことなんだ⋯⋯
「ユーリちゃん〜、その靴、俺が届けてきてやるよ。ちょうど第二に書類持って行くから、置いてきてやる邪魔だろ?」
ジンさんが私のデスクの靴を手に取る。
「あ。じゃあ、よろしくお願いします」
私が請求書を靴のなかに入れた。
ジンさんはニッコリ笑うと
「渡しておくよ〜」
そう言って出ていった。
バナナはまた今度でいいか〜




