日用品の仕事は大切です!
「ユーリ先輩ーーーーッ!!」
バターン!!と、作業場のドアが思いっきり勢いよく開いた。
壊れるんじゃないかというくらいの勢いに、私とカズとリキさんは一斉に入口へ視線を向ける。
そこに立っていたのは、整った顔立ちを怒りで真っ赤にした金髪の男の子。
魔法学校を首席で卒業した超エリート⋯⋯そして大貴族のお坊ちゃま、ルークだ。
「朝から元気だねぇ、ルークおはよう〜」
私はにこやかにご挨拶をする。
「おはようじゃないです!! ユーリ先輩、またそんな雑用ばかり引き受けて! 先輩のその技術が無駄遣いされていると言っているんです!」
肩をすからせながら息巻くルークに、私は
「はいはい」
とお茶をすする。
「雑用じゃないよ〜。洗ってもシワにならないハンカチは、みんなの生活を豊かにする立派なお仕事ですー」
「くっ! そういうことを言っているんじゃないんです! 僕はっ!先輩がもっと評価されるべきだって!言ってるんですよ」
顔を耳まで真っ赤にしてプイッと横を向いてしまった
「あらあら〜。ルークちゃん、相変わらずユーリちゃんのことが大好きなのかしらぁ〜」
扇子をパタパタさせながらリキさんがニヤニヤと笑う。
「ち、違います!リキ主任! 僕はただ、効率の悪い作業を見ているとイライラするだけでッ! 勘違いしないでください!」
ルークが慌ててリキさんに言うと
「まあまあ落ち着けって、ルークちゃん」
カズがニヤニヤしながらルークの肩を組もうとすると、ルークは
「は?気安く触らないでください!」
とそれを払いのけた。
ルークは魔法学校の1つ年下の後輩。
ここ魔道具協会では2年目。
本当に高い魔力で、首席で魔法学校を卒業したんだ。
可愛い顔をしているんだけど。負けず嫌いなんだよね。
美男子で金髪サラサラヘアーが可愛いんだよね。
そんなこと言うと、子ども扱いしないでください!って言われちゃうかな?
魔法使いは付与だけの仕事ではなく。もっと他にもある。
私は付与士を選んだんだけど⋯⋯他には⋯⋯
治安維持・騎士団系とかさぁ。
土木・インフラ系とか
医療系とかね⋯⋯
色々あるのよ⋯⋯
付与士は結構地味。
工房でコツコツものに魔法を込める仕事が中心。
私みたいのにはピッタリの仕事よ。
でも。
ルークが付与士になるとは意外だった。
お家の家業にって思ってたから⋯⋯。
今でもなんか信じられない。
そんなことつくづく思いながらルークを眺めていると
「ユーリ先輩! 何ぼーっとしてるんですか?!それより!なんで僕が第一(特別付与)に推薦したのを断ったんですか!?」
あぁ〜!!
その事でお怒りなんだ?
この国立魔道具協会は大きく3つに分かれている。
国の要人を守る結界などを扱う、超エリートが集まる第一作業場。
研究やマーケティングを行う第二作業場。
そして、私たちがいる地味〜な日用品から色々担当の第三作業場。
ルークは学校を首席で卒業した超エリートだ。付与士になって第一作業場へ配属された。
「ユーリ先輩の技術なら、絶対第一で国のために働くべきです!」
「え〜、第一って忙しそうじゃん。あたしはここで、のんびり『シワにならないハンカチ』とか『くっつきにくいフライパン』作ってる方が性に合ってるんだよね〜」
「ハンカチやフライパンくらいで満足しないでくださいッ!!」
ルークはそう言って私を見つめる。
「ユーリ先輩。僕のお願いは聞いてもらえないんですか?」
私をじっと見つめて
目をうるうるさせる⋯⋯
うぐっ。
そんな顔して!
可愛い顔を向けてくるんだよね⋯⋯ルークはいつも。
そしたら結局ほだされちゃう⋯⋯
でも、今回は別。
第一なんか行きたくない。
「ルーク、私はあなたが思っているほどすごい魔力があるわけじゃないよ?大したことないよ。だから無理」
私はそう言ってハンカチに付与を始める。
「確かに⋯⋯魔力は僕より劣ってますけど⋯⋯でもユーリ先輩はなんか付与にしても何にしても他と違うじゃないですか!学生の時も僕にいろいろ教えてくれた時もなんか、他と違うすごさがあって⋯⋯だから一緒に第一で働きたいのに⋯⋯」
ルークはそう言うけど。
私は首を振る。
「ありがとう!でも今のところが気に入ってるから」
私がそう言うと
リキさんがルークのそばに来ると⋯⋯
「んふふ。あのねぇルークちゃん?第三は、ユーリを渡すつもりはないので。諦めなさい?ユーリは第三のエースなのよ?」
そして、ルークの耳元でコソコソ何かを話す。
すると⋯⋯
「ちっ違います!僕は⋯⋯」
ルークは真っ赤になって首を振る。
「あら。おこちゃまね?まだまだ。たまには引くことも覚えなさい?」
リキさんはニッコリ笑ってルークに手を振る。
「ユーリ先輩!僕はあきらめませんから!」
そう言ってルークは出ていった。
ん?リキさん何言ったのかな?




