○29
「僕がモニカを裏切ると思っているのか?」
「もし本気で誠意を持っているのなら、ある程度お互いを知らないと。貴方は結局何処の人なのか、それもまだはっきりしていない。」
「僕は、遠い国から来ただけだよ。変な方法で拉致られて、アリシアに助けられた後は奴隷になった。それだけでも、信頼できないのか?」
「人から信頼を勝ち取りたいのは分かるけど。貴方が曖昧に答える限りは保証できないわね。」
「曖昧なのは単純に僕にも理解できないことに巻き込まれただけだ。別にアリシアが不審に感じても仕方がない。」
「正体不明にも程があるわね。私はかなり自分の過去をばらしたけど、貴方は何も答えない。」
「答えないと、モニカに困ることがあるのか?」
「バランスが悪い取り引きの場合、私はちょっとした手違いで貴方を銃士隊の砲撃の的にすることにはなるかもしれない。アリシアからの奇襲のために受けた傷を、貴方の体液を対価にして癒すかもしれない。結局、一番酷い目に遭うのは貴方であって私じゃないわね。」
「確かに、そうだけど。」
「何故答えないの?別に貴方の過去なんて私と同じぐらいどうでもいい話でしょう?」
「いや、モニカがどうでもいいわけないだろう?僕はただ、普通に生きていたらいつのまにかこの国に居たんだ。事実だよ。」
「事実って。本当にそうだとしたら、ある意味悲惨ね。元の国に帰りたいんじゃない?」
「帰る方法が分からないよ。」
「一体何処まで遠い場所から来たのかしら。」
「分からないんだよ。僕は、恐らく別の世界から来たから。」
その一言を言うと、モニカはやはり戸惑っている様子だった。
「成る程、別の宇宙から来た来訪者ですか。」
「え?宇宙?」
グレコの捉え方は独自というか、ある意味では巨視的なものだった。
「でも、その割にナガトさんは普通の人間ですね。」
「グレコ、別の宇宙ってどういうこと?」
「星の海に住む異形の種族、その伝説の研究の中では別の宇宙から知能を持つ生命体を召喚する魔法のあり方がありました。この世界より外の宇宙に潜む存在の力は遥かに強大であり醜悪だとか。でもナガトさんは普通の人間ですね。」
「普通で悪いか。それに、出来れば別の世界から来たと思ってくれ。」
別の宇宙から来たという表現だと、変なおかしさが出てきてしまう。
こんなことをしていたら、もうそろそろアリシアが来る可能性だってあるのに。
一瞬よく分からない焦りを感じた時だった。
何処からか轟音が鳴り響く。そして、その音は連続的に起こり僕たちが居る場所までその正体が落ちてきた。
埃が充満し、僕とモニカは距離を取った。
その落ちてきた誰かはアリシアではなく、大きな剣を持った男性だった。




