新展開 ネバーエンディング飛行機野郎どもっ!
かくしてネットは平和となった。なんせ今回の神様批判とは関係ない誹謗中傷も飛び火を恐れて皆、黙り込んだからだ。
こうして再度神様を迎える下準備は整った。しかし折角新たに神様をお迎えするのならば新しい事をやりたいとの意見が出る。
そして協議の途中で次のような意見が出された。
「ロケットが駄目ならば飛行機を飛ばせばいいじゃない。」
おうっ、なんてこったいっ!そいつは盲点だったぜっ!確かにロケットよりも飛行機の方が『飛ぶ』という表現に合致しているっ!
だが、飛行機はある意味ロケットよりも飛ばすのが難しい。特に昨今はドローンなどという無人飛翔兵器が戦場の空を飛びまわっているので、無人飛行機を飛ばすのは公安から目を付けられやすい。
しかしここでもまた次のような意見が出された。
「無人が駄目ならば人を乗せればいいじゃない。」
おうっ、なんてこったいっ!そいつは盲点だったぜっ!確かに人が乗ればそれはドローンではない。
まぁ、その分だけ積載重量は減るがそんなのはエンジンの出力を上げればどうとでもなる。と言うかロシアのアントノフ-225『ムリヤ』は、6発のジェットエンジンに物言わせて250t以上という世界最大の積載重量を誇っていたからな。
しかしここでもまた次のような意見が出された。
「そんな飛行機を飛ばす金はない。もっと安価で飛ぶ方法を考えよう。」
うん、まぁ、現代は何をやるにしてもコストを考えなければならないのだ。なので金食い虫の宇宙開発は議会から予算を貰えないのである。
結果、当時毎年琵琶湖で開催されていたイベントをパクる事になった。そのイベントとは自作人力飛行機による飛行距離および飛行時間を競う『鳥人間コンテスト』である。
但し、最新の『鳥人間コンテスト』は機体設計と制作技術が高度化し、その飛行距離は2時間半をかけて70kmに届かんばかりとなっていた。
確かにこれと同じだけ飛行出来れば神様も納得してくれるだろう。
なので地区の人々は、この大会に『第33回人力飛行大会』という名称を付けて企画を宮司経由で神様に提案した。
この提案に対して、まぁ、神様も勢いで家出したものの実際には戻りたかったらしく、しょうがねぇなぁという体で承諾くして下さった。
ただ、神様としても乞われたからと言ってほいほいと戻るのはちょっと気まずかったのか、大会に対して幾つかの制約を課してきた。
その制約は次の5項目である。
1.飛行機の飛翔に関する動力源は『人力』のみとする。
2.機体総重量は333kgを下回ってはいけない。
3.飛翔高度は333m以上を33秒以上連続して維持しなければいけない。
4.飛翔距離は水平距離で333m以上、水平飛行をしなければいけない。
5.飛翔速度は秒速333m以上を希望する。但しこれは絶対ではない。
なんの拘りがあるのかやたらと『3』という数字が散見したが、2番目の機体重量は333kg以上という制約は『人力飛行』としてはかなりハードルが高い制限だ。
また、この重量を高度333m以上にまで持ち上げるのも一筋縄ではいくまい。
5番に至ってはほぼ無茶振りである。そもそも秒速333以上とは殆ど音の速度だ。
だが、要求が高ければ高くなるほど燃えるのが日本人の性格らしい。なので動力源としては人数を増やす事で対応してきた。
また、2番に関してはそもそも搭載するおちゃけの重量が400kg近いので意味が無い。
そして3番に関しては秘策があった。なので4番の制約をクリアする方が大変だったらしい。
更に5番に関しては、そもそも無茶振り過ぎる。なので初めからスルーする事にしたらしい。
とは言ってもこの5項目、・・実質は4項目だが、それを実現させるのは厳しい。なので今回は地区毎ではなく全地区が一体となって人力飛行機を製作する事にしたらしい。
そして当然ながらその開発には多大な経費と時間と労力がかかった。
いや、嘘である。確かにお金は掛かったが、その殆どは打ち合わせや製作作業後の飲み会にかかった費用である。
時間に関しても、その殆どは飲み会というコミニュケーションの場を含んだ数字なので実際の製作時間は経理に計上された時間の1/10以下なはずである。
そう、とにかく彼らは何かにつけて飲んでいたのだ。何故ならば彼らは『おちゃけの神様』を信奉しているからっ!
