覚醒⑨
「この子は⋯⋯本当に魔力が強いわ⋯⋯」
私はお腹に手を当ててつぶやく。
もうすぐ臨月なんだけど、ものすごい魔力でくらくらする。
「ユリーナ、大丈夫か?」
ギルが私のそばでオロオロしている。
ちょっと〜あなた父親でもないくせに!やめてよ!
「ちょっと!オロオロしないで!気持ち悪い!ギルはここによく来てくれるけど⋯⋯誰にも見つからずきてるのよね?」
私は不思議に思っていたことを聞いた。
だって、他の人にここは見つかるわけにはいかないもの。
ギルは得意げに私を見ると
「瞬間移動でな」
そう言って私を見た。
なぬ?!
瞬間移動は中々できるものではないわ。
場所をイメージして移動する。
中々人間にできることじゃない。
さすがギルね。
「私しかできないかと思っていたけど。ギルもできたのね!」
私が言うと
ギルは微笑んだ
「しかし⋯⋯ギル⋯⋯髪の毛伸びたわねぇ⋯⋯」
本当⋯⋯あの薬効いたのね⋯⋯
本当私の力にびっくりよ。
あの薬完璧ね。いつか、髪の毛に困っている大富豪あたりに売りつけようかしら⋯⋯
「今、くだらんこと考えたな?」
ギルは私を呆れたように見た。
「ギル。あまりここに来てたら怪しまれるわよ?奥さんに」
確かギルは結婚して子どももいたわよね?
「あぁ⋯⋯そこは問題ない。もう帰るかな。また、くるよ。次は何か甘いものでももってくる」
ギルはそう言って、家を出る。
入れ替わりにジンが部屋に入ってくる。
「ユリーナ様。果物をお持ちしました」
「わぁ。ありがとう。いただくわ」
私のお腹の子はどんどん魔力が強くなってきて⋯⋯
「ユリーナ様⋯⋯それだけ魔力が強いと生まれた瞬間に居場所がわかってしまわないか心配です」
ジンが心配そうに私を見る。
確かに⋯⋯私達は魔界から逃げてきたわけだから⋯⋯
何かの拍子に見つかればきっと捕まる。
魔界の王と私の子⋯⋯
捕まえてどうされるかは⋯⋯想像がつく。
「ジン、この子が生まれる瞬間に魔力を封印するわ」
私はジンを見つめてつぶやいた。
「ユリーナ様⋯⋯」
「この子を守るため。お腹の中でもわかる。この子魔力は、アルと私より強い。もしそれが魔界や人間界に知れたら⋯⋯どちらも利用しようとするわ⋯⋯」
「しかしながらユリーナ様⋯⋯そのようなことをしてユリーナ様のお身に何かあれば⋯⋯」
ジンは心配そうに私を見る。
「大丈夫よ!ジン!私は大魔法使いだもの」
私は微笑んだ。
あの日は⋯⋯
朝から雨だったの⋯⋯
でも、突然のお腹の痛み⋯⋯
そして⋯⋯
突然空が晴れ渡り⋯⋯
大きな虹がかかった。
はやく会いたいって思っていた私とアルの愛する子にとうとう出会える時が来た⋯⋯
「ジン⋯⋯カルドス⋯⋯私達の赤ちゃんを」
⋯⋯
その瞬間⋯⋯
全てが光に包まれるような⋯⋯
ものすごい魔力が生まれようとした⋯⋯
抑えるわ!
この子の力を!!
私は全魔力を込める。
大丈夫!大丈夫よ?
あなたの力を封印するわ。
この巨大な力を抑えるのは⋯⋯そう長くは持たないけど⋯⋯
18歳の成人の時までは持つかしら?この封印は⋯⋯
大丈夫よ
怖くないわ。
私はありったけの力を使って生まれてくる子の魔力を封印した。
「ユリーナ様⋯⋯元気な女の子です」
カルドスがそう言って私に赤ちゃんを見せる
⋯⋯あぁ⋯⋯
「そう⋯⋯本当に女の子だったわ⋯⋯名前はユーリよ。あなたの父さんが、名前を決めていたのよ。絶対女の子だって⋯⋯」
私はユーリを抱きしめる。
「ユリーナ様!髪が⋯⋯髪の色が⋯⋯」
ジンが驚いたように私を見つめる。
私は髪の毛を一房つまみ見ると⋯⋯
色が⋯⋯抜けてる。
私の濃い紫色の髪は銀色に変わっていた。
「この子の力を封印したからかしら?魔力がほとんどなくなっちゃったみたい。それとも⋯⋯私の魔力がこの子にうつってしまったのかしね?」
私はしかたがないわって思って笑った。
「ユリーナ様⋯⋯」
「ふふふ。大丈夫よ!それより!ジン!あれだけ力を込めて封印してこの魔力よ?!この子どうなってるの?!」
私の横で眠るユーリは、ものすごい魔力をもっていた。
生まれてすぐなのに⋯⋯
ギルなんかよりよっぽど強い⋯⋯
じゃぁ、封印が解けたら?ものすごいことになるわね⋯⋯
「ものすごい魔力です⋯⋯」
ジンは信じられないようにユーリを見つめる。
「この子には、自分の魔力を抑えることを教えましょう。このままだと人間界にも魔界にも住めないものね⋯⋯」
「ユリーナ様⋯⋯ユーリ様は⋯⋯美しい赤い瞳です⋯⋯」
カルドスはユーリを見つめて微笑んだ。
「アルにそっくにな美しい赤い瞳ね⋯⋯」
アル⋯⋯私達の子が無事生まれたわ。
家族3人で暮らせる日を願ってる⋯⋯
はやくあなたに会いたい⋯⋯




