覚醒⑤
⋯⋯
「ユーリ!ユーリ様!」
⋯⋯私を呼ぶ声がする⋯⋯
「ジン!ユーリ様に気付け薬を!あとユリーナ様から預かったアレを!!」
「ただ今!」
頭の上で何か声がする。
⋯⋯でも、邪魔をしないで⋯⋯
今は⋯⋯この続きを⋯⋯
⋯⋯
――
「それでね!見て見て!この薬ができたわけ!」
私は大満足でふんぞりがえるような態度で、ギルに小さな瓶を手渡す。
「えーなんだこれ」
ギルは怪訝そうな顔で瓶を見つめる。
「んふっふっふっふ〜ギルバード・ローリンソン君!君の頭頂部の為の薬よ!ギルあんた若ハ⋯⋯じゃなくて、薄らハ⋯⋯じゃない⋯⋯若いのに苦労⋯⋯てか、体質?⋯⋯なんだから!これで良くなるわよ」
「マジか⋯⋯なんかすごいこと言おうとしたな?今」
ふふふ。
なんだかんだで私をちゃんと信じてくれるギル!大好きだわ。
まぁ。私の魔力を知っているからだけどね。
私は自分の左腕を見る。
そこにはブレスレット。
あれから、また同じのを作ってしまった⋯⋯
ふふふふ。お揃いね⋯⋯
遠くにいる赤い瞳を思いだす。
また会いたいな⋯⋯
「ユリーナ?」
ギルが私を見る。
「なんでもないわ。薬飲んでみて!すぐには効果なくて、徐々に効いてくるはずなの!」
ギルは瓶を手に取り、うなずくと⋯⋯
いっきに瓶の中身を飲み干した。
「ん?なんか体がポカポカする⋯⋯」
「生えすぎたら切るのよ?」
私はギルにそう真面目に伝えた。
「当たり前だ」
ギルはそう言って微笑んだ。
「で?この薬を完成させるために必要な薬草を取りにどこまで行ってたんだ?」
ギルが私に尋ねる。
「んー魔界?」
私はあっけらかんと答えた。
「なんだと?!ユリーナ!お前!!!」
ギルは体を傾けて驚く。
そんな驚く?!ものすごい傾きよ?!
「でも素敵なところだったわ!⋯⋯素敵な人にも出会えたし⋯⋯」
最後は小さくつぶやいた。
アルのことはベラベラ話したり出来ないわよね。
「ユリーナ?」
「あ。ううん。何でもない」
私は慌てて笑って誤魔化す。
「ギル⋯⋯私、魔界は悪いところじゃないって思ったわ」
私が真面目な顔をしてギルにそう言うと。
「そうか⋯⋯」
ギルは静かに頷いた。
ギルは国立魔法協会の会長の息子で次期会長を継ぐ魔力の高い人。
私の幼なじみ。
ちょっと頭頂部が頼りないけど、優しい瞳のいい男なのよ。小柄だから、か弱く見えちゃうのがたまにきずね⋯⋯
人間界には
大きな国が4つあって私達がいるところが南の大国。
魔法が中心の国。
もちろん国民全員魔法はつかえないけど。
魔法のこもった魔道具などが発達している国。
それ以外の3つの国はそれぞれ⋯⋯
北の軍事国家、東は商業が盛んな国。西は宗教的なのが色濃い国。
私がいる大国⋯⋯
ここは魔法協会が治めている。
その管轄下に魔道具協会とかあって、魔道具とかたくさん作って便利なものを生産したりもしてるのよ〜
私は魔法協会に所属はしてるけど⋯⋯
魔力が人よりものすごく強いため、協会の中でも浮いた存在というか⋯⋯
半ば放置された「規格外の特例」扱いなんだよね⋯⋯。
偉い人たちからはちょっと煙たがられてるけど、まぁ、ギルがいるから居心地は悪くないのよね。
まぁ⋯⋯言い方悪いけど、私を力でねじ伏せることできる人なんかいないじゃない?だから⋯⋯結局は飼い殺し。
『大魔法使い』なんて呼んで、適当に敬って、危険な調査や難解な魔道具開発ばかり押しつけられる特命係みたいな仕事をさせられてる。
簡単に死なないだろって感じで。
でもそのぶん行動の自由が利くから、こうしてこっそり遠出もできちゃうんだけどね〜。
特権!特権!
「ユリーナ、国が魔族と貿易をする方向で話をしているらしい」
え?!
私は突然の話に目を見開く。
「本当に?!素晴らしいわ!でも、この国だけでは難しいわよね?どの国を味方につけたの?」
わが国だけでやるなんか到底思えない。
まさか⋯⋯
「北と組む」
やっぱり⋯⋯
でも⋯⋯
「あそこは軍事国家よ?!危険だわ!気に入らないと戦争になりかねないわよ?!北は頭が硬いもの!北以外と組んだほうがいいわ。東がいいと思う!商業が盛んだわ。いい貿易になるわ!」
私が言うと
ギルは首を振る。
「決定事項だ。覆らないよ⋯⋯」
「そんな⋯⋯」
嫌な予感がするわ。
私が黙っていると。
「そんな顔をするなよ⋯⋯できる限りのことはするし。きっとうまくいく」
ギルはそう言って私を見た。
「でも⋯⋯」
「確かに軍事力を持つ国を後ろ盾にするのは⋯⋯危険もある。魔界を支配しようと考えるかもしれない⋯⋯」
ギルはつぶやいだ。
「⋯⋯!!それは!そんなこと!駄目よ!ギル!あなたの理想は私と同じよね?争いから平和なんか生まれないわ!」
私がギルに詰め寄ると。
「わかっている!でも、そうならないかもしれないし。そうならないようにしていかなければならないんだ!」
ギルはうなずいた。
「私もその話し合いに行くわ!」
「もちろんだ」




