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夜のアリシアの寝室、そこで無名の能力を僕は試験している所だった。
アリシアの前に立ち、剣を両手で構える。少し力んで念じると微かに魔力が発生し、剣の周囲に渦巻いている。
アリシアの高慢ほどではないが、うまく使いこなせればかなり役に立ちそうだ。
「あっさり引き受けてくれたからには、ちゃんとメンテナンスをしておかないとね。この武器系統って、術式が独自で解読できない部分があるから。少しでも異常があったら教えてくれる?」
「あぁ。その術式って何だ?」
「魔法の設計書みたいなものよ。何らかの方法で妖精言語で記し、アイテムに刻印する事で魔法を使えるようにするの。私の場合、このネックレスの中に幾つかの術式を刻印してあるけれど、妖精を使役できる人は魔法アイテムが無くても独自で魔法が使えるのよね。」
「それじゃぁ、アリシアもその魔法アイテムが無いと魔法が使えないのか?」
「人によるけれど、妖精言語を自分で詠唱すればアイテムが無くても使えるわ。でも、火、水、風、土等に言語が分類されてるから、全て覚えるのは苦難の技だし。何より意味を少しでも間違えれば術式は成立しないの。魔法によってはかなり複雑な詠唱をする事になるし、自分の口で唱えるよりは剣や装飾品に刻印したほうが便利なのよ。」
「そうか。その妖精って、アリシアは使わないのか?」
「妖精は人を選ぶし、エクレールみたいにはいかないもの。彼女の場合、昔一度に数十匹の妖精を使役して、魔力砲撃の威力を底上げする事に成功した事があるもの。私とエクレールでは得意分野が違い過ぎるから、あまり比べられないけど。」
「何だか凄そうなはなしだけど。エクレールって強いのか?」
「分からないわね。」
「分からない?」
「妖精もそうだけれど。彼女が持つ特別な力も謎だから。あそこまでできても、彼女の力はかなり限定的だもの。」
「以前アリシアが刺された時も、魔法で何とか助けられたけど。あれだってエクレールの力なんだろ?」
「えぇ。但し、彼女の治癒魔法は強力な代わり傷ついた後5分以上経った人間は癒せないの。」
「なんというか。変なスキルだな。」
「彼女の治癒魔法は、先天的に何人かの魔法使いが使える特殊スキルよ。原因は分からないけど、魔法使いの中に産まれた時から使える特別な魔法があって、突然変異ともいえる強い魔法を使える人も居るの。彼女の場合もその突然変異型のスキルで、実際かなり使い勝手が悪いみたいね。」
「使い勝手が悪い?5分なら割と余裕に相手を癒せるんじゃないか?」
「それはそうだけど。何というか、五分前の状態に戻しているって言い方の方が適切かしら。傷を癒せないと言ったけど、厳密には時間が経てば経つほど傷を中途半端にしか癒せなくなるの。」
「はぁ、それはまた厄介な治癒魔法だな。でも、場違いななんとかっていう物を使っているエクレールは一瞬別人に見えたけど。」
「あら?恋でもしたのかしら。」
「何でそうなるんだ・・?」
「まぁ、あの装備の時のエクレールはまた違うけれど。彼女が戦っている様子を見るのは少ないから、戦果だけ見れば凄いのは分かるんだけどね。」
「過去に何かあったみたいだけど。やっぱり聞くのは駄目か?」
「私が言うとあの収束魔法で吹き飛ばされそうね。私がやり返した時だって、エクレールは妙にふざけていたし。」
「え?やり返した?どういう時に?」
「エクレールが大量の魔物を引き連れて来た時よ。その時に私、一度エクレールに対して全力で魔法攻撃したけれど。私にされた時に比べたらあれはちょっと痛い目にあったって感じかしら。」
「かなり酷い話だな・・。そのわりにあいつ、スライム相手に追いかけられたけど。」
「彼女はあまり本気で戦わないし、スライムみたいに自分の体を変質させられる魔物に対して本気で攻撃するのはよくないわね。エクレール、もしかしたらわざとやったのかもしれないし。」
「わざと自分の剣を折ったのか?流石にそれは考えすぎだろ。あれは明らかに天然じゃないか?」
「そうね・・・。確かにそうだけど。スライム相手にまで本気を出さないんだから、彼女に必要以上に期待するのは止めましょう。そろそろ、私は休みたいし。」
「まだ任務は無いのか?」
「流石に連日の戦いは疲れたもの。ロワールに来て、また私は森の所まで行って戦ったのだから。」
確かに、殆どアリシアは外に出ては戦っているばかりだ。エクレールもそうだけれど、流石にあの戦いの後は疲れてしまうだろう。
適当にナガトは無名を置くと、テーブルの上に置いてある暴食が目に入る。
この30センチほどの刃渡りがアリシアの腹部に突き刺さったのかと思うと、かなり痛々しい雰囲気はある。
今ごろモニカはどうしているのかは分からないけれど、ロワールの中に屋敷の中のような惨状を作るのは無いと願った。