なので神社にて新しい巫女様をお迎えする席でも彼らは飲んでいた。
地区民A「いや~、新しい巫女様への応募が直ぐあってよかったですなぁ。」
地区民B「んだなぁ、やっぱりこれもおちゃけの神様のご威光があればこそだんべなぁ。」
地区民C「前の巫女様もおちゃけさえ飲まなけりゃ、それほど悪くはなかったんじゃがなぁ。」
地区民D「いや、おちゃけ神の巫女なんだから下戸では駄目だろう。」
地区民E「それはそうだが、あの巫女は飲み過ぎだ。子供たちに示しががつかん。」
地区民F「うむ、確かに。あれでは何れ肝臓をやってしまうに違いない。」
地区民G「はははっ!大丈夫っ!我らにはおちゃけの神様がついているっ!なので飲むべしっ!おちゃけを飲み続ける事が神様へのご奉仕だぁっ!」
地区民H「おうっ、そうだ、そうだっ!うむっ、飲むべし、呑むべしっ!」
いや、その理屈はあまりにも身勝手なんじゃないかなぁ。ほら、医療の神様が顔をしかめているぞ?
とは言え、なんのかんの言ってもこれらは酒の席の戯言だ。なので神様も咎めはしないだろう。
そして宴もたけなわとなったころ、地区民たちに新しい巫女様をお披露目する事になった。
どろどろどろどろ~
神社の境内にどこからともなくドラムロールの連続音が響き渡る。そして何故か周囲が真っ暗になった。
だが次の瞬間、神様が祭られている本殿の扉にスポットライトを注がれ、誰も手をかけていないのに扉がひとりでに開いた。
するとそこには巫女の衣装を身にまとった女性がいたのである。そう、彼女こそが新しい巫女。new巫女さまであるっ!
「じゃじゃ~んっ!呼ばれて飛び出て、今日も元気だ、おちゃけがうまいっ!」
初っ端からハイテンションなnew巫女さまに地区民たちは唖然となった。いや、違う。彼らが驚いたのはそこに立っていたのが、ちょっと前に月へ追放したはずの『神輿 恋菜 (みこし こいな)22歳+アルファ』だったからである。
この事態に地区民たちのテンションは一気に冷めた。うん、空気を読まないにもほどがある。
地区民たちは新たに巫女となった『女の子』に対して夢と希望を抱いていたのに、ふたを開けたらこの出オチである。
そもそも巫女はどうやって月から戻ったのだ?月へ送り込んだロケットは片道分の燃料しか積んでいなかったはずだぞ?
いや、そこは勘ぐるまい。どうせ説明されても『瞬間移動』とか『宇宙人のUFO』とかの理不尽なご都合主義でお茶を濁してくるはずだから。
そして空気を読まない巫女は黙り込む地区民たちに向かって高らかに宣言した。
「アイ シャル リターンっ!」皆の者、我がいなくなってさぞかし寂しかったであろう。だが安心するがよい。我は戻ったっ!読売巨人軍と我の巫女職は永久に不滅じゃ~っ!」
いや、巫女よ。そこは『アイ ハブ リターンド』と言うべきではないのか?かっこつけて英語で言おうとするから間違えたんだろう?
後、長嶋茂雄氏の名言をパクるのはよしなさいっ!
まぁ、地区民たちには申し訳ないが、本殿から現われたという事は神輿 恋菜は神様に巫女として承認されたという事だ。
なので残念ながら地区民たちに拒否権はない。因みに神輿 恋菜は一度落選した事を踏まえ、名称の変更を宣言してきた。その新たな名前は『シン・神楽恋菜』である。
いや、実は巫女は新しい名称を幾つか挙げてきていた。そして地区民たちに選ばせたのだ。その際の言い草が「うむっ、これぞ民主主義っ!地区民は選んだ以上どんな我侭でも従うようにっ!」だった。
ははは、お前は第47代の米国大統領かっ!
