第十九章『鎧の終焉』
## 第十九章『鎧の終焉』
蒸気銃が配備されて十数年。
王国情報局の報告書が篤史の机に届く。
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周辺諸国軍事調査。
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北方連邦。
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新型銃導入。
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東方帝国。
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蒸気量産銃配備。
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西海同盟。
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艦載火器強化。
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そして共通する記述があった。
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**「フルプレート装備の損耗率増大」**
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篤史は報告書を閉じた。
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「ついに来たか」
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かつて騎士の象徴だった。
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全身鋼鉄。
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槍も剣も矢も防ぐ。
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戦場の王者。
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フルプレートアーマー。
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しかし今。
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銃弾が飛ぶ。
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高品質火薬。
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規格統一弾薬。
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蒸気生産。
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昔とは比較にならない。
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結果。
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重い。
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高価。
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整備が大変。
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銃弾を完全には防げない。
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つまり。
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費用対効果が悪い。
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軍事会議。
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将軍達が集まる。
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老将軍は怒った。
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「騎士の誇りだ!」
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「伝統だ!」
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「先祖代々!」
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篤史は静かに聞いていた。
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そして一枚の資料を出す。
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フルプレート騎士一人。
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製造費。
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維持費。
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馬代。
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従者代。
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補修費。
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合計。
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銃兵二十人分。
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会議室が静まる。
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さらに次の資料。
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演習結果。
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フルプレート部隊。
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銃兵中隊。
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結果。
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銃兵勝利。
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老将軍も黙る。
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数字は残酷だった。
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篤史は言う。
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「騎士を否定しない」
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「しかし鎧は道具だ」
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「道具は役目を終える」
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そこで軍改革案が提出される。
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## 重装騎士隊縮小計画
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全面廃止ではない。
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まず新規製造停止。
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老朽装備更新停止。
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予備役化。
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代わりに。
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## 機動歩兵軍団
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軽量防具。
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統一銃。
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統一弾薬。
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携帯塹壕工具。
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通信兵。
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衛生兵。
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補給部隊。
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兵士一人の戦闘力ではなく、
軍全体の能力を高める。
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若い士官達は賛成した。
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実戦を知っていたからだ。
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銃の時代に入っている。
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もう見栄では勝てない。
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騎士団長オゼルウドの孫にあたる将軍が言った。
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「祖父なら賛成したでしょう」
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「なぜだ」
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「祖父は強い軍が好きでした」
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「古い軍ではなく」
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篤史は笑った。
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確かにそうだ。
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そして王命が下る。
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## 騎士装備転換令
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フルプレート。
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儀礼用へ。
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戦場配備終了。
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全国で議論が起きた。
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保守派は怒る。
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改革派は喜ぶ。
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しかし数年後。
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誰も反対しなくなった。
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理由は単純。
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事故が減った。
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維持費が減った。
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機動力が上がった。
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補給も改善した。
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戦争が起きた時。
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空覚王国軍は証明する。
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豪華な鎧ではなく。
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規格化された銃。
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訓練された兵士。
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整った補給。
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それが勝敗を決めることを。
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夜。
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王宮博物館。
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引退したフルプレートが並ぶ。
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磨かれた鋼。
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美しい装飾。
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歴史そのもの。
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篤史は静かに眺める。
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「お疲れ様」
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誰に言うでもなく呟いた。
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それは騎士への別れではなかった。
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一つの時代への敬意だった。
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そして空覚王国は、
騎士の時代から、
工業と規格の時代へと完全に歩みを進めていくのだった。




