覚醒⑩
「かあたん!かあたん!」
可愛いユーリがパタパタと私の元へ走ってくる。
紫の髪⋯⋯赤い瞳。
私とアルのいいところを合わせたような姿。
んー!可愛い!!
目に入れても痛くないってこういうことを言うんだわ!
あれから慌ただしく子育てをする毎日を過ごした。
カルドスとジンの2人にはたくさん助けてもらってる。
ユーリはカルドスはおじいちゃんだと思い込んでるけどねっ。
ふふふ
ジンは⋯⋯父さんとは思わないみたい。
でもジンジン言ってて懐いていて可愛いの。
でもね⋯⋯
ユーリは
ギルがどうもお気に入りで⋯⋯
ギルを見ると
キャーキャーいうのよ!
しかも!頭触りたがるのよね⋯⋯てっぺんを⋯⋯
わかるのかしらね⋯⋯
薬で生やしたことが⋯⋯
ニセモノの毛とか思うのかしらね⋯⋯
「ユーリ?これは本物だから!引っ張ったらいたいぞ?」
ギルがユーリに髪の毛を引っ張られて遊ばれている。
ギルは暇があればユーリにお土産を持ってくるのよね。
ギルには4人子どもがいて、すべて男の子らしいんだけど。
女の子が欲しかったんだよ〜とかなんとかいってるのよ。
まぁ、色々持ってきてくれるのは助かるわ。
洋服とか。おもちゃとかね。
でも⋯⋯ちょっと図々しいのよね。
「ちょっと!ギルってばまた来たの?息子に嫌われるわよ?」
私が呆れたように言うと。
「昼休みに抜けてきてるだけだからな。問題ない」
ユーリの魔力もこの頃には、半分くらいに抑えられるようになって。
常に半分の魔力で暮らせるようになった。
筋があるわ⋯⋯さすが私の子。
なんだかんだいいながら
幸せな日々⋯⋯
このまましばらく⋯⋯
でも、そう長くは続かなかったの⋯⋯
あの日は冬だというのに暖かい日だった⋯⋯
「ユーリ。今日は一緒にパイを焼きましょうか〜?」
私がユーリにそう言って微笑むと
ユーリはニコニコ笑って駆け寄ってくる。
「わーい!パイ!大好き〜!」
んふふふ
可愛いわ!!
ニコニコ笑って駆け寄ってくるなんて⋯⋯
そう思った瞬間⋯⋯
ドォンッ!!!!!
地響きのような爆音とともに、家全体が大きく揺れた。
天井からパラパラと土埃が落ちてくる。
「かあたんっ!?」
ユーリが恐怖で私の服をギュッと掴む。
私はすささっとユーリを抱き寄せ、背中に庇った。
「ユリーナ様!!」
部屋の扉が勢いよく開かれ、ジンが青ざめた顔で飛び込んでくる。
その手にはすでに剣が握られていた。
「ジン!何が起きたの!?」
「追手です⋯⋯!それも⋯⋯魔界の兵だけではありません。人間界の影の部隊らしき者たちも交じっています!恐らく、ユーリ様の魔力を感知して結界を破り⋯⋯!」
外からは激しい金属音と、カルドスの怒号が聞こえてくる。
「魔族と人間が⋯⋯手を組んでこの子を狙いに来たというの⋯⋯!?」
私は銀色に変わった自分の髪を握りしめた。
今の私には、かつてのような全魔力はない。
でも⋯⋯命に代えても、この子は渡さない⋯⋯!
「ユーリ、じっとしていてね。かあたんが絶対に守るから」
私はユーリをぎゅっと抱きしめ、立ち上がった。
全盛期ほどの力はないけれど、大魔法使いとしての知識とわずかに残った魔力ならまだ使える。
どうしたら⋯⋯
「ジン!!カルドス!!」
私の呼び声で
2人が飛び込んでくる。
「ユーリを⋯⋯ユーリをお願い」
私はユーリを2人に託す。
「ユーリが18歳になって封印が解けたとき。これを⋯⋯」
私は左手首に付けていたあの人とお揃いのブレスレットをはずす。
「ユリーナ様⋯⋯」
「ジン。これは、ユーリの魔力を安定させるわ。よろしくね?」
私はジンにブレスレットを手渡した。
「ユリーナ様?!何を」
私は3人に魔法をかける。
「私の最後の力を使って⋯⋯3人を瞬間移動させるわ。ただ、そこまで遠くには飛ばせない。きっとこの村を出た先くらいの場所ね。そこから、安全な所へ逃げて!」
私がそう言うと
ジンが目を見開いて私を見る。
「いけません!ユリーナ様!ユリーナ様がユーリ様とお逃げください!あなたを置いて⋯⋯いけるわけない!」
ジン⋯⋯
ジンの言葉が心に響く⋯⋯
「ジン⋯⋯ありがとう。でもユーリを魔力の強いあなたたち2人で守ってほしいの。私はもう無理よ。魔力もほとんどないの。わかるでしょ?」
「しかし⋯⋯」
ジンは首を振る。
「ジン。お願い。ユーリを守って?ジンにはユーリを影から守ってほしい。ずっと⋯⋯どこにいても影からこの子を守ってほしいの。ごめんなさい⋯⋯こんなことを頼んでしまって⋯⋯」
ジンはじっと私を見つめる。
「ジン。ユリーナ様の願いを聞くんだ」
カルドスがジンへそう言って、私を見つめる。
「ユリーナ様⋯⋯承知いたしました⋯⋯ユーリ様は私が⋯⋯祖父としてお育ていたします。封印が解けるその日まで⋯⋯」
「ありがとう。さあ!!いくわ!」
私は体中の魔力をかき集める。
3人をお願い!!守って!!
ギル!こんなときにいないなんて!
ギル!!お願い!!私の気持ちを!!届いて!!
私の最後の力が光となって3人を包み込む⋯⋯
その瞬間⋯⋯
3人は姿を消した⋯⋯
「ユーリ!!愛しているわ!幸せに!」
⋯⋯
耳元で優しく聞こえる⋯⋯
声⋯⋯
これは⋯⋯
母さんの声⋯⋯
私は長い長い夢を⋯⋯見ていた⋯⋯
ユリーナの記憶は
ここで終了です。
もっと色々エピソードあるので。番外編でどこかでかけたらなと思います。
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