表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/17

第6話 三日分の命

帰還車両の中に、誰も話す者はいなかった。


行きと同じ黒い装甲車両。

窓は小さく、外の景色はほとんど見えない。

壁には救助装備と制圧用装備が戻され、使われた装備だけが傷を残していた。


獅堂鉄平(しどうてっぺい)の大型防弾シールドには、弾痕が三つ。


黒瀬玲央(くろせれお)の低出力スタンバトンには、床に投げつけた時の擦り傷。


灰原(はいばら)ナギの特殊解除ツールには、爆発物のケースに触れた時の細かな焦げ跡。


真神(まがみ)アキラの通常拘束具は、予備分まで使い切っていた。


任務は成功した。


園児二十六名。

職員六名。


全員、生存。


犯人八名。


全員、確保。


爆発物三箇所。


無力化。


結果だけを並べれば、完璧に近かった。


だが、車内に流れている空気は、勝利のそれではない。


黒瀬は左腕のWRISTを見た。


《任務成功》

《高危険救助任務》

《残刑日数加算:+3》

《現在残刑日数:40》


三十七日だった数字が、四十日に変わっていた。


子どもたちを救ったことで、黒瀬の命は三日延びた。


三日。


たった三日。


それでも、死刑囚にとっては、確かに未来だった。


「三日か」


伊吹透(いぶきとおる)が、向かいの座席でぽつりと言った。


いつもの軽い声ではなかった。


黒瀬はWRISTから目を上げる。


伊吹も自分のWRISTを見ていた。


「園児二十六人と職員六人で、三日」


伊吹は笑った。


「国家の値段設定って、すごいね」


「笑うところじゃない」


黒瀬が言う。


伊吹は肩をすくめた。


「笑ってないと、胃に来るんだよ」


それ以上、誰も続けなかった。


灰原は自分の手元を見ていた。


特殊解除ツールを握っていた指先に、まだ力が残っているようだった。


獅堂はシールドを床に立てかけ、弾痕を黙って見ている。


真神は目を閉じていた。


眠っているようにも見える。


だが、眠ってはいない。


車内の振動。

空調の音。

誰かの呼吸。


そのすべてを聞いているような顔だった。


黒瀬は首元のNOXに触れた。


黒い制御環は、何もなかったかのようにそこにある。


少し前まで赤く光っていた。


命令違反。

処分審査。

統括官判断。


すべて記録されている。


黒瀬の行動も。

白羽美月(しらはみつき)の判断も。


全部、国家のどこかに残る。


「黒瀬ちゃん」


伊吹が言った。


黒瀬は視線だけを向ける。


「次もやるの?」


「何をだ」


「命令違反」


車内の空気が少しだけ変わった。


灰原の目がわずかに動く。

獅堂もシールドから視線を上げる。

真神は目を閉じたままだった。


黒瀬は答えた。


「必要ならな」


伊吹は少しだけ笑う。


「だと思った」


「不満か」


「いや」


伊吹はWRISTの表示を消した。


「分かりやすくて助かる」


その言葉の意味を、黒瀬は聞かなかった。


移送車両が地下へ入る。


外の光が消え、車内の照明だけが残った。


数分後、車両は特務公安庁地下第五区画へ到着した。


後部ハッチが開く。


白い照明。

無機質な床。

壁面の認証ゲート。


出動前と同じ場所だった。


だが、戻ってきた時には、少しだけ違って見えた。


ここは基地ではない。


帰る場所でもない。


ただ、死刑囚を生かして使うための、広い檻だった。


「降車してください」


職員の声が響く。


黒瀬たちは車両を降りた。


すぐに技官たちが近づいてくる。


「NOX生体ログ確認」


「装備損耗確認」


「医療スキャンへ」


事務的な声が重なる。


獅堂のシールドは弾痕を確認される。

灰原の特殊解除ツールは、別の技官が慎重に状態を調べる。

真神の拘束具は、使用数と残数だけが記録される。


WRISTの任務ログは、すでに中央へ送られている。


まるで、任務に行ったのが人間ではなく、装備一式だったかのようだった。


黒瀬は医療スキャン用の白い区画に立たされた。


正面の壁に、身体状態が表示される。


《心拍:正常範囲》

《血中酸素:正常》

《筋損傷:軽度》

《外傷:なし》

《精神負荷:上昇》


技官が端末を見る。


「問題なし。次へ」


黒瀬は医療区画を出た。


廊下の先に、美月が立っていた。


黒い制服。

白いラインの入ったコート。

硬い表情。


いつも通りに見えた。


だが、黒瀬には分かった。


彼女は、怒っている。


「黒瀬玲央」


美月が言った。


「報告室へ」


「統括官、ここで済ませないのか?」


「済みません」


短い返答だった。


