表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒悦のフリントロック  作者: 猫丸 玉助
第2章 二つの世界を繋ぐモノ
20/46

第18話 悪夢、再び・・・

翌日、私たちは目覚めると、支度を整えてから、スネイルがいるであろう聖堂へ再び赴いた。

付近に来ると、グレースさんとシーデさんとは一旦別れ、一人、聖堂内へと歩を進める。


自らが、提示した作戦とはいえ、酷く気分が乗らない・・・。

またあの男と、話さなければならないと思うだけで、気持ちが沈み込む。

でも、これは私が、やらなければならない事だ・・・。

これからの作戦に必要な事だということもあるが、何より、今まで色々な事から逃げ続けてきた自分を変える為に、大事な事だと感じる。


あれこれ考えている間に、あっという間に、聖堂の入り口の大扉へ辿り着いてしまう。

大きく深呼吸をしてから、大扉を押し開けた。


今日も聖堂内は大勢のヒトで賑わっていた。

しかし、目当ての男の巨体は、そんな人混みの中でもすぐに見つける事が出来た。


その男の元へ、重い足取りで真っ直ぐに進んでいく。


「こんにちわ・・・。スネイル」


近くに来ても、気がついていないスネイルに、細々とした声で呼び掛ける。

スネイルはすぐに、その声に気が付き、こちらに振り向く。


「おぅ、ティアか。また今日もお祈りに来たのか? それとも、俺に会いにでも来たのか?」


スネイルは、嬉しそうに大声を上げた。

こういう。自信過剰な所も変わっていない・・・。


「え、ええ・・・。今度、少し二人で、お酒でもって思って、予定を聞きに来たの・・・」


「そうかそうか。それは、楽しみだな」


そう言って、スネイルは品定めでもするかの様な視線を送ってくる。

その視線に憎悪感が高まる。

憎悪感を押さえつつ、スネイルの非番の予定を聞き出す事には成功する。


「そうなのね・・・。少し、予定が合いそうにないわね」


「こっちは別に、来週とかでも、構わないがーー」


「いえ、私は用事で少しの間、王国を離れなければならないのよ。困ったわね・・・」


勿論、この流れは計画通りである。

こちらの思惑通りの、ある時間にある場所で、約束を取り付ける事が目的だからだ。

暫く、スネイルに考える仕草を見せてから、再び口を開く。


「もし、出来たら・・・明日の夜、ここで飲むっていうのは出来ないかしら?」


明日の夜、それは彼が夜間の警備の日である。

彼の性格と地位を踏まえれば、これを受けてくるという自信があった。

夜間の警備が、とても暇という事と、彼は真面目とは、ほど遠いヒトと言う事も踏まえての提案だ。


「明日の夜か・・・。」


そう呟いて、彼は少し考えていた。

流石に、少し強引な提案だったか、と思い掛けた時。


「よし、じゃあそうしよう。夜の警備など暇だしな。それになんたって、俺はここのトップだからな! 文句など言われることない」


彼はそう言うと、高らかに笑って見せた。

彼の傲慢すぎる性格は、昔と変わっていない様だ・・・。


「あ、それと、もう一ついいかしら?」


「なんだ?」


「私は、次の朝にそのまま王国を出る予定なのよ。だから、横に馬車を停車させたいからーー」


「わかった。警備を少し減らしておこう。俺の指示で何人か非番にしておく。これでいいか?」


想像以上に理解が早くて助かった。

しかし、女の部分を使って騙している事に、不快感を覚える・・・。


そして、明日の夜、時間を決めてから、私は聖堂を後にした。

外へ、出てから私は、大きく息を吐き出した。

少し、足が震えている気がした。



「どうでしたか?」


そして、二人の元へ戻ると、グレースさんが不安な眼差しで私に尋ねてきた。


「ええ。何とか作戦通りに、約束を取り付けて来たわ。明日の夜にね」


「さっすがっす! ちょっと強引な気がしてたからダメかと思ってたっんすよ~」


シーデさんも安堵に胸を撫で下ろしている様子だった。

どさくさに紛れて、少し毒を吐かれた様な気もしたが・・・。


「彼の傲慢な性格は、まったく変わっていない様だったから・・・。それが逆に助かったわね」


先程の様子から、変わっていない所か、権力を得た分、余計酷くなっている様な気さえする。

しかし、何はともあれ、これで作戦の準備は整える事は出来た。


「じゃあ、取り合えず用も済んだから、ご飯でも食べに行かないっすか?」


シーデさんは、待っていたとばかりに嬉しそうに尻尾を振り回して言った。

本当によく食べる子なんだ・・・。


「もう、シーデちゃん、王国来てからそればっかりじゃないですか・・・」


そんなシーデさんの発言にグレースさんが静かに咎める様に呟いた。

しかし、そんあ言葉とは裏腹にどこか、いつもの事だ、といった様子だ。

