○28
「貴方も奴隷としてここまで来たんでしょう?貴方も私とそう変わらない悲惨な過去ぐらいあるんじゃない?」
「残念だけど、モニカが喜べそうなことは経験していないよ。凡人の生き方をしていたのに、何故か変な場所に来てしまって、アリシアに拾われたことになるかな。」
問題は自分が何でこうなってしまったのか、の説明が段々とややこしくなってきていることだ。
もしかしたら、最終的にお姫様の奴隷になれるかもしれない。
いや、奴隷になったところで一体何がいいのか困るが。
「アリシア。あの女に蘇生させられたのは驚いたけど。次に会ったら用心しないと。」
「そういえば、何でエクレールがここに居るんだ?」
「知り合いなの?」
「知り合い?というか。拉致未遂に会った感じか。」
「全く、意味不明なことばかり起きるのね。特にエクレールはかなり注意した方がいいかも。」
「エクレールと、ここで何をしていたんだ?」
「彼女に付きまとわれただけよ。彼女、ギルド協会の脱会時に貰う薔薇の剣を持っていたけど。その割に弱そうだったし。彼女、アリシアに連れていかれたからもう会わなくてすむわね。」
アリシアからしてみれば、今の僕は完全にモニカに寝返ってしまった人になる。
明らかにおかしい行為だが、これは仕方がないだろう。
「ん?僕はそもそも何がしたいんだっけ?もしかするとアリシアに殺される展開はあるんじゃないか?」
「今更何を言ってるんですか?騎士の奴隷から元奴隷の奴隷に鞍替えしただけじゃないですか。」
グレコの言う通りだけど、元奴隷の奴隷というのはなんだか格好悪い。
「大丈夫よ。いざとなればどっちがナガトの御主人様に相応しいか戦えばいい。この元奴隷が奴隷の扱いを理解していて当然でしょう?」
「それ、威張れることですか?そろそろこの場所に居られる時間もないですよ?」
「そうね。でもその前に、ナガトがどこまで従順か確かめてみないと。」
「え?」
「アリシアとは本当はどういう関係?」
「別に、ただの命の恩人?」
「本当はエクレールの方が好みだとかはないの?」
「別にそんなことはない。」
「私の奴隷となることを、本当は心の中では思ってもいないんでしょう?」
「別にそんな事はない、単純に僕が何をしたらいいのか分からないだけだ。」
「そう?本当は、隙があればアリシアの所に逃げるんじゃない?」
「僕は、」
本当のところは、今でも彼女に殺されるのではないかと思っているぐらいだ。
「おすわり。」
理不尽な力が発生し、地面にそのまま倒れてしまう。
その動かなくなった身体を足で仰向けにさせられた後、彼女は僕に跨る。
「本当に貴方が誠実に私を御主人様と認めるのか。この首輪だけでも本当は足りない。無能力者が魔法使いの奴隷になったところで幸せになれるわけないじゃない?貴方ぐらいの年齢なら理解できるでしょう?」
「え?ああ、?」
その口ぶりからすると、モニカもまた無能力者だったのだろうか。
もしかしたら、同じ無能力者で、同じ奴隷だったからこんなことを彼女はしているのかもしれない。
でも、だからといって僕が最初からモニカの奴隷になりたい気持ちなど明らかに無いのはもうバレている。




