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黒悦のフリントロック  作者: 猫丸 玉助
第2章 二つの世界を繋ぐモノ
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第15話 見つかった地下遺跡

「お待たせしたね」


男はそう言うと手にしている紙をカウンターの上に広げた。

それは、王国周辺の地図であった。


「ダニーが出掛ける前に、何かの時の為に目的地を聞いておいて良かったですよ。今回の遠征は、長くなるかもって言ってたんでね。ここが、そうです」


男はそう言って、王国の北東の土地を指で指し示した。


「本当は、こんな事はホイホイ教える訳にはいかないんだがね・・・。王国の貴族さんの急用だし、それに何よりドミヤも一緒だから特別にな」


そして、男はこちらに軽く笑いかけて見せた。

俺は貴族を演じる為に、無表情に少し頷いて見せる。

隣のドミヤは笑いながら礼の言葉を口にしていた。

そこで、男に少し質問を投げ掛けてみる。


「ダニーは、そこにどんな命で赴いているんだ?」


すると、男は顎の髭をクシャクシャと触りながら、何かを思い出す様に唸った。


「うーん・・・。確か、地下に謎の空洞が見つかったとか、何とか言っていた気がしますね・・・」


地下の空洞?

何かの調査なのだろうか?

そこで、少し突っ込んだ話題を振ってみる事してみる。


「遺跡の調査か何かか?」


男はその問いに、あっ、と何かを思い出した様に声を上げた。


「そうだ! 思い出しやした! 採掘場から、古代の物と思われる遺跡が見つかったから、その調査の第一人者でって話でしたよ。まぁ、所謂、ただの歴史の調査ですね」


それは恐らく、ハリーが言っていた、古代の文明と言うものなのだろう。

だとすると、ただの歴史の調査などと軽いモノではないと、睨んでいい筈だ・・・。

そこに、行けば古代文明についても何かがわかるかもしれない。


「旦那様、どうしますでさか? こちらに行ってみますでさか?」


ドミヤが自分に丁寧に話している事に、かなりの違和感を感じつつも、それに無言に頷いて見せる。


「おやっさん。この地図と同じものはないでさか?」


「あーいいよ! それを持って行っちまって! また今度ゆっくり話そうやドミヤ!」


男はそう言うと、手の甲をブンブンと振ってから豪快に笑った。

この人は乱暴そうな見た目とは、裏腹にとても優しい人なのだと思った。

そんな人を騙している事に、少し罪悪感を感じてしまう・・・。


「じゃあ、おやっさん! ありがとでさ! 助かったでさよ! また来るででさね~」


ドミヤの挨拶に続いて、最後に少しだけ頭を下げてから、ユノを連れて工房を後にした。



そして、すぐに宿へ帰還して、一目散に服を着替えた。


「ふ~。やっと、落ち着けるな・・・」


そんな大した時間ではなかったが、凄まじい疲労感があった。

着替えると、そのままベッドに転がった。


「お疲れさまでさ。あいは割と楽しかったでさよ。ぷぷ・・・」


また、あの格好の事をぶり返して来そうな雰囲気を感じて、話題を変える。


「ユノは大丈夫か? 疲れてないか?」


「私は、大丈夫。少しお腹が減ったくらい・・・」


ユノは先程と同じ格好のまま、椅子に腰かけていた。


「ユノは着替えなくてもいいのか?」


「うん。このままでいい・・・」


そんなやり取りに、ドミヤが割って入ってきた。


「何をそんなに着替えさせようとしてるんでさ? 旦那・・・下心があるんじゃないでさか?」


ドミヤがジト目をこちらに向けながら、とんでもない事を言い出した。


「ばっ!! 違うよ! 着替えるタイミングを見失ってるのかと思って言っただけだよ!」


「怪しいでさね~。旦那はいつも、これだけの女に囲まれてるのに、何もしようとしない所が、逆に怪しいんでさよね~ムッツリな匂いを感じるでさ」


「誰がムッツリだ! それに、その言い方だと何かされたい様な物言いにも聞こえるぞ? ねぇ、ドミヤさん」


ドミヤの挑発には乗らずに、逆にこっちも反撃を試みてみる。


「なっっ!! 何を言ってるでさ!! そんな訳あ、あるわけないでさ!! この変態男!! セクハラでさ!!」


耳まで真っ赤になって騒ぎ立てているドミヤを、大笑いしながら見ていると、ユノが小さな声で呼び掛けてきた。


「どうした? ユノ?」


「うん・・・。レンガ、下心って何?」


この状況でとんでもない質問が飛んできた・・・。

すると、ドミヤが。


「ユノ、下心って言うのはでさねーー」


「いいから! ユノに変な事を教えるなって!」


トントンッ!


すると、突然ドアをノックする音が聞こえた。

しまった・・・騒ぎすぎたか?

