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ミーアと部屋で過ごしていると、空が暗くなっているのが分かる。
今日は雨のようだが、外に出ているアリシアは傘を持っていないような気がした。
「うぅ、雨にゃ・・。」
「獣人でも雨は駄目なのか?」
「肉体構造は基本的に人間とほぼ同じだから、暗くなってくると知能に支障がでるんだよね。」
「知能が?」
「頭痛するぐらいになると特にね。ナガトは天気の変化で文字が読めなくなったりしない?」
「そこまで酷い頭痛はしたことは無いけど。まぁ、確かに鬱陶しくはなるよな。」
「天気の変化もあるけれど。上空に居るドラゴンが魔法で更に天気を悪くさせることもあるから。注意が必要なんだよね。」
「何でドラゴンがそんなことをするんだ?」
「協会の観察によれば、ドラゴンは雷雲の中に入って雷を浴びるのが好きなんだって。」
かなり迷惑なドラゴンだが、そんな電流を受けるのが好きというのはどうなんだろうか。
そのドラゴンなら、アリシアはむしろ戦えない気はするけれど。もしかしたら宥めてしまうかもしれない。
「ヨルの満月だったら、もっと活動できるのに。」
「えっと。満月だとどうなるんだ?」
「私の場合は、目が光るだけだから。恐らく、大罪武器を持っている時のリノンやテレジアよりも負けない自信はあるけど。」
「その満月の時に、モニカと戦えばよかったな。」
「駄目だよ。」
「え?」
「そんな夜中にモニカと会ってみなさい。あいつ、その時が一番怖いんだから。獣人を怯えさせるほどのアニマルキラーっぷりを発揮した彼女は、野蛮人以外なんでもないし。」
「野蛮人て・・。でも、あれは仕方なくやっているだけだと思うぞ。」
「仕方なくで体全身を血まみれにして獣を狩り続ける少女なんて、この世にいていいわけないじゃない。」
「ミーアは、モニカの事は嫌いなのか?」
「さぁ。でもテレジアは嫌いみたいね。自分が勝てない理由は無かったはずなのにって騒いでいたし。リノンの場合は、アリシアの事ばかりかんがえていたけど。」
「アリシア?」
「リノン。孤児院産まれでね。その時、アリシアと会った事があるみたい。」
「それは、意外な過去だな。」
「それで、アリシアとリノンは一度教会の訓練所にスカウトされたんだけど。成績はアリシアの方がずっと上だった。それで更にリノンは魔法が使えるけれど、ランクが上がらなかったから彼女はギルドには入れなかったの。」
「アリシアはリノンの事は気づいていないみたいだけど。」
「そりゃぁ、リノンは目立つタイプじゃないもの。ただ彼女は明らかにアリシアの事を嫌っているみたいだし、私は追及することはしなかったんだけど。大罪武器を奪われた以上、リノンはもう自由になれないし・・。」
「リノンは魔法は使えるんだろ?」
「魔法は使えるけど。能力が発達しないの。そうね、火で言えばマッチ棒レベルの発火技術しかない感じかな。リノンは魔力はあるけれど、先天的に術式の編成能力に異常をきたしていたの。だから、彼女は魔法使いでありながら無能力者と同等の扱いを受けてしまってね。」
「術式に異常をきたしたって、どういう意味なんだ?」
「術式が組めない、詠唱で術式を組もうとしても何故か高確率で魔法を失敗してしまうの。他の魔法使いにも何人かそういう子が居てね。魔力は高いけれど、魔法が使えない魔法使いは最終的に誰かの妾になったりするんだ。」
「妾・・?」
「つまり、他の魔法使いと早い段階で結婚させられるの。その儀式・・性魔術で魔法が使えない魔法使いは、魔法が使える魔法使いの魔力を補助する存在となるのが今の流行りなんだって。」
「リノンは誰かと結婚しているのか・・?」
「いや。えっと。言っていいのかな・・・?」
もうかなりミーアはリノンの過去をばらしてしまっているから、後戻りはできないだろう。
