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覚醒⑥

「え⋯⋯」

魔族との話し合いの場。

部屋に入った瞬間⋯⋯

目の前に⋯⋯

アル⋯⋯

そこにはアルがいたの。


隣にいる年配の男性が深く頭を下げると


「こちらは魔族の王⋯⋯アルヴィス・ドラグニル様です」

自己紹介をした。


アルは私に気がついて一瞬目を見開く。

そして、ふっと笑った。


「今日は、良い話ができることを期待している」

アルがそう言うと具体的な話が始まっていく。


私はただボーっとアルを見つめていた。

だってもう会えないって思ってたから⋯⋯


ギルが

「ユリーナ⋯⋯何ボーっとしてるんだ?」

横で耳打ち。

ハッと我に返る。

「ギル。話はうまくまとまりそうなのかしら?」

私がコソコソ聞くと。

「あぁ。ただ⋯⋯」

なにかあるの?

「どうしたの?」

私が尋ねると。


ギルは顎であちらを見ろと合図した。


そこでは、魔法協会の会長の、ギルの父親と、北の代表者が話をしている。


「魔族の魔力は人間を遥かに凌駕する。我々が対等に貿易を結ぶには、あまりにリスクが高すぎるのではないか?」


北の代表が重々しく言うと、ギルの父親――魔法協会の会長が深く頷いた。

「左様。そちらに攻撃の意図がないと証明していただけねば、我が国も、後ろ盾である北の軍事力を引くわけにはまいりませんな」


「なるほど⋯⋯信用してくれとは簡単に納得はできないというわけだな⋯⋯」


⋯⋯ちょっと雲行きが怪しくなっていない?

人間側は『魔族が暴れない保証』として北の軍事力を押し付けようとしているんだわ。


そんなの、ただの軍事プレッシャーじゃない!戦争になっちゃう!


そうだわ!いいこと考えちゃった!! 北の軍隊の代わりに、私が行けばいいんだわ!


「なら! 私が魔界に行きます!」

私の声に、会議室が一瞬で静まり返った。


「北の軍事力なんかで脅さなくても、人間界で一番魔力が高い私が魔界に滞在して、魔族側に不穏な動きがないか監視すればいいでしょう? 私が人間側の『抑止力』兼『保証人』になります!」


――それに、私はアルを、魔界を信じてる。

私がこの目で確かめて、魔界が危険な場所じゃないって証明してみせるわ!


アルは一瞬驚いたように目を丸くし、それから可笑しそうに口元を緩めた。


「⋯⋯ほう? 人間界随一の『大魔法使い』が、自ら人質⋯⋯いや、監視役として魔界へ来ると?」


アルはそう言いながら、すっと立ち上がる。


その視線が、私の左腕――長袖の隙間から覗くお揃いのブレスレットに一瞬だけ注がれたのを、私は見逃さなかった⋯⋯。

「ええ!もちろんよ」

私はにこやかに微笑んだ。


アルは私の顔を見て、微笑むと。


「いい提案だ。それを飲もう。いかがかな?」


会議室は静まり返り、

ギルだけが

「ユリーナ、お前⋯⋯!」

と焦って低く声を上げたけれど、私はアルから目を逸らさなかった。



会議は貿易の他に、私が魔界へ行くこと。

私は魔界に不穏な動きがあれば人間界へ連絡をすること。

この貿易を機会に、人間と魔族の交流を深めること。


が決まった。


会議の後、私はアルに歩み寄る。


「また会えたわね?」

こっそり耳打ちすると。

「全くだ。でも⋯⋯また会えると思っていた」

アルはそう言って優しく微笑んだ。


「ユリーナ!お前本当にいいのか?」

私の後ろに立つギル。

「ギル⋯⋯大丈夫よ!」

私がギルに言うと⋯⋯


アルはギルに歩み寄る。

「ほう⋯⋯どうやら⋯⋯あの薬はうまくいったようだな⋯⋯薄っすらと出てきてるな」

アルがギルの頭頂部を見つめてつぶやいた。

!!!

「そうなの?!やったわね!」

えーでも待って!?

私はいい案が浮かんでしまった!

「ギル!もしこれ以上うまくいかなかったら、あなたの背を高くする魔法かけてあげるわよ!そしたら頭の上は誰にも見えないもの!バレないんじゃないかしら?!」

私がそう言うと、隣でアルが爆笑し始める。

!!

アルも笑うのね⋯⋯こんな風に⋯⋯

「お前といると、飽きなさそうだな!ユリーナ。支度をしてこい。魔界に向かおう」

アルは私にそう言って微笑んだ。


「ユリーナ⋯⋯お前⋯⋯まさか⋯⋯そういうことか⋯⋯」

ギルが私を見てそう小さくつぶやくと⋯⋯

諦めたように私を見た

「わかったよ。気をつけて行けよ。お前なら何があっても大丈夫だと思うけどな!」

そう言って寂しそうに微笑んだ。

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