因みに巫女が他に挙げた候補名は次のようなものだった。
『神楽恋菜・2』
『神楽恋菜セカンド』
『神楽恋菜リターンズ』
『神楽恋菜Loveっ!』
『神楽恋菜、マジで神っ!』
『プリティ神楽恋菜ちゃん』
『アルティメット神楽恋菜』
『ビューティハニー神楽恋菜』
『伯爵令嬢神楽恋菜』等々・・
そう、何を選んでも駄目ダメな事には変わりはなかったので、結局地区民たちはアミダで決めたらしい。
で、ちょっとしたハプニングはあったが新しい?巫女様も決まった事により、地区民たちは次の神事に向けて自作人力飛行機の設計製作に入った。
そして時は流れ前回の神事より6年後。めでたくも本日、新たに祝い方と名称を改めた『シン・べろんべろん祭』が執り行われる事となった。
だが何故か用意された人力飛行機は種類の違うものが2機もあった。
これは万が一片方が失敗た場合の保険のようなものなのかも知れない。そしてそれら2機の諸元は次のようなものだった。
名称:人力飛行機『エレキテル』
動力担当人数:333人
推進方法:電気モーター駆動プロペラ推進
推進基数:33基
プロペラ直径:3.3m
機体重量:3333kg
積載重量:444kg(お神酒の重さ+パイロットの体重)
全長:33m
翼長:333m
乗組員:1名 (体重制限により女子中学生が搭乗)
そう、なんと人力飛行機『エレキテル』は電気駆動だったのだっ!因みに動力担当人数の333人とは、地上で発電機を回す為の動力である自転車を漕ぐ人数である。
そう、なんと人力飛行機『エレキテル』はバッテリーを搭載しておらず、モーターの電力は地上からマイクロ波に変換されて飛行機に飛ばしているのだ。
まぁ、確かにこれならば動力源は『人力』のみと言い張れるかも知れない。
因みにそんなマイクロ波を浴びたら搭乗している女子中学生がこんがりしてしまうのではないのか?という疑問は杞憂だ。
そう、そこはちゃんと対策が取られており、それは波長サイズよりも小さい金属で操縦席を囲うというものだった。
これは簡単に言うと電子レンジの扉に張られているメッシュと同じ原理だ。
何故電子レンジは中が見えるようになっているのに、そこからマイクロ波が外に漏れないのかと言うと、扉のガラスにはマイクロ波の波長よりも小さい網目状の金属メッシュが貼り付けられているからだ。
これは大小さまざまなサイズのモノが交じり合っているものをサイズ毎に分別するのに使われる『ふるい』と同じ理屈を応用したものである。
ほら、ふるいの網目より大きいものはふるいから零れ落ちないでしょ?なので一見隙間だらけのように見えても、メッシュはその網目のサイズよりも大きいものは通さないのだ。
因みに電子レンジの加熱原理は第二次大戦末期、米国の技術者が軍事用レーダーの開発実験をしている時にポケットに入れていたチョコレートが溶けたことで偶然発見したそうだ。
と言う事で、マイクロ波による電力供給は『ちゃんとした対策』さえ施されていれば乗組員に危険はない事は理解したであろう。
更になんで全長に対して翼長が333mもあるのかと言うと、単なる洒落です。本当ならば33mくらいでもなんとか飛べるはずです。
そしてもう1機の方の諸元は次のようなものだった。
名称:人力飛行機『カミカゼ』
動力担当人数:3人
推進方法:重力推進
プロペラ数:0基 つまりグライダー。
機体重量:333kg
積載重量:666kg(殆どは搭乗員とお神酒の重さ)
全長:33m
翼長:33m
乗組員:3名
さて、こちらは純然たるグライダー、つまり無動力である。なのに何故動力担当が3人もいるのかと言うと、こいつらはどうしても俺が乗ると言い張って聞かなかったからだ。
因みに人力飛行機『カミカゼ』は無動力なので自力では飛び上がれない。なので通常のグライダーは他の動力飛行機などに牽引してもらって空に舞い上がるのだが、人力飛行機『カミカゼ』は
陸上自衛隊の協力によりCH-47チヌークヘリコプターにて高度3333mにまで吊り上げてもらい、そこから滑空させるつもりらしい。
確かにこの方法ならば3番目の制約である飛翔高度と飛行時間は楽勝でクリア出来るはずだ。
更に重力を利用してある程度まで速度が上がれば4番目の制約である水平距離で333m以上の水平飛行も楽勝だろう。
但し大会としては類似のモノが普及しているグライダー『カミカゼ』よりは電気モーター駆動の『エレキテル』に注目が集まったのは致し方がないところであろう。
では少々前置きが長くなったのでとっとと『シン・べろんべろん祭』の描写に移ろうと思う。
だが、それを書くべきノートの余白がなくなったので続きは次回に持ち越しだっ!




