第十三章『子供が育つ国』
## 第十三章『子供が育つ国』
篤史は人口統計を見続けていた。
出生数。
婚姻数。
離婚数。
人口移動。
教育費。
住宅費。
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そして結論を出した。
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「子供が減っているのではない」
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「親になる不安が増えている」
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王妃エレナは首を傾げる。
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「不安ですか?」
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篤史は頷く。
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「人は子供を嫌いになったわけじゃない」
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「育てられる自信を失ったんだ」
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そこで篤史は全国調査を命じた。
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結果は予想通りだった。
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若い夫婦の悩み。
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・どう育てたらいいかわからない
・叱り方がわからない
・仕事との両立が不安
・失敗したくない
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お金の問題もあった。
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だがそれ以上に、
心の問題が大きかった。
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そこで篤史は国家方針を決める。
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## 王国育児三原則
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### 1 安心(安全基地)
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子供にとって親は港である。
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失敗しても帰れる。
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泣いても帰れる。
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怖くても帰れる。
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これを国家教育の中心に据えた。
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全国の学校。
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保育所。
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孤児院。
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教会。
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全てで教える。
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「子供は安心から育つ」
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を合言葉にした。
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### 2 自己理解(感情の言語化)
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篤史は驚いていた。
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大人ですら自分の感情を説明できない。
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怒った。
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悲しい。
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寂しい。
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悔しい。
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区別できない。
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そこで幼児教育に導入する。
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感情カード。
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感情日記。
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親子対話時間。
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五歳児でも
「私は悔しかった」
と言える教育。
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すると喧嘩が減った。
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いじめも減った。
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家庭内暴力も減った。
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### 3 主体性(選択と成功体験)
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篤史は昔の義肢工房を思い出す。
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人は自分で選んだ時に成長する。
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だから子供にも選ばせる。
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服。
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遊び。
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勉強。
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小さなことから。
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失敗してもいい。
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成功したら褒める。
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すると子供達の自信が育った。
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そしてここからが国家政策だった。
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## 子育て支援局
創設
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若い親へ無料相談。
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育児教室。
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家庭訪問。
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親向け講習。
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すべて無料。
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王妃エレナが局長となった。
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驚くほど人気が出た。
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五年後。
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出生率上昇。
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十年後。
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離婚率低下。
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十五年後。
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不登校減少。
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二十年後。
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犯罪率減少。
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学者達は首を傾げた。
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「なぜ人口が回復したのか」
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財務大臣は言う。
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「補助金ですか?」
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違った。
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住宅政策ですか?
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違った。
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税制ですか?
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違った。
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篤史は静かに答えた。
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「親を支えたからだ」
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子供は未来だった。
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しかし未来を支えるのは、
今の親だった。
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だから親を孤立させない。
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助けを求められる。
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失敗を話せる。
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相談できる。
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その仕組みを作った。
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ある日。
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篤史は王宮の庭を見る。
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五歳くらいの子供達が遊んでいる。
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転ぶ。
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泣く。
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親の所へ走る。
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抱きしめられる。
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また遊びに戻る。
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篤史は笑った。
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「国家も同じかもしれないな」
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安心できる場所がある。
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自分を理解できる。
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自分で選べる。
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その三つが揃えば、
人も国も前へ進める。
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こうして第二十五代国王篤史は、
道路でも軍でもなく、
**「親子の心を守る仕組み」**
を国家制度として残した。
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後世の歴史書にはこう記される。
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**『篤史王の最大の事業は人口政策ではない。安心して親になれる国を作ったことである。』**




