第二十章『原点への帰還』
## 第二十章『原点への帰還』
蒸気機関。
通信網。
統一規格銃。
廃法年。
人口政策。
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数々の改革を進めた篤史だったが、
ある日、王国統計を見て手が止まる。
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義肢利用者数。
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増加。
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戦争によるものではない。
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炭鉱事故。
工場事故。
農業機械事故。
高齢化。
病気。
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王国が発展した結果、
生き延びる人も増えていた。
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そして篤史は思い出す。
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龍瀬恭平。
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義肢職人だった頃の自分を。
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「随分遠くまで来たな」
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そう呟いた。
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しかし考えてみれば、
すべての始まりは義肢だった。
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## 王立義肢院創設
王命が下る。
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空覚王国王立義肢院。
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研究。
教育。
製造。
認証。
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すべてを統括する機関。
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王国中の職人が集められる。
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鍛冶師。
革職人。
木工職人。
機械技師。
医師。
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そして篤史は最初の命令を出す。
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## 義肢制作尺貫法
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義肢の規格統一。
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腕部。
脚部。
関節。
固定具。
連結部品。
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すべて寸法規格化。
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以前は職人ごとに違った。
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修理不能。
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交換不能。
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職人死亡で再現不能。
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そんな問題が多発していた。
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そこで王国標準局が動く。
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子供用。
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成人女性用。
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成人男性用。
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大型体格用。
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複数規格を整備。
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部品互換性を確保。
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地方の義肢工房でも、
王都製部品が使える。
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王都でも、
辺境部品が修理できる。
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義肢利用者は大喜びした。
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修理代が激減したからだ。
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次に篤史は教育へ手を入れる。
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## 義肢資格制度
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これまで義肢職人は名人芸だった。
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弟子入り。
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見て覚える。
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勘で作る。
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篤史は首を振った。
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「それでは足りない」
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そこで資格制度創設。
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三級義肢士
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基本製作。
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二級義肢士
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修理・調整。
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一級義肢士
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設計・研究。
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さらに。
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王立義肢学院設立。
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全国から学生を募集。
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学費補助。
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奨学金制度。
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卒業後は地方へ派遣。
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結果。
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義肢職人不足が解消される。
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王妃エレナが尋ねた。
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「なぜそこまで力を入れるのですか?」
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篤史は少し考える。
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そして笑った。
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「昔の借りを返しているんです」
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もちろん意味は伝わらない。
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だが篤史には分かっていた。
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もし昔、
義肢職人になっていなければ。
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第三王子にもなっていない。
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ノグランルにもなっていない。
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今の自分も存在しない。
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数十年後。
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空覚王国の義肢技術は世界最高峰となる。
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事故で腕を失った者。
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脚を失った者。
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生まれつき障害のある者。
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全てが支援対象。
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そして王立義肢院の入口には、
創設者名が刻まれていた。
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篤史王。
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だがその下には、
誰にも意味の分からない一文がある。
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**「最初に直すべきは、人ではなく絶望である。」**
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職員達はその意味を議論した。
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しかし真相を知る者はいない。
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それはかつて、
王でも貴族でもなく、
ただ一人の義肢職人だった男が、
生涯を通して抱き続けた信念だった。
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そして篤史は晩年、
王立義肢院の工房を訪れ、
若い職人達が規格化された義肢を作る姿を見て静かに笑う。
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「ようやく……普通の仕事になったな」
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それは王としてではなく、
かつての職人としての、
何より嬉しい言葉だった。




