〇37
馬車が移動を開始し、ロワールへと向かう事になる。
すぐに到着するわけではないので、僕は馬車の中で横になっていた。
「まるで売られに行くようです。」
「もし売られていたらモニカにプレゼントしてやるよ。」
「そうだといいんですけどねー。どうしてか貴方の言う事がすべて嘘にしか聞えません。」
「いや、別に裏切るつもりはなかったんだけど。むしろアリシアの行動の勇敢さをほめたたえるべきじゃないか?」
「はぁ?何を言っているのかさっぱり分かりませんね。全く人間はこれだから頭が悪いんですよ。」
「まぁ、頭が悪いのはともかく。あのまま屋敷の中に居るにはいかないからな。」
「最終的に私はモニカと安全な時を過ごすはずだったのに。何なんですか?あの狂暴な人は。わしづかみされただけで殺されそうでしたよ。」
「んー。何でだろうな。」
「はぁ。せめてもっと可愛らしいギルドの騎士とか居ないんですか?」
そんな事を聞かれても、別に僕は知って居るわけじゃない。
「ギルドの騎士なんて、大半は魔物と戦って功績を上げたい人間ばかりじゃない。変な生き物のくせに夢を見過ぎじゃないの?」
「貴方は馬の相手でもしてればいいんですよ。」
「ところでその檻。上についているレバーを回すと中に居る煩い奴を押しつぶせる仕組みになってるのよね。」
「何ですかその悪趣味な機能。貴方の方がよっぽど悪魔らしいですよ。」
「何、ゴブリンって生き物は適当に始末をしないと本当に厄介だもの。つい殺したくなるのも貴方だって理解できなくもないでしょう?」
「その。貴方の嗜虐癖に同意を求められても困るんですけど。何なんですかこの人?本当に女の子なんですか?」
一応女の子のはずだ。全裸を見た事があるので間違いではないけれど、とりあえずそこら辺の心配は無い。
「そういえば、エクレールは何でモニカと居たのよ。そっちの方が不思議なんだけど。」
「それは私にも分かりません。あのアホっぽい娘はモニカに対し、少し教育が遅れている女の子としか思っていなかったので。教育が遅れているからって普通はモニカみたいにはなりませんからね。」
「そう。あの子は昔からおかしいけど。何だ、ただの興味本位という奴ね。」
「何ですかそれは。興味があっただけでアホな子は怖がらないんですか?」
エクレールは確かに僕から見てもアホな子みたいではあったけれど、しかし怖がらないタイプには見えなかった。
どちらかといえば、モニカみたいな女の子を見たら普通は逃げるとは思っているのだが。