黒瀬は歩き出した。


報告室は、作戦室よりも狭かった。


中央に机。

向かい合う二つの椅子。

壁には記録用のカメラ。

天井には音声記録装置。


取り調べ室にも似ていた。


黒瀬は椅子に座る。


美月は向かい側に座った。


机の上に、任務記録が立体表示される。


ひばりの森こども園。

遊戯室。

突入時の映像。

WRISTログ。

NOX違反記録。


美月は映像を止めた。


黒瀬が待機命令を無視し、遊戯室へ踏み込む瞬間だった。


《統括官命令:待機》

《隊長行動:突入》

《命令逸脱ログ:成立》


美月は言った。


「あなたは、私の命令を無視しました」


「さっき聞いた」


「記録上、もう一度確認しています」


「なら、そうだ」


黒瀬は映像を見た。


自分が扉へ向かっている。

獅堂が続く。

灰原が爆弾へ向かう。

真神が入口側の犯人へ動く。


あの時、待てばどうなっていたか。


それは誰にも分からない。


だが、黒瀬には一つだけ分かっていた。


あの子どもは、爆弾の前に引きずり出されていた。


「なぜ、事前に申請しなかったんですか」


美月が聞く。


「何をだ」


「待機命令解除の申請です」


黒瀬は美月を見た。


「間に合わない」


「判断が早すぎます」


「現場では遅いよりいい」


「早すぎる判断で人が死ぬこともあります」


美月の声は硬かった。


黒瀬は黙った。


その言葉は正しい。


焦って動けば、人質が死ぬ。

爆弾も起動する。

犯人も暴発する。


黒瀬はそれを知っている。


それでも、動いた。


美月は続ける。


「今回、あなたの判断で園児は救われました。結果としては成功です」


「なら問題ないな」


「あります」


即答だった。


「次に同じことをすれば、私は処分申請を出します」


黒瀬は目を逸らさなかった。


「分かっている」


「分かっているようには見えません」


「必要なら、また動く」


美月の表情がわずかに変わる。


怒りというより、呆れに近かった。


「あなたは、自分が処分される可能性を理解していますか」


「している」


「NOXは警告だけでは終わりません」


「知っている」


「死ぬかもしれないんですよ」


「もう死刑囚だ」


美月は言葉を止めた。


その沈黙が、報告室に落ちる。


黒瀬は静かに続けた。


「俺は、生き残るために行ったわけじゃない」


「では、何のためですか」


「子どもが前に出された」


同じ答えだった。


それ以上、説明する気はなかった。


美月も、それ以上聞かなかった。


机の上の映像が切り替わる。


遊戯室から園児たちが避難する映像。


獅堂のシールドの後ろを、小さな子どもたちが歩いていく。


女の子が獅堂を見上げている。


音声は記録されていない。


だが、獅堂が一瞬だけ固まったことは、映像だけでも分かった。


美月はそれを見て、少しだけ目を伏せた。


「任務結果は評価します」


「そうか」


「ですが、あなたを信用したわけではありません」


「それでいい」


「よくありません」


美月は言った。


「隊長として動くなら、統括官の判断を無視しないでください」


「現場を見ていない判断なら、従えない時もある」


「私は映像もログも見ています」


「匂いはしない」


美月が眉を寄せる。


黒瀬は続けた。


「泣き声の近さも、爆弾の距離も、犯人の呼吸も、画面越しには遅れる」


「だから命令を無視したと?」


「そうだ」


美月は黒瀬を見つめた。


そして、小さく息を吐く。


「あなたは危険です」


「よく言われる」


「冗談ではありません」


「俺も冗談で言っていない」


沈黙。


報告室のカメラが、二人を記録し続けている。


やがて、美月は端末を操作した。


《第6部隊リコード初任務報告》

《任務結果:成功》

《命令逸脱:記録》

《処分申請:なし》

《統括官所見:継続監視》


黒瀬はその表示を見た。


「継続監視か」


「当然です」


「最初から監視されている」


「より厳しく、です」


「面倒だな」


「あなたが面倒にしたんです」


美月は立ち上がった。


「報告は以上です。隊舎に戻ってください」


黒瀬も立ち上がる。


扉へ向かいかけたところで、美月が言った。


「黒瀬」


「何だ」


「園児たちを救ったことは、事実です」


黒瀬は振り返らない。


美月は続けた。


「ですが、それであなたの罪が消えるわけではありません」


黒瀬は少しだけ黙った。


「知っている」


それだけ答えて、報告室を出た。


隊舎に戻ると、伊吹が共有スペースのソファに寝転がっていた。


靴を脱ぎ、片足を背もたれにかけている。


「おかえり、