〇46
部屋から出ると、エルフの少女・・ユリスは書類に何か記入した後にアリシアと向き合う。
「とりあえず大まかな貴方の任務は終了しました。オルフェウス教団の一員と思われる男性に関しては私たちが尋問を執り行います。」
「貴方じゃなめられるんじゃない?」
ぴく、と少し垂れ気味の長い耳が動いた。
「アリシアが担当している任務はもう全て終了したので、これから先の事に関しては貴方には関係の無いことです。」
「せめて、それを私に譲渡してくれると助かるんだけど。」
「は?」
意味が分からない言動ではあったが、アリシアの言っている事はあまり冗談には聞こえなかった。
「だから、高慢。その剣は私が使っちゃ駄目かしら。」
「貴方、何を馬鹿な事を言ってるんですか?これは一つの事件に関わる証拠品でもあるんです。それを貴方みたいな人に手渡す人がいますか?」
「え?あぁ。そうだったわね。」
「長旅で疲れているんですか?まさか貴方みたいな人がそんな馬鹿な事を言うなんて。」
「別に悪気があったわけじゃないけど。確かにそうね。」
「そういえば、貴方は旅の途中で奴隷の方を受け入れましたわね。それはどういうつもりですか?」
「んー。何となく?」
「なんとなく・・?まさか、変な情事があったとか。」
「もし情事で人を奴隷にするような人が居たら見てみたいわね。」
「その男性の方も一度この武器を使われましたから。何等かの影響は出るかもしれない。もし何かあれば、私にすぐに伝えてください。」
「別に何もないはずだけど。」
「そんなに気に入ったのですか?武器としては見た目はいいですが。材質はBランク相当、魔力耐久値も実際はそこまで高くありません。特殊な術式が施されていて、刻印されている魔法の構成を観測するのは難しいですが。アリシアがその気になればこの武器よりもいい剣は手に入りますわね。」
「んー?私が手に持ったら、凄い勢いで闇みたいな力出て来たんだけど。ねぇ、試しに一発全力で使わせてくれないかしら。」
「それ、数年前に同じこと言って事故を起こしたのをお忘れですか?」
「あの時は私は若かったのよ。」
「まだ15でしょう?言っておきますけど、貴方がどう言ってもこの証拠品は貸し出せませんので。」
「そう。何だか物凄くもったいない気がするけど。」
自分が使った魔法の道具を、自分だけの物にしたい気持ちはユリスも分からないわけではないが。
出自が闇属性、古典魔術に関する物で作られている武器である以上は彼女には渡せなかった。
「そういえば、オルフェウスが所有している武器は二つほどかなり極端な場所に移動しているんでしたね。貴方、何故か分かりますか?」
「そんなの分からないけど。仲間割れでもしたんじゃない?」
「特に極東何て、出航した後すぐに戻ってこれませんもの。教団も貴方も何を考えているのか分かりませんわね。」
「何で私までそういう扱いするのよ。まぁ、いいか。それじゃぁ、私はそろそろ戻るわ。」
そう言ってアリシアは自分の居場所へと歩いて去っていく。
その後ろ姿を眺めながら、ユリスはもう一度別の書類を確認して次の仕事をすることにした。




