特攻カミカゼアタック 歌は世界を滅ぼす
さて、こうなるとビーム以外に攻撃方法を持たないロボット兵は劣勢となる。しかしロボット兵に組み込まれているプログラムは、どのような手段をもってしても天空の城『アポロニア』を守らねばならないと刷り込まれていた。
なのでロボット兵たちは今度はなんと自らの体を弾体としてゴリアテに突っ込んできたのである。
そう、所謂『特攻カミカゼアタック』を敢行したのだ。この死をも厭わぬ無謀な攻撃にゴリアテの兵士たちは恐怖した。
いや、元々ロボットは機械なので『死』という概念は当てはまらないのだが、見た目が人間に似ているのでゴリアテの兵士たちは錯覚してしまったのである。
これが通常のミサイルなどの形だったならばそんな感情も起こらなかったのだろうが、ある意味、これは人間の心の隙を突いた心理攻撃でもあったのかも知れない。
しかもビームならば99.99・・%以上を弾き返す『イレブンナインシルバー』も、物理的な衝撃攻撃には無力だった。
そしてその攻撃によって『イレブンナインシルバー』が剥がれた場所目掛けてロボット兵たちはビーム攻撃を集中させてきた。
どか~んっ!どか~んっ!どか~んっ!
銃身も溶けよとばかりに撃ち掛けてくる濃密な防空弾幕の隙間を突いて次々とゴリアテに体当たりを敢行してくるロボット兵たち。
その被弾箇所目掛けてビームを放つロボット兵たちからの攻撃に、それまで無敵を誇っていたゴリアテもとうとう膝を折り、幾筋もの煙を吐き出しながらその高度を徐々に下げてゆき、とうとう空中にて大爆発を起こしたのだっ!
航空戦艦『ゴリアテ』破れたりっ!
当然艦内にいた恋菜も空の藻屑と成り果てたであろう。
だが、ここで奇跡が起こる。なんとゴリアテの爆発により発生した爆煙の中から何か巨大な物体が出現したのであるっ!
そう、それは銀河皇帝軍によって建造された巨大宇宙ステーション『デス・スター』をパチった1/100モデル『ダンジョン・マスター』であったっ!
その全容は1/100モデルでありながら直径は1kmにも及ぶ。因みに航空戦艦『ゴリアテ』の全長は軍事機密なので公表されていないが、約300m程度と噂されていた。
なので300mのゴリアテの中から直径1kmの物体が出現するのは物理的ではないのだが気にしてはいけない。
そう、バトル系の物語ではこうゆう事はままあるのだ。ラスボスを倒しても更に黒幕が登場するのがアクション系少年漫画の定石なのである。
因みにゴリアテと共に爆死したと思われていた恋菜も、当然のように『ダンジョン・マスター』内にいた。
いや、中にはいなかった。なんと恋菜は『ダンジョン・マスター』の上部に設営された特設ステージにアイドルの衣装を身につけてスタンバっていたのだ。
この流れだと次の展開は既に読めるであろう。そう、恋菜はドイツのライン川沿いで伝承されているその美しい歌声で船乗りを惑わすと言われている『ローレライ』の如く、歌にてロボット兵たちを鎮めようとしているのだ。
そして恋菜は歌い始めた。
ぼえ~。ぼえぼえぼえ~。
その歌声は世界を震撼させた。いや、これは比喩ではなく本当に世界が激震した。なのでその歌を聴いたロボット兵たちは悶え苦しみながら地上へと落下してゆく。
それどころか天空の城『アポロニア』の下部構造体もその衝撃に耐え切れず、瓦解して剥がれ落ちてゆく。
そして質量が減った天空の城『アポロニア』は『非行石』が発する浮遊力とのバランスが崩れ、徐々に上空へ昇り始めた。
そう、このままならば数時間後には天空の城『アポロニア』は成層圏や熱圏を突き抜け高度100km以上の宇宙空間に達してしまうはずだ。
だが、天空の城『アポロニア』とは裏腹に『ダンジョン・マスター』は対策が施されていたらしく、辛うじて空中に留まっていた。しかし恋菜の歌声は想定を超えていたらしい。なのであちこちで小さな爆発が発生していた。
そして数分後。全てのロボット兵が落下しても恋菜の単独リサイタルは止まらない。それどころかゾーン入ってしまったのか、更に歌に熱が入った。