隣の部屋の人が苦情でも言いに来たのかもしれない。


「ちっ! 良いところで邪魔が入ったででさね・・・」


ドミヤの悪たれを聞きながら、腰を上げてドアへと歩を進めた。

そして、ドアの前で対面しているであろう人物に声を掛けてみる。


「はい。どちら様でしょうか?」


すると、ドア越しに小さな男の声が聞こえた。


「レンガさんですね? 私はエギル様から申し付けられた者です」


それは、恐らくエギルが出発時に言っていた、王国に潜伏している解放軍の者で間違いないのだろう。

男に返答を返しながら、ドアを開いた。

そこには、フードを深々と被った男が一人立っていた。


「昨日、ガラティア様の一行も村を発ったとの事です。明日には、王国に着くかと思います」


「そうなんですね。態々、報告ありがとうございます」


しかし、どうやって連絡を取り合っているのだろうか?

まさか、電話があるわけはないだろうし・・・。

すると、男は小さな篭を、此方へ手渡してきた。


「これを、部屋の窓へ、備え付けて下さい」


その篭の中には一匹の小さな鳥が入っていた。

その後の、男の説明からして、それは所謂、伝書鳩と同じものだった。

連絡がある際は、足に手紙を括り着けて飛ばしてくれとの事だ。


「では、私はこれで・・・。」


男がそう言って、去ろうとするのを引き留めた。


「自分達は明日、王国の北東へ技師に会いに行く予定なんです。この事を、ガラティアさん達へ伝えて貰えますか?」


「かしこまりました。では、王国に入り次第、お伝えしておきます」


そして、男はこちらへ一礼すると、その場を去って行った。

エギルさんの手回しの早さに感謝した。

男が去った事を確認して、ドアを閉め、篭を持って部屋へと戻る。


「えらく長かったでさね? なんでさ? それ・・・」


そう言って、ドミヤが自分が手にしている篭を覗き混んだ。


「解放軍の人だった。これは、連絡手段だってさ」


「ああ、そう言うことでさね。連絡鳥でさね」


ドミヤは鳥の連絡手段を知っている様だった。

この世界では割とメジャーな手段なのかもしれない。

ユノもドミヤの後ろから、恐る恐る覗き混んでいた。


「大丈夫だよ、ユノ。怖い生き物じゃないから」


これから、部屋にいることになるであろう、小さな仲間の不信感を拭っておく。


「・・・これは、美味しいの?」


どうやら、色々順序立ててユノに説明する必要がありそうであった・・・。





翌朝、再び王国の外へ赴くべく、馬に跨がっていた。


「旦那、ほんとにその格好でいいんでさか?」


ドミヤがニヤついた表情を浮かべて、こちらを覗き混んで来る。


「これで、大丈夫だろ? それに、よくよく考えれば、このコートを着けていれば、王国の騎士団に見える筈だろ」


そう言ってから、着ているコートを叩いて見せる。

このコートは元々、騎馬隊のリーダーから拝借した物なのだ。

これを着ている事で、かなりそれらしく見える筈だ。


「ちっ。バレたでさか・・・。」


「・・・何か言ったか?」


「何でもないでさ・・・」


そう言って、ドミヤはつまらなさそうに、そっぽを向いた。


取り合えず、必要になりそうな物は昨日のうちに買い足しておいた。

今回はグレースがいない為、治療道具を少し多目に買い、後、道中の食料と携帯型の筒型の望遠鏡も買っておいた。

ダニーの一行は恐らく遠征の部隊が組まれている筈だ。

勿論、素性を偽って、穏便に接触するつもりだったが、万が一という事もありえる。

グレースの治癒術がない以上、戦闘は何としても避けたい所ではあるが・・・。


そして、いつも通りユノが目の前にチョコンと跨がる。

もうこの光景もお馴染みになってしまった様な気がする。


しかし、前回の村の出発時もそうだったのだが、今も、心なしかユノに元気がない様な気がした。


「ユノ、体調は大丈夫か?」


「うん・・・。大丈夫」


聞いてはみるものの、前と同じ様な返答が返ってくるだけだった。

少し心配ではあったが、体調を崩しているのではないようだ。


「ほらっ! 旦那、行くでさよ!」


「わかった。行こう」


ドミヤに促されて、馬の腰を蹴って王国の外へと飛び出した。

晴れ渡った青空の下を、2頭の馬が滑走して行く。



しばらく、馬に揺られていると、ユノが小さく話し掛けてきた。


「・・・ねぇ、レンガ・・・」


「なんだ? ユノ」


「みんな・・・私の為に大変な事をしてくれているんだよね?」


「うーん、まぁ、そうなるな。でも気にしなくて大丈夫だぞ。嫌々やってやつはいないんだからさ」


暫く、間が空いてから、ユノは再び口を開いた。


「ねぇ、レンガ・・・。私は、こんな時、どうすれば・・・いいの?」


ここ最近のユノの、元気のない理由がわかった気がした。

みんなに罪悪感を感じていたが、それをどうしていいのかわからなかったのか・・・。


「じゃあ、次みんなに会ったら、笑顔でありがと、って言えばいいさ」


「・・・そっか。わかった」


そして、再び風を切る音だけになった。

すると、ユノは突然、此方へ振り返ると。


「・・・レンガ。ありがと・・・」


微笑みながら、短くそう言った。

それは、今まで見たことのないくらいの、澄んだ笑顔な気がした。


「いいよ。よし、じゃあ頑張るぞ! ユノ!」


「うん!」


そして、ユノは再び正面に向き直った。

蹄で土を巻き上げながら、2頭の馬は更に速度を上げて突き進んでいった。




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