「リノンはね。性魔術が決行される日に、自分の夫を殺害して今に至ってるの。オルフェウス教団は、そういった少女たちを保護していたんだけど。」
「意外といいこともするんだな・・。一体、教団って何が目的なんだ?」
「慈善団体、のはずだったんだけど。最近になって命令が無茶苦茶になってね・・。私がこうしているのも、教団からの命令がストップしてどうしたらいいか分からないからだし。でも、あんな自爆攻撃みたいな事をする人たちじゃないと思うんだけど。」
オルフェウス教団をミーアは慈善団体だとは言うけれど、アリシアからはただの犯罪集団みたいな説明を受けていた。
一体どこから齟齬が生じたんだろうか。ミーアが嘘を言っているとは、今は思えないのだが。
「えっと。とりあえずリノンは酷いことをされそうになったんだな。」
「想像した?」
「鬼畜かお前!?」
「鬼じゃなくて猫だから、猫畜かな・・。」
「何だその流行りそうで流行らないネーミングは・・。大体、お前の仲間なんだから少しはデリカシー持ったらどうだ?」
「リノン18歳だから関係無いし。」
「18だったの!?」
「若く見えるから勘違いしてたようね。言っておくけれど、三人の中では私が一番若いんだから。」
正しくは子供なんだから、と言った方がいいが。
この会話の内容を後でリノンに言ったら、ミーアはどうなるんだろうか。
「性魔術ってエロそうだけど。でもリノンがどうして夫を殺害したのかは分からないんだよね。流石に聞けないし。」
「ん?えっと。多分嫌だったからじゃないか?」
「気になるから、後で聞いてみたいんだけど。」
「殺されるから止めた方がいいと思うよ。」
「やっぱりそうなのかなぁ。うーん、やはり処女は大切なのか。」
「しょ、処女は確かに大切だろうけどさ。」
「ねぇ。人間って、どうして処女が大好きなんだろうね。」
思春期の女の子に性がどういうものかを説明させられている気分になってきた。
えっと、ミーアは一体今何歳なんだろうか。
「お前は、他の男とすぐに付き合ったりするのか?」
「私はお兄ちゃん一筋だったから。他の妹は知らないけど。」
「生々しい・・・。」
顔を覆いたくなるが、今は堪えて彼女の話を聞くしかない。
「人間一人生きるにしたって20年以上はかかるんだから、それぐらいの責任は持つんだ。」
適当な事は言ったが、冷静に考えれば僕が20歳に子供を作ったとしても、その子供が成人する頃には僕は40歳である。その後、僕が死ねるまで30から40以上はかかるとすると恐ろしい。
そこで更に孫が出来たとしても、その年数は計り知れなかった。
「・・・ていうか、僕の世界だと40歳独身なんて普通に居るんだよな。」
40歳独身の人。
冷静に考えたら、その人が子供を作ったとしても孫を見ることは出来ないのだ。
例え出来たとしてもその頃は90か100に至って居るだろう。子供が20になった時は既に60歳になっていて。もし子供も40に子供を作るとした場合、親は更に80歳になっている。
80に到達する前に死ぬ可能性の方がずっと高いから・・冷静に考えたら孫なんてそもそも見れない人すら多いのではないか。
「何それ?賢者なの?」
「賢者・・。」
うーん。何だか、物凄く胸が苦しくなってくる。
そもそも20年後の僕なんて考えたくも無いのだが、この世界では晩婚化とかありえるんだろうか。
いや、それ以前に子供が成長する前提で言えば、孫が10歳になったら・・・80歳から90になっているではないか。
「冷静に考えたら少子高齢化ってかなりやばいんだな・・。」
「何それ?」
「僕の世界で起きている災害みたいなもん。」
「はぁ・・。」
そもそも僕が居た世界で僕が100歳まで生きていられる自身はほぼゼロだし。
そんな事してまで人生に未練はないし歴史の本の中に残りたいとも思っていない。
100歳の老人なんて、そんなのは金さんと銀さんだけで十分お腹いっぱいなんだよ僕は。




