かしこみ、かしこみ、祓いたまえ、清めたまえ
ぽんぽんぽ~ん
快晴の空の下、祭事開始を告げる音花火の音が会場となっている県営運動公園のサッカーグラウンド周辺にこだました。
そして田舎特有の広さだけはある会場には現在99発もの手製ロケットがそびえ立ち、その中央では地区の代表たちが紋付袴の正装で祭事が開催されるのを静かに待っていた。
そんな中、広場中央に設けられた祭壇の前にひとりの女性が祓串 (はらえぐし)を手に現われると祭壇に一礼して祝詞を唱え始めた。
「あーっ、かしこみ、かしこみ、消費税込み。派閥争いなんぞをしている無能な代議士共を祓いたまえ、清めたまえ。ついでに家内安全、無病息災、賃金アップも宜しくぽんぽん。とっぴんぱらりのぷぅ。」
因みに本来ならば祝詞は巫女ではなく神主や宮司が唱えるものなのだが、まぁ、そこら辺はあまり深く追求しないでおこう。
そもそもとっぴんぱらりのぷぅは祝詞の結び言葉ではないっ!
さて、神様への挨拶が済むと巫女は次に用意されていたスタンドマイクの前に立ち集まった地区民と観客たちに向かって祭事の開催を宣言した。
「あーっ、テステス。本日は晴天なり。只今マイクのテスト中。隣の客はよく柿食う客だ。青巻紙、赤巻紙、黄巻紙。レゲエの髪はドレッドロックス。お譲様は縦ロールっ!うむ、異常なし。では、ここに酒造りの神である少名毘古那神 (スクナヒコナガミ)とバッカス神の協賛にて第3千333回空飛ぶおちゃけ祭りの開催を宣言するっ!かんぱーいっ!」
「おーっ!」ぱちぱちぱち
巫女の宣言に合わせて会場から歓声と拍手が沸きあがった。それに合わせるかのように米空軍のアクロバットチームであるサンダーバーズのF-16ファイティングファルコン戦闘機5機が色とりどりの煙幕を曳きながら会場の上空をフライパスした。
そして米海軍のアクロバットチームであるブルーエンジェルスのF/A18F スーパーホーネット戦闘機もそれに続いた。
更にはイタリア空軍のフレッチェトリコローリやイギリス空軍のレッドアローズ、フランス空軍のパドルイユドフランスなど、世界各国のアクロバット飛行隊が後から後から延々と会場上空をパスしていった。おかげで空が一時パステルカラーに染まった程である。
そして最初こそ、その演出に歓声を挙げていた観客たちも、33分後にはさすがにいつまで続くんだよっ!さっさと始めろっ!とブーイングを挙げ始めた。
なので本来一番沸き立つはずの大トリを務める日本国航空自衛隊所属のブルーインパルスが大空に大きなハートマークを描いた時の観客たちの反応はやっと終わったか・・というようなものだった。
そう、ゲームなどでもオープニングムービーが長過ぎると、それが如何に素敵なムービーでもプレイヤーは飽きるのだ。
ともあれ、漸く一番最初のロケットが打ち上げられるとの場内アナウンスがかかった。
因みにアナウンス譲は某青春野球アニメで主人公たちから好意を持たれる女の子の声を担当した声優さんだ。
「それではみなさんお待たせしました。これよりおちゃけロケットの奉納を開始します。発射に関しては3発同時に行なわれますので驚かないように。それではエントリーナンバー1番。上杉地区奉納ロケット。協賛国はロシアで、ロケット名称はソユーズ。お神酒名はウオッカです。それではカウントダウン開始っ!」
アナウンス譲の号令に合わせて会場内の別スピーカーからカウントダウンの合成音声が流れる。
「最終打ち上げシーケンスを開始します。各種セーフティ解除。状況オールグリーン。外部電源からロケット内バッテリーへの切り替え成功。点火シーケンス開始。発射10秒前、9、8、7、6、5、メインエンジン点火。2、1、リフトオフっ!」
メインエンジンへの点火と共に盛大な火炎がロケットのノズルから噴射され、3箇所同時にもうもうとした排気煙が立ち昇る。
