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エクレールのモニカに対する一種の庇護欲はある意味正しいけれど、ただそれを上回るモニカという少女に対する鈍感さもあった。
あの少女の人生を考えれば、10年間何も問題が無く生きていけたはずはない。
そもそも彼女は狩猟によって生活していけたとしても、あの格好だけはどうにかならなかったのだろうか。
何の理由も無い限りただのファッションだとしたら、彼女は人前には殆ど現れていなかったはずだ。
隠れて生活する必要性があったからこそ、彼女は我慢して生きてきている。ある意味、食欲以外を我慢して生きているようなものなのだろうからかなりきついはずだ。
七つの大罪の一つである暴食、ベルゼブブの一押しもあって彼女はより奇行を強めていたのもあるが。
ただいくら、彼女がそんな異常性を持っていたとしてもエクレールが心配している最悪な状況は起こりえるのだろうか。
もしそんな状況が起こってしまったのだとしても、僕が何かできる事は限られているだろうけど。
その最悪な状況に至ってしまった後には、モニカは恐らくアリシアや他の力を持った人間から倒されてしまう可能性はあった。
もし仮に、彼女が何らかの罪を持っていたとすれば・・。
「明日、公園の噴水広場で待ち合わせですね。」
僕以外にもいい相手が居るだろうとエクレールに対して言いたかったが、強引に場所が記されている地図を手渡しては彼女は去っていった。
昼食終了後、僕は一度部屋へ戻るしかない。というより、本当にやる事が無いがめ何もできないのが現状である。
いっそのことギルド協会とやらに入ってみるのもいいけれど、それはアリシアに聞いてみるしかないだろう。
正直あまりいい事が無い気がしてきたけれど、それはエクレールも同じかもしれない。
尋問室の中で、アリシアはモニカと対面していた。他にエルフの少女と数人の兵士がおり、モニカは殆ど自由ができない状態になっている。
魔力錬成によって材質強化された拘束具、それから魔法によってできた仮想の鎖が彼女を固定。
明らかに過剰ともいえる拘束の仕方だが、その気になれば魔法で数十人の人間を一網打尽にできるため仕方が無い。
テーブルにはゴブリン用の檻に閉じ込められたグレコがおり、正直げんなりとしていた。
「大体、私が言える事はそれだけですよ。これは既にナガトさんにも言っていることですし。」
「そう。偽りがあるかどうかは置いておいて、どうしてナガトにこの武器を手渡したの?」
別のテーブルに乗せられている三つの武器・・高慢、暴食、無名の三つ。
その内の無名にしても、ナガトには全く関係の無い代物だ。
「うーん。私も半信半疑ではあったんですけど。モニカは彼の事が気に入ったみたいなので。」
「気に入った?」
「何ていうか。ある一種の一目ぼれに近い感じですね。」
「何言ってるのよ。いや、モニカがおかしいのかしらね。貴方、本当にナガトの事が好きで引き入れようとしたの?」
そう言ったが、モニカは殆ど目を合わさずに居た。
「彼に対する欲求なんて貴方には関係ないでしょう?」
そもそもナガトに対して何らかの好意を本当に抱いたのかすら謎だけれど、ある意味彼女は心理的にはもう限界が出ていたのかもしれない。
アリシアの仮定が正しければ、彼女は右腕と暴食の併用によって生活できていたとしてもいつか限界が来る。
「まぁ、話し相手はあと一人いるから、別にそこまで聞かないけど。くれぐれも、この場所で変な行動を起こさないように。下手をすれば、貴方は人間であっても討伐対象として命を落とす事になるから。」
後一人、明らかにフェリペの事だろうけれど。モニカにとっては別にどうでもよかった。




