遠征②
「しかし!ユーリ!さっきの枝の付与!素晴らしい!」
マカロン主任はそう言って私の手の枝を見つめる。
えへへ
なんとかごまかせてる?
あれから急いで馬車は出発し、何事もなく進んでいる。
「うむ!かんっぺきな!付与だ!ユーリ!さすがだ!マカロン大サービス確定だ!」
わぉ!
「あ、ありがとうございます!」
褒められてまんざらでもない。
マカロン主任はすごく褒めてくれるから好きだ!
「ジン!お前の持つ短剣も素晴らしい!!」
マカロン主任はそう言ってジンさんを見る
「いや〜我が家に代々伝わる短剣で。家宝なんですよ〜」
ジンさんがのんびり答えると
「なんと!!家宝か!!すばらしいな!!良い家宝だ!大切にしろ!」
マカロン主任はうなずきながそういってジンの肩を叩く。
「あざ〜す!!大切にします!!!」
ジンさんはそういって嬉しそうに笑った。
「少し遅れたが!暗くなる前に宿に着きそうだな!」
マカロン主任はホッとしたように馬車の外を見た。
馬車はそろそろ森をぬける。
「先ほどは突然のアクシデントだったが!その後は問題なさそうだな!しかし⋯⋯今回の遠征は比較的安全な所だったはずなんだが。やはり結界が薄れているな!その為いつもいない魔物がいたんだろう」
マカロン主任はそう言って私達を見て頷いた。
「やはり、魔族避けが薄れてるってことですか?」
ルークが尋ねると。
「ルーク!『魔族避け』ではない!『侵入を拒む付与』だ。魔族限定の付与なんぞ人間にはできない!何度も言うが、国境は何人たりともむやみやたらに色々な場所からはいれないようにするために結界をはっている。魔族限定ではない。人間だけが特別と思うな!ルーク、勘違いするな!この世界は人間だけのものではない!1つの種族だけを限定して排除する結界なぞ存在しない!それぞれの世界が存在することを忘れるな!」
マカロン主任はちゃんとわかってるんだ⋯⋯
ルークは黙って下を向いて、それから顔を上げてマカロン主任の顔を見た。
「でも、魔族は人間の敵ですよね?」
「わからん!」
え⋯⋯
突然の答えに私は唖然とした。
わからないってどういうこと?
私が黙ってマカロン主任を見ていると
「どの立場から物を言うかによるからだ!
魔族から見たら?人間はどう、うつるんだ?敵か?そう考えたらわからないということだ!ただ一つ言えることは。攻撃をされれば守るために戦う。それだけだ。」
なるほど。
みんな、大切なものを守るために戦う。
そういうことなのかもしれないな。
マカロン主任⋯⋯深い!
「マカロン主任!その話!自分!染みたっす!!」
ジンさんは眼鏡の奥の瞳をキラキラ輝かせて
マカロン主任を見つめた。
「うむ!ジン!筋があるぞ!遠征が終わったら!大マカロン巡りだ!ついてくるといい!」
「へい!!」
⋯⋯ん??なんか、違う方向に行ってない?
でも、いいか。
マカロン主任の器の大きさがなんかわかった気がする。
ルークはくだらないものを見るようにため息をつくと
「くだらない⋯⋯」
そうつぶやいて目をつぶった。
馬車は森を抜け、夕方になるころ
のどかな村についた。
「よし。無事宿についたな。全員体調に問題はないか?」
馬車から降りて、集まった私達にマカロン主任はそう言って皆を見回した。
「今日はこの宿で一泊だ。疲れただろうから。すぐ休んでくれ!食事は用意してある!明日の出発は早朝。寝坊しないように!部屋は3部屋準備している。
ユーリのみひとり部屋になる。それは皆、承知してくれ!なぜなら女性を男性と同室にはできないからだ!部屋割は馬車ごとにしよう!以上!解散!」
マカロン主任の話を聞いて、皆返事をし、宿へ向かう。
お腹もすいたから、ご飯を食べて、早く休もう〜。
食堂にたくさんの食べ物が並んでいて。
足りなかったら追加していいとのことだったの。
すごい!
私は美味しそうなお肉料理とパンを食べて大満足。
明日も早いからさっさと休もう〜。
部屋は私だけ一人部屋。
とても居心地のいいシンプルな部屋だった。
でもね〜広めのお風呂がついているの!
嬉しい〜。
私はのんびりお風呂に浸かることにした!
のんびりお風呂からでて、私は体をほぐして、リラックスしていた。
と⋯⋯
トントントン⋯⋯
ドアを叩く音。
ん?だれかなぁ?
私はドアに向かう。
「どなたですか?」
ドアを開けずに尋ねると。
「ユーリちゃん。ごめんね〜ちょっと用があってさ!」
ジンさんの声だ。
私はドアを開ける
「ジンさんどうしたんですか?」
「うん。遠征の時に、ユーリちゃんは身を守るものがなかったから、渡そうと思ってて準備しててさ。すぐ渡せばよかったよ。はい!これ」
ジンさんはそう言って私の手に物を渡す。
「え?短剣?」
手に渡されたのは短剣。
さっきジンさんの持っていた短剣とはまた違う。
これは、もう少し持ちやすくて軽い短剣。
短すぎもせず長すぎもせず。
女性が持つのにちょうどいい長さ。
剣の柄に可愛らしい赤い石がはめ込まれている。
オシャレな短剣だ。
「これ⋯⋯ジンさんくれるんですか?」
私がびっくりして尋ねると。
「うん。うちの家宝なんだけど。そういう小柄な剣は使わないからさ!ユーリちゃんつかって?」
え?!
うれしいけど⋯⋯
家宝っていってたよね?!
「か、家宝をもらうことなんて⋯⋯」
私があわてて剣を返そうとすると。
「んーいいのいいの。たくさんあるから!それに、枝ってわけにはいかないでしょ?枝なんてあやしまれるぞ?俺の家宝の剣をお裾分けってしておけばさ!どんな効果な剣になってもなにもいわれないから!安心して自分で付与つけて使いな!」
ジンさんはそう言って笑った。
え⋯⋯?
今なんて?
私が顔を上げると
ジンさんはふっと私を見つめ、優しい顔をした。
「さっきは⋯⋯怪我しなくて良かった⋯⋯すぐ守りにいけなくてごめん⋯⋯」
私の頬を優しく撫でる。
⋯⋯え⋯⋯
「じ、じんさん⋯⋯?」
びっくりして見つめる私を見て、クスっと笑うと。
ジンさんは私から離れた。
「じゃあ〜お休み〜寝坊しないようにね〜」
ちょ⋯⋯どっちが?ジンさんが寝坊しないようにでしょ?
そんなこと思いながら私は短剣を握りしめた。




