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第5話 昼休みの搾乳と脱出計画

午前十一時三十分。太陽が一番ギラつく時間だ。


ジャリさんは神の雫DXの屋台を押して、意気揚々とやってきた。場所はゴールデンスポット。カフェ・ミルクホールの前、短大棟の隣だ。


屋台の看板にはマジックでこう書いてある。


『神乳短大限定!飲めば美肌効果!飲めばモテ肌!』


さらに屋台の脇にはスマホスタンド。TikTokライブ配信中だ。

画面にはデカデカと表示される。


『現役ハーブ研究家・ジャリ先生』

『美肌の秘訣はこの氷にあり!』


ジャリさんは時々ライブに向かって、偽造の賞状を掲げて叫ぶ。

「見てくれ皆!俺はジャワ島伝統の秘薬協会認定の専門家だ!この氷にはな、百年伝わる美肌の秘薬が入ってるんだ!」


もちろん賞状は昨日ドンキで買った紙に、自分で印鑑押しただけだ。


ジャリさんは汗を拭い、教室から出てくる女子学生たちにニタリと笑いかけた。


「へへへ……稼ぎ時が来たぜ。美肌になりたい女子大生は、俺の財布を太らせる」


氷を削り始める。シャリッ……シャリッ……

鍋ではアグスから仕入れた訳あり果物の紫シロップが煮えたぎっている。甘い。ベタつく。腐敗臭は砂糖でごまかしてある。


ライブのコメント欄が流れる。

『先生すごい!』

『どこで買えますか?』

『美肌なりたい!』


ジャリさんはカメラ目線でドヤ顔する。

「コメントありがとよ!この神の雫DXを飲めば、君も一週間でモテ肌だ!原価は企業秘密だがな、効果は本物だぜ!」


一杯の原価は十円。

売値は百円。

利益率九百パーセント。


「女子大生なんて、美肌って言葉に弱いんだよ。特に『専門家のお墨付き』があれば、秒で信じる」


「ジャリさん!氷ひとつください!」


来た。新しいNPCだ。髪はツインテール。スカートは短い。胸は……こ、これは神の悪戯か……!?


名前はメグミちゃん。短大の学生。常連だ。

性格は良い。純粋だ。脳みそは空っぽなくらい純粋そうだ。


メグミは財布を出すために鞄を漁る。自然と前かがみになる。


ボイン。

ボイン。


重力が仕事をした。世界が揺れた。


氷をかき混ぜていたジャリさんは、その場でフリーズした。手に持ったスプーンが震える。

涎がシロップの鍋に垂れた。


ジャリさんの心の声

「……やっぱ神乳短大だぜ。目の保養だ……これタダだし、VR代払わなくていいし……ライブの再生数も稼げるし……一石三鳥だ」


メグミは顔を上げ、無邪気に笑った。

「これ百円です!ジャリ先生の氷で美肌になります!」


「お、おお……あ、ああ……頑張って美肌になれよ……」

ジャリさんはどもった。手が滑って氷を渡し間違えた。本当はMサイズなのに、Lサイズを渡してしまった。


メグミは氷を吸いながら去っていく。ライブのコメントが荒れる。

『メグミちゃん可愛い!』

『俺も買いに行きたい!』


商売はさらに繁盛した。

理由は氷が美味いからじゃない。

理由はメグミが一日三回も来るのと、ライブ配信でバズってるからだ。


狭い水槽の中で、ミコは黙っていた。

結露したガラス越しに、全てを見ていた。


水は二日も替えられていない。生臭い。

体はだるい。だが頭は動き続けている。


ミコの思考

「こいつ……偽の権威で商売してやがる……」

「被害者は、何も知らない無垢な子供たちだ……」

「ロジャリ博士が守りたかった『人間』って……こいつらか?スケベと馬鹿と、詐欺師の集まりか?」


ミコは吐き気がした。空腹だからじゃない。

嫌悪感からだ。


檻の周りを観察する。

鍵は?錆びている。緑色だ。

蝶番は?緩んでいる。体当たり一発で外れそうだ。

問題は真っ昼間だ。ジャリさんは起きている。


今逃げれば捕まる。捕まれば氷のトッピングにされる。


ミコは息を吸い込んだ。焦るな。

ロジャリ博士の三番目の術。『隙を観察せよ』


目が水槽の隅を舐めるように見る。

そこに。あった。


一本の錆びた釘が、腐った木から飛び出している。先端は尖っている。

サイズはちょうどいい。ミコの小指くらいだ。


もしこれを引っこ抜ければ……

蝶番をこじ開けられる。武器にもなる。


ミコはニヤリと笑った。ジャリさんに攫われてから初めてだ。


その笑いは幸せな笑いじゃない。

法律の抜け穴を見つけた悪党の笑いだ。


心の中で

「……よし、あれでやる」

「待ってろよ、ジャリさん……」

「明日の昼休み……搾乳で赤くなるのはお前じゃない……」

「お前の顔が赤くなるんだ……詰みにされてな」


まだ痛む尻尾の切れ端を撫でた。

計画はまだ完璧じゃない。だが希望は生まれた。


外では、ジャリさんがまだライブ配信しながら笑い転げている。

「バズってるバズってる!俺の氷は神だ!フォローよろしく!」


奴は知らない。

二十センチ四方の水槽の中に、奴の破滅を計画している神がいることを。


ついに、第5話を投稿できました。


私はまだ、日給250円でなんとか生きてます。はははは。


実は、作中に登場したバズりスイーツ「ジャリさん」は、こちらの清涼飲料メニューが元ネタです。

一番安いものでも、一杯1万〜1万5千ルピア(約100〜150円)します。

名前は「ソップ・ブア(Sop Buah)」。

色々な種類のフルーツをサイコロ状に切って、そこに氷とシロップをかけたものです。

インドネシアみたいな熱帯の国の天気には、最高に気持ちいいんです。


でも、今の私には、それを買う余裕すらありません。

ただ、皆さんからの「ブックマーク」「★評価」「コメント」が、この暑い一日を乗り切るための、最高の清涼剤になります。


お願いです。画面下のボタンを押してやってください。作者、本当に嬉しいです。

あなたのブックマークが、作者を今日の暑さから救う最初の一歩になります。マジで。


では、第6話でお会いしましょう。

ブックマーク、よろしくお願いします!

Trowy-San

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