その中をゆっくりと上昇してゆく3基のソユーズ奉納ロケット。そう、普通の打ち上げ花火は点火と同時に勢いよく飛び上がるが、搭載能力ぎりぎりの333kgものおちゃけを積んだ奉納ロケットは最初はとてもゆっくり上昇するのだ。
だが燃焼した燃料分軽くなったロケットは瞬く間に速度を上げてゆく。そして3秒とかからず高度333mに達したロケットたちは空中でおちゃけの入った容器を分離投射させると、その中身を大気中にばらまいた。
因みにロケット本体はその後も進路を山の方に向けて上昇を続け、今は耕作放棄地となっている田んぼに落下傘にて降着するように仕掛けられていた。
まっ、たまに失敗して明後日の方へ飛んでしまう事もあったが、今の所神様の加護のおかげで人的被害は生じていない。
そして会場では降り注ぐウオッカを浴びようと観客たちが総立ちになって手を天空にかざしていた。
まぁ、これは当日の風向きによって全然降ってこない場所もあるので浴びれるかどうかは運次第だ。
因みに空から降り注ぐおちゃけを浴びるとその後1年間は無病息災になると言われている。まっ、あくまで言われているだけで実際には風邪くらいは普通にひくらしいのだが・・。
で、無事に奉納ロケットが打ちあがると、そのロケットが運んでいたおちゃけと同じモノが観客たちに振舞われる。
そのおちゃけを振舞うのはおちゃけを奉納したメーカーが雇ったアルバイトの女の子たちだ。そう、彼女たちは背中に20kgにもなるおちゃけが入った容器を背負い、観客席の中をおちゃけを希望する声のする方へ向かいお酌をしてくれるのである。
そしておちゃけの種類としてはやはりビールが人気だそうだ。なのでお神酒としてビールを奉納する地区のロケットが打ちあがる時が一番盛り上がるらしい。
因みにその際、女の子たちにボディタッチなんぞをした輩には天罰が下る。具体的には瞬く間にアルコールが体中に広がり昏睡するらしい。
で、そんな観客の期待を汲んで、次に打ち上げられたロケットは米国のロケットを模したもので奉納するおちゃけは当然『ビール』で品名はバド○イザーだった。
「それでは続きましてエントリーナンバー2番。武田地区奉納ロケット。協賛国は米国で、ロケット名称はサターンⅤ。お神酒はビールです。それではカウントダウン開始っ!」
「最終打ち上げシーケンスを開始します。各種セーフティ解除。状況オールグリーン。外部電源からロケット内バッテリーへの切り替え成功。点火シーケンス開始。発射10秒前、9、8、7、6、5、メインエンジン点火。2、1、リフトオフっ!」
どどどどどっ!
メインエンジンをクラスタ形式に束ねたソユーズ奉納ロケットとは違い、補助ロケットにて推力を増強している3基のサターンⅤは400リットルのビール荷重をものともせずに一気に大空へと飛び上がった。
そして高度333mに達したロケットたちは空中でおちゃけの入った容器を分離投射させると、その中身を大気中にばらまいた。
どばーっ!
はい、上昇時の振動により程よく攪拌されたビールは一気に泡となり地上に届く前に霧散してしまった。
まぁ、それでもお神酒自体は女の子たちから無償提供されるので観客たちからのクレームはない。
と言うか観客席では既にお酒が回った人たちで飲めや歌えやの大宴会が始まっている。因みにお酒は無償提供されるが酒のつまみは自腹で購入しなければならない。
そんな客目当ての露店が会場の周りで多数営業しており、お酒が飲めない者たちも様々に食べ物を食べながら打ち上げを楽しんでいた。
そんな感じで奉納ロケットの打ち上げ神事は順調に進んだのだが、そんな神聖?なる神事を邪魔しようとする者たちがこの場にいる事を人々はまだ知らなかった。
そう、その組織の名は『まお~ん』。地球から16万8千光年彼方にある大マゼラン銀河帝国から地球を侵略する為に送り込まれた先兵である。




