○19
ユリアはそのまま走り続け、謎の黒い何から逃げ続ける。
闇系統の魔法なのだろうか、それに飲み込まれた兵士たちはどうなったかは分からない。
「結局どういう意味?」
「え?」
副隊長のリアナが話しかける。
「会話の意味が分からなかったんだけど。あの子、隊長の元同僚なんですよね。」
「べつに。あの子は少女をただマナーを知らない子供みたいに見ていただけの話だから。勉強さえすれば社会復帰できるって、そう言っていただけね。」
「ますます意味がわからない。」
「あの子は馬鹿だから。性善説を信じるのは勝手だけれど。とりあえず、一度町の外にまで退避するわ。」
「エクレールさんは、どうするんですか?」
「私の手には余るわね。」
そのまま二人は町の外へ退避する。
屋敷の中へ連れ込まれると、やはり異臭はかなりきつかった。
少女が屋敷の中に放置したと思われる動物の死骸があり、エクレールは頭が痛くなった。
「貴方、何で平気なの?」
「ふえ?」
「女の子だったら、普通は怖がるけど。」
「えっと。精肉店だって、動物の肉はあるよね?」
「ある意味尊敬する視点だね。エクレール、私は貴方の知能を甘く見てた。」
「みんなどうして私を馬鹿にするんですか!?いくら何でも酷いです!?」
「あまり怖がらないのは結局現実を理解できていないからだけど。でもそれで私を擁護してくれるのは嬉しい。はっきり言ってかなり邪魔だけど殺さないでおくわ。」
「えっと、愛憎入り混じってるってこと?ツンデレ?」
「私にツン要素なんてないわ。」
「じゃあクーデレ?」
「貴方に付き合ってると私まで馬鹿になりそう。」
「だから何でそう言うの!?仲良くできないの!?」
「もしできたとしてら殺すわ。」
「わっ!?」
突然ダガーを彼女に向ける。
薄暗い通路の中で、瞳が不思議と光って見えた。
「大体、私一人でも平気なんだから。」
「君を一人にしたらまた、動物を独りで狩って酷いことをするでしょう?」
「動物を殺されるのがいやなの?」
「私は貴方みたいな可愛い女の子が、そんな生活をして欲しくないの。」
「私に惚れたということ?」
「何でそんな話に!?もしかしてからかってるの!?」
「いいえ。ただ私をマナーを知らない可哀想な女の子扱いする神経の図太さに畏敬の念を感じているだけよ。エクレール、私は貴方が思っているほど可愛くないわ。」
「そ、そう?うさぎとか似合いそうだけど。」
前にうさぎを何匹も手に入れて、その姿を誰かに見られて失神させたのを思い出した。
恐らく、エクレールなら気絶せずに挨拶してくれるかもしれないが。
「そうね。うさぎは好き。」
子供の頃から逃げ回る生き物を追うのが好きだった。
エクレールにとっては、少女を教育されていない女の子としか見ていない。
誰でも普通になれるわけでもないのに、なせ彼女はそう思うのか分からなかった。




