死んだと思った?ははは、甘いぞっ!
しかし、何故か神輿 恋菜はふわふわなベッドの上で目を覚ました。そして呟く。
「あれ?もしかして私助かったの?」
だが、恋菜が目を覚ました場所は病院のベッドの上ではなく、一面がふわふわな白い綿のようなものが敷かれた屋外だった。
なので上空からは燦々と太陽の光が降り注いでいる。ただ、その割りに空気は冷たい。
「むーっ、ここはどこ?私は誰?・・うん、そこは覚えているか。」
おちゃけの飲み過ぎで時に記憶が飛ぶ恋菜は、起きがけによく記憶喪失美少女ごっこをやるのだが、それはあくまで一人遊びだ。なので恋菜の側に人の気配を感じた時はちょっとびっくりしたらしい。
「えーと、あなたはどちら様でしょうか?そしてここは何処ですか?」
恋菜の問いかけに、側にいた女性は次のように答えた。
「私は異世界転生・転移の女神『コロンディーナ・コロンデール』です。そして神輿 恋菜 (みこし こいな)、あなたは乗っていた飛行機が山腹に激突してぺしゃんこになって死んだのです。」
「へっ?あれ?そう言えばそうだったような・・。おーっ、思い出したっ!糞っ!あのデブただじゃ済まさないわよっ!か弱き乙女にあんなでっかい鉄砲を向けて、尚且つ発砲するなんて断じて許せんっ!示談料としてあのキャビネットに入っていたおちゃけは全部私が貰うわっ!」
いや、恋菜よ。RPG-7は携帯用対戦車擲弾発射装置であり、鉄砲ではないのだが?と言うか示談の請求をお金ではなくておちゃけという現物で要求するのはどうかと思うぞ?
更にキャビネットのおちゃけは、もうビジネスジェットごとエベレストの山腹に激突したので木っ端微塵だ。ついでに言うとお前の体もぺちゃんこになりました。
「うっさいわねっ!誰なの、私の頭に変なナレーションを入れてくるのわっ!今忙しいんだから後にして頂戴っ!」
何故か地の文を聞く事が出来たらしい恋菜は、私に向かって文句を言ってきた。だが、恋菜の側にいる女性は恋菜のそんな反応を死亡直後者特有の記憶混乱と捉えたようだった。
「神輿 恋菜、落ち着いて下さい。あなたは認めたくないでしょうけど、あなたは既に死んでしまったのよ。」
「はぁ~?なに言ってるのよ。私はこうして怪我ひとつなくピンシャンしているじゃない。」
「ええ、そうね。でもあなたのその体は物質変換装置で新たに作ったボディなの。因みに材料はスーパーで安売りしていた100g128円の豚肉です。」
「100g128円?高いっ!私がご贔屓しているスーパーならば100g98円よっ!」
「え?そうなの?もうっ!そうゆうのは早く教えてよ~。あなたって体重が○○kgだったから材料代に12万8千円もかかっちゃったのに。」
「ね・つ・ぞ・う・するなっ!私はそんなに重くないっ!」
「えーと、余った分はスタッフがおいしく頂きました?」
「材料費の水増しかいっ!なら私の分も取っておいてくれてもいいじゃないっ!」
死亡したという事実を突きつけられたにも関わらず、何故か恋菜の関心は『食』に向かっていた。そして一旦ずれ始めた話はその度合いをますます深めてゆく。
「あーっ、それは思いつかなかったわ。でももうお財布の中には33円しか残ってないの。だからスキヤキは諦めて。」
「豚肉でスキヤキしたんかいっ!そこはやっぱり牛肉を使えよっ!」
「えーっ、私は豚さんの方が好きなんだけどなぁ。」
「ならばせめてトンカツにしろっ!」
「あーっ、それは思いつかなかったわ。でも100g128円の豚肉は薄切りのやつだったからどのみち無理ね。」
「そうなの?私がご贔屓しているスーパーならば100g128円でトンカツ用の厚切り肉が売っているのに。」
いや、恋菜よ。そこでお得情報を披露して自慢するのはどうかと思うのだが?
しかし恋菜がもたらした情報に異世界転生・転移の女神『コロンディーナ・コロンデール』は食いついてきた。
「まぁ、恋菜っ!あなたの住んでいたところって素敵なところねっ!もしかして麺類とかもお安いの?」
「ふふふ、聞いて驚くなよ?なんと、うどん、やきそば、和そばやなどの各種麺が一袋19円だぁ~っ!」
「ワンダフルっ!100玉買っても190円っ!おーっ、恋菜のご贔屓しているスーパーは貧しき者たちに慈愛の施しをお与えくださる心優しき神なのですねっ!」
「いや、100玉買ったら1千900円よ?あなたもしかして暗算が苦手なの?」
「あら?そうなの?なんだ、そんなに安くはないのね。」
「いや、1千900円は100玉分の値段だからっ!一袋一食分は19円だからっ!。」
「ぷぅ~っ!コロンディーナ数学きら~い。そもそも私っていつも買い物はカードだから。現金はあまり持ち歩かないのよね。」
そう言うと異世界転生・転移の女神『コロンディーナ・コロンデール』はポケットからクマのパスケースを取り出し、その中から『パスモ』を抜き出して恋菜に見せた。
「それってパスモじゃんっ!関東地方の鉄道やバスで使われているICカードじゃんっ!確かに加盟店ならば買い物の支払いも出来るけど、ここは普通クレジットカードのプラチナかゴールドカードを出す場面でしょっ!」
「えへへへ、可愛いでしょ?このクマちゃん。この前20年ぶりに箪笥の中から見つけて洗ったのっ!ただビニール部分は経年劣化で駄目になっちゃっていたから自分でファスナーを縫い付けたのよ。」
恋菜からの指摘を無視してコロンディーナはクマの『元』パスケースを自慢する。その事に「あっ、これは何を言っても駄目だな。」と感じた恋菜は話を戻して今の自分に必要と思われる事を聞きだそうとした。
「そうね、特に洗いたてぽい清潔感が好印象ですね。で、話を最初に戻すけど、あんた、誰?」
「えーっ、自己紹介はしたじゃんっ!私は異世界転生・転移の女神『コロンディーナ・コロンデール』よ。」
「おまえはどこぞの中学生かっ!それが本当だと言うのならば証拠を見せてみろっ!」
「えーっ、証拠~?むーっ、何を持って証拠とするかが問題だけど、まぁ、ならばこれを見て。」
そう言うとコロンディーナ・コロンデールはどこから取り出したのか先端に星の付いたステッキを手にし、しゃらんら~と一振りした。
するとそれまで床だと思っていた白いふわふわな綿の一部が消え去り、その下が見えるようになった。
そしてその穴を覗き込んだ恋菜は思わず3歩後ずさる。何故ならばその穴からははるか下方に下界が見えたからだ。つまり白いふわふわな綿は実は雲だったのである。
注:実際の雲はふわふわしていません。と言うか人が乗ったらそのまま落下します。なので濃霧だからと言ってビルの高いところから飛び降りて試そうなどとしないように。




