神輿 恋菜 (みこし こいな)22歳+アルファ
ここからは全く別の物語となります。何故ならば新しいNコードを取得するのが面倒だからっ!
その時、神輿 恋菜 (みこし こいな)22歳+アルファはチベット上空高度8千mにいた。
うん、おしいっ!後850m高かったらエベレスト山の頂上を越えられたのにっ!
そう、この850mの差が運命の分かれ道だったのである。何故ならばその時、神輿 恋菜が乗っていたビジネスジェットはエベレスト山頂横断飛行の最中だったからだ。
そしてなんで神輿 恋菜がそんな所にいたのかと言うと、顧客との商談の為である。
つまり恋菜は商談相手の顧客が一旦インドの本社に赴き上司の判断を受けてから契約書にサインをしたいと言うので、最後の駄目押しとばかりに顧客が羽田空港に用意した自社ビジネスジェットへ向かうハイヤーの車内にまで押しかけて見送ろうとしたのだった。
とは言ってもその実体は客先へのお色気接待だ。神輿 恋菜は上司から車内と言う密室内で最終的には『枕営業』をしてでも契約書にサインをさせろとの業務命令を受けていたのである。
いや、実際にはそこまであからさまな指示は受けていなかったのだが、最近売り上げが伸びずに歩合制のお給料額が減って毎日の晩酌代にも困窮していた神輿 恋菜はおさわりとパンチラくらいは覚悟してこの接待に応じたのであった。
だが、商談相手の顧客はこの接待をその程度とは思っていなかったらしい。
なので初めこそは事務的に話を進めていたのだが、後はサインを貰うだけとなった段階で、そのサインは顧客側の重役のものでなくてはならないという事になった。そしてその重役は今、中国にいるのでサインが欲しいのならば恋菜も一緒にビジネスジェットへ搭乗しろと言ってきたのだ。
さすがにこの誘いは恋菜も躊躇いを感じ、パスポートを持っていないとやんわり断ったのだが、ならば話はここまでだと言われると従うしかないと覚悟を決めたのだった。
そしてビジネスジェットがインド本社へ帰路の途中で燃料補給の為に降り立った中国の空港にて、顧客側の脂ぎったデブの重役がビジネスジェットに乗り込んできた。
その重役は事前に電話で説明を受けていたのか搭乗するなり契約書を一瞥する。だがそれもつかの間、まずは親交を深めようと言って備え付けのキャビネットからおちゃけを取り出し恋菜に勧めてきた。
その勧めに初めこそはやんわりと断っていた恋菜であるが、目はグラスに注がれたおちゃけに釘付けである。何故ならば恋菜はおちゃけに目がなく、尚且つそのおちゃけは『マッカラン33年』というスペシャルブランドモノだったからだ。
恋菜も接待で一度だけマッカランは口にした事があるのだが、それは普通に出回っているシェリーオーク13年である。そしてそれは甘味が強くフルーティで大変上品な味わいだったのを覚えていた。
因みにマッカラン33年のメーカー標準価格は700ml入り一瓶で33万円ほどする。
だが、今恋菜の前に注がれたマッカランは、その中でも流通量が少なく価格が高騰している1999年モノであった。
故におちゃけに目のない恋菜にマッカラの中でも最高級と言われている『マッカラン33年』を我慢しろというのか酷である。
結局恋菜は誘惑に負けて勧められるがままにおちゃけを口にした。そしてひと口飲んでしまえば後はもう歯止めは効かない。何故ならばそれが酒飲みと言うものだからだ。
で、そこからはもう飲めや歌えやの宴会接待となった。当然重役は神輿 恋菜へあからさまにボディタッチをしてくる。
恋菜も最初こそはまぁ仕方ないなと我慢していたのだが、さすがにパンツを脱がされかけたら愛想笑いもしていられない。
なのでおちゃけの勢いもあって重役の股間を思いっきり蹴り上げてしまった。苦悶の表情で脂汗を流しながら股間を押さえる重役。
そんな相手に「ありゃ、ちょっとやり過ぎたか?」と謝罪しながら機嫌を取ろうとする恋菜。
しかし、重役は相当頭にきたらしく、自身が機内に持ち込んだケースから中国でコピーされたRPG-7携帯対戦車擲弾発射器を取り出すと、恋菜に向けて近距離から発射したのだっ!
いや、重役よ。そこがどこだか判っているのか?高度8千mの空の上だぞ?と言うか自社のビジネスジェットとはいえ、なんでお前はそんなもんを持ち込んでいるんだよっ!中国の空港セキュリティはザルなのか?
まぁ、機体内は地上の8割程度まで与圧されているとは言え高度8千mで酒を飲んだら酔いが回るのも早い。故に判断力も下がるのだろう。
なので重役は激情の赴くままに、なんの躊躇いもなく機内なのに恋菜に向けてRPG-7の引き金を引き絞ったのだろう。
とは言え、そこは酔っ払いである。まともに照準なんか出来る訳がない。なので発射された弾頭は恋菜の脇を掠めて客室と操縦席を隔てていた壁をぶち破って操縦席に飛び込みそこで爆発した。
どかーんっ!
哀れ、パイロットのふたりは何が起こったのかも理解できずにあの世へと旅立ってしまった。
そして恋菜が幸運だったのは、客室と操縦席を隔てていた壁が対テロ対策として頑丈に作られており、尚且つRPG-7の弾頭は成形炸薬弾だったので壁の貫通部にこそ小さな穴が空いたが、壁自体は無事だった為、爆風の殆どは操縦席のフロントガラスから外部に噴出し客室は大した損害を受けなかった事だ。
しかし取りあえず助かったとは言えパイロットは死亡したのだからもうビジネスジェットを操縦する者はいない。
辛うじてオートパイロット機能は生きていたので墜落は免れているようだが、さすがにオートパイロット機能も着陸までは自動でしてはくれまい。
いや、その前にこのビジネスジェットはエベレスト山を越えようとしている最中だったのである。
そして現在の高度は8千m。しかしエベレスト山の山頂高さは8千850m。しかもオートパイロットは緊急時対応で上昇するのを中止し、逆に高度を下げようとしていた。つまりこのままでは恋菜たちの乗ったビジネスジェットはエベレスト山の山腹に衝突するのである。
と言うか、機体に穴が開いた事により機体内の与圧はぐんぐん落ちている。そして訓練していない人間は高度8千mの薄い大気では数分と呼吸がもたずに気を失ってしまうのだ。
実際既に重役は急激な減圧によって気を失いぶっ倒れている。つまり恋菜にとって絶体絶命な事なのに変わりはないのだった。
そして数分後、恋菜たちが乗ったビジネスジェットはまるで狙ったかのようにエベレストの山腹に激突した。
哀れ、神輿 恋菜。22歳+アルファの短い人生であった。