その様子から、二人の新密さを感じる事が出来る。


「いえ、行きましょう。私も丁度、喉が乾いた所だったから」


しかし、私もその提案には賛成だ。

とりあえず、不安の種が解消され、忘れていた空腹感も顔を出していた。

それに、少し、気持ちを落ち着かせたいところでもあったから・・・。







「どうでさ?! 旦那、何か見えるでさか?」


ドミヤは森の茂みに身を隠しながら、筒型の単眼鏡を覗きこんでいる自分を、急かす様に言葉を発した。

緊迫状態の中、矢継ぎ早に放たれるドミヤの言葉に、少し苛立ちを感じる。


「うるさいな。ちょっと待ってくれ・・・」


少し乱暴な返答に、ドミヤはブツブツ文句を言いながらも口を紡いだ。

何故、現在、この様な状態にあるかというと、それは少し前の出来事だった。



そろそろ、目的の場所に着く頃かなと思い、馬を走らせていると、遠方から激しい轟音が聞こえたのである。

自分の記憶に間違いがなければ、それは火竜の咆哮に酷使している様に思えた。


直ぐ様、ドミヤとユノに馬から降りるように指示を飛ばし、身を隠しながら辺りを見回した。

すると、前方の上空に薄く煙が立ち登っているのが、見えたのだった。

そして、状況を把握する為、辺りが見渡せそうな高所に移動し、今に至るわけだ。



すると、単眼鏡である物を捉えたのと同時に、隣のドミヤが再び、絞るように声を発した。


「旦那・・・微かにヒトの声が聞こえるでさ・・・」


今、自分の視線の先には、ドミヤの言葉を明確なものにする光景が広がっていた。

燃え上がる大地、咆哮を上げる火竜、陣形を組んで応戦する衛兵達・・・。


最悪だ・・・。

恐らく、あの部隊がダニーの部隊と見て間違いないだろう。


「・・・ダニーの部隊と火竜が闘っているみたいだ・・・」


暗くゆっくりとした口調で、今得た情報を二人に告げる。

その言葉を聞いて二人は、驚きに目を見開いていた。


「・・・はは、火竜でさか・・・これは不味いでさね・・・」


ドミヤは乾いた笑いを漏らしながら、肩を落としている。

落胆したい気持ちは自分も同じであった・・・。


まさか、また火竜と遭遇する事になるとは・・・。

こちらは、まだ見つかっていないのだが、目的の人物があそこにいる以上、スルーする訳にもいかない。

それでは、ここへ何をしに来たのか、わからなくなってしまう。


遠目に見えた火竜は前の個体よりも、かなり小ぶりの様ではあった。

しかし、一瞬見えた戦況は、お世辞にも良いものではなかった。

殆んど、壊滅状態と言っても過言ではないだろう。


この状況、どうするべきなのか・・・。

ふと、脳裏にイヴァの村での惨劇が過って行く。

全てを焼き尽くしていく紅蓮の炎。その巨体に為す術もなく押し潰されていく人々。


駄目だ・・・とてもじゃないが、簡単にどうにかなる相手ではない。

それにあの様子では、ダニーも既に無事ではないかもしれない・・・。

ここは、一旦、王国に戻るべきだ。

そう考えていた時。


「レンガ、それを貸して」


突然、ユノが手にしていた単眼鏡をゆっくりと奪っていった。

そして、先程、自分が見ていた方角へ向けて覗き込んでいる。

興味本意で見たいのだろうか。

そんなユノから視線を逸らし、ドミヤにゆっくりと口を開いた。


「・・・仕方ない。一旦、退こう・・・。あそこに飛び込むのは危険すぎる・・・」


「それじゃあ、ここへ来た意味が、と言いたいとこでさが・・・それがいいでさ。火竜を相手にするのは危険すぎるでさ・・・。姉さんもいないでさし」


そうなのだ、グレースがいないという事は、深傷を負う事がそのまま死に直結する可能性が高い。

小さいとはいえ、火竜相手に無傷で勝利する事など、不可能に近いだろう・・・。

そう考えて、まだ横で単眼鏡を見ているユノを促そうと、肩へ手を伸ばすと。


「レンガ、あれくらいなら、私がどうにか出来る・・・」


思いがけないユノの発言に、伸ばした手が止まった。

どうにか出来るだって?

ドミヤはその言葉に唖然とした表情を浮かべていた。

恐らく、自分も同じ様な顔をしている事だろう。


「どうにか出来るって・・・あれは火竜だぞ? わかってるのかユノ?」


「うん。よく知ってる」


「こんな時に、下らない冗談はやめるでさよ・・・。あんたみたいな、ちっこいのがどうにか出来るわけないでさよ・・・」


ドミヤは呆れ顔でため息を漏らしたが、ユノは首を左右にブンブンと振った。

しかし、ユノは冗談言う性格ではない事はわかっている。

何か、意図があるのだろうか・・・。

そんな事を考えていると、ユノがゆっくりと口を開いた。


「だって、私は前まで、あれと闘うという事が生かされている目的だったから・・・」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