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異世界で騎士の奴隷となった日  作者: 時川
モニカの憂鬱
87/131

〇87

「エクレール。貴方が持っていた物は、何て呼んでいるの?」

「ムーンキャンサーって、最初は呼んでいたけど。協会は全てひっくるめて場違いの加工品って呼んでいるから。」

「何それ?他にもあったの?」

「アリシアも知らないとなると、余程私が悪目立ちしていたのかな・・。」

アリシアが当時見ていたエクレールは、基本的には今よりは大分大人しいけれど。

昔は髪はショートカットだったし、明らかにイメージが違っているけれど基本的に中身は一緒のはずだ。

「元々は確かにエクレールの物だけれど、だからといってすぐに返すには。」

「エクレールが居れば、七つの大罪の事はある程度すぐに解決できるはずじゃない?」

「もし貴方に何かあっても困りますからね・・。でも。」

ユリアが向いた方向に、誰かが入って来た。

協会の制服を着た少女、その彼女が持っている物を見たエクレールは硬直していた。

「その方が戦う必要性はありません。彼女の戦友が使っていたメリクリウスだけで十分大罪に対処可能です。私が任務から早く帰還していれば、もっと惨事は防げていたのですが。」

「彼女はエルシオーネ、メリクリウスの試用実験に参加してくれたギルドの騎士です。」

「それ、エクレールの物と同型みたいなものなの?」

「はい。エクレールの同僚だったルミエラが使っていたものです。彼女の手から離れた後、一番適正の高い私が使用できるようになりましたが。」

「その場違いの加工品がどういうものなの?」

アリシアがユリアに対して聞くと、彼女は承諾して少し間を置く。

「場違いの加工品と呼んでいるのは、その性能が高すぎるからだけではありません。その武器を作る技術がそもそも現代に見合っていないため便宜的に呼んでいるだけです。エクレールが所持していたムーンキャンサーと、今エルシオーネが所持しているメリクリウス。この二つはお互い別の場所にありましたが。発見された場所は現在発掘中の古代遺跡の中でした。術式、素材、そしてその武器の性能を今の私たちが作るのは不可能ですが。そんな技術を過去の人類が製造できたのかも不明ですわね。」

「物凄く壮大なのは結構だけど。でも・・。」

それでも、そのルミエラというメリクリウスの元所持者は殉死したとアリシアは考えてしまう。

ある任務の中で、ある組織が製造した大量のゴーレムと戦闘した後の事だ。

その戦いの中で術者を見つけるために突撃したエクレール、その彼女を庇ってルミエラが負傷。その後、ゴーレムの自爆によりエクレールも意識を失ってしまったらしい。

「でも、そこまで強力な兵装でもないわ。経験のあるエクレールと、彼女が適しているムーンキャンサーの方が信頼できると思うけど。」

「ムーンキャンサーの収束魔法の威力を防げる術者は確かに存在しませんが、しかし今の彼女は以前とは違うはずです。」

そうエルシオーネは言ったが、アリシアはそれをすぐに受け入れることはできなかった。

「貴方、それを持ってきてどうするつもりなの?」

「今回の大罪の事件に関しては、後に私が全て解決する方がいいと思いましたから。グレコからも、私が協力してくれる方がいいと言ってくれましたが。」

「・・・いい度胸してるわね。」

「いいえ、私はただ味方が多い方がいいって言っただけで別に後ろめたい発言はしてませんよ。」

「そう。別にいいけど。でも、場違いの加工品って術者との適応が難しいことが多いんでしょう?」

「えぇ。ですが、メリクリウスの試用に関してはルミエラとそう大差ない成果を出せました。アリシア先輩には、私が不満なのですか?」

「不満は無いけど・・。」

「貴方は連日の戦いで疲弊しているはずです。もう少し今はギルド寮で休んでいた方がいいですし。」

「ついさっき任務の受注したばかりなのに来てみれば休めって、貴方たち私をからかってるわけ!?」

「いいえ。別に明日行けとは言ってないんですけど・・?」

ユリアの言う通り明日とは言っていないのなら、確かに今のは変な勘違いだ。

「く・・・エクレール?」

エクレールが不思議と黙り込んでいた。

彼女の友達が所持していたメリクリウス、その武装を出現させる道具である魔法具。

それを見た時から、アリシアはもう少し考えて喋った方がいいと失念していた。

「私はアリシアと一緒に居ます。別に、ルミエラが使っていたメリクリウスの助けなんて要りません。」

「エクレール?でも貴方は・・。」

「最初からあれは私の物なんです。だから、その人がメリクリウスを使えるというだけで、ムーンキャンサーを貴方には預けられません。」

「そこまで言われると、確かに仕方ない面も感じられますけれど。どうしますか?エルシオーネ。」

「ムーンキャンサーは適正があったというだけで、彼女をまた戦わせるのは危険だと思いますが。そもそも、最初から彼女が突撃しなければ、友人を失わずにすんだのに。」

確かに、あの事故は殆どエクレールに責任はあったが・・しかし、当時の年齢を考えても状況が過酷ではあった。

「あれは指揮官の不手際で、エクレールには責任はないと私が言いましたわよね?」

そうユリアも言ってくれたが、エルシオーネは黙らない。

「子供だったから、別にコントロールが出来たなかったのを指揮官のせいにするんですか?エクレールとルミエラ、一年前の時点では13歳と14歳の少女ですよ?戦闘経験が浅いのに彼女たちを戦わせなければいけなかった時点で、彼女たちはそもそもその戦闘から退避するべきだった。」

「その言い方だと別に誰も悪くないんじゃない。エルシオーネ、私は・・。」

「基本的にギルド協会は魔法使いの能力が高い人材を雇っているけれど、でもそれだけです。能力が高いからといって戦闘に優れているわけではないはず。」

「・・・つまり?」

「エクレールさんが協会から脱会して一年は経つはずです。その時点で、彼女は今すぐに戦闘を行えばルミエラと同じように死ぬ可能性もあるのですから。」

それは確かにそうかもしれないけれど、アリシアにとっては考えたくない現実だった。

「それは私には関係ない・・」

「え?」

「私のせいでルミエラが死んだのは事実だけど、だからムーンキャンサーが必要なの。大体、貴方と似たような事はもう彼女が言ってるんだから。そんな理由で私の大切な物を奪わないで。」

そうエクレールは行ったが、アリシアから見ると以前の彼女に近い感じではあった。

というより、こんなに近い距離で彼女が真剣な顔をしていると明らかに以前の方がふざけていただけなんだろうか。

過去から逃れるために、逃避するために変な事をしていたとしても不思議ではないけれど。

「そうね。じゃぁ、こうしましょうか。二人とも、模擬戦をこれから行いませんか?」

などと、ユリアは更に油に水をそそぐような事を言ってきた。

アリシアも、流石にいいかげんこの状況から逃げ出したいが我慢しておいたほうがいいのか。


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