ぼえ~。ぼえぼえぼえ~。ぼぼぼぼ、ぼぇ~。
恋菜の歌声は超重低周波となって世界中を何度も伝播する。なので世界中のそこかしこで生き物たちは耳を押さえながら悶絶しのたうち回った。
それでも恋菜は歌うのを止めようとしない。
ぼえ~。ぼえぼえぼえ~。ぼーぼぼ、ぼぇ~。
とうとう、対策が施されていた『ダンジョン・マスター』ですらその巨体を空中に留めて置けなくなり降下し始める。
いや、それどころか、世界各地で地殻が崩壊しだし大地震が発生していた。海洋に至っては、海面が沸騰したかのように波打ちだし、それらが共鳴しあって大きなうねりを作り上げていた。
その高低差足るや333mにも達している。その大波が恋菜から逃げるように『ダンジョン・マスター』の周囲へ円状の壁を幾つも作り出す。
そしてそれは世界中の海岸へと向かった。
ぼえ~。ぼえぼえぼえ~。
こうして世界は終わりを告げた。その惨状足るや『ノアの方舟』や『火の七日間』の比ではない。
なんせ恋菜の歌声は、本来音声が伝達しないはずの宇宙空間すら越えて天空の『月』すらも瓦解させ、地上に落下させたのだから。
いや、その影響は月に留まらない。なんと恋菜の歌声により太陽が異常振動を起こし、内部の核融合が促進されて膨脹を始めてしまったのだ。
だが、拡大する太陽が地球すら飲み込まんとしていた直前で膨張は止まった。だがこれで安心してはいけない。この膨張の停止は更なる悲劇の序幕でしかないのだから。
そう、膨張した太陽はその反力により今度は収縮し始めたのである。その収縮速度は時間と共に加速しあっという間に太陽は地球サイズにまで縮退していった。
これにより本来太陽の質量では起こり得ないと言われていたとある現象が発生する条件が整ってしまった。
その現象とは『超新星爆発』である。
そして太陽はとうとう爆発した。だがその爆発に乗って恋菜の歌声までもが宇宙に拡散する事となった。
ぼえ~。ぼえぼえぼえ~。ぼぼぼぼ、ぼぇ~。
その伝達速度は何故か光速をも越えている。なので本来、光の速さでも伝わるまでに4.3年はかかるはずの隣の恒星『プロキシマ・ケンタウリ』は、太陽系崩壊後、たった33日で恋菜の歌声の犠牲となった。
しかし恋菜の歌声は更に生贄を求めて宇宙を旅する。なので結局直径が10万光年あると推測されている天の川銀河もたった333年で蹂躙され崩壊した。
だが、悲劇はそれでも終わらない。なんと恋菜の歌声は次に隣の銀河であるアンドロメダ銀河へ向けて伝播しようとしていたのであるっ!
何たることかっ!このままでは恋菜の歌声は全宇宙をも崩壊させてしまうっ!
果たしてその後に残るのは永遠の『無』か、はたまた新たな『生』の誕生なのかっ!
ぱかんっ!
「あっ、いたっ!なによ、ポチっ!人が気持ちよく寝ていたのに叩くなんて酷いじゃないっ!」
「酷いのはあなたの方ですよっ!なんで歌声で世界を滅ぼそうとするんですかっ!対応が追いつかなくて結局『夢オチ』にするしかなかったじゃないですかっ!」
「えっ、今のって夢だったの?あーっ、良かったっ!もうおちゃけが飲めなくなるかも知れないと思ってしょんぼりしていたのよね。うん、夢でよかったっ!」
「夢じゃねぇよっ!リアルだよっ!ただそれだとあまりにも救いがないから『夢』という事にしておきましょうと阿弥陀如来様がご尽力して下さったんだよっ!私はあちこち関係各神へ謝罪に回る羽目になって大変だったんだからなっ!お前の歌声はジャイアン級かっ!」
ぼえ~。
「歌うなっ!」
「もう、ポチったら大げさねぇ。そもそも私の歌にそんな威力があるとしたらもう何回も世界は滅亡しているわよ。でも実際には毎回カラオケ屋の機械が壊れたくらいだわ。」
「壊れたんかいっ!まぁ、お前の歌声にそんな威力が備わったのはコロンディーナ様の代わりに雲の管理者になったせいだろうがな。でも素質はあったんだろうなぁ。そうか、毎回壊していたんだ・・。迷惑な客だなぁ。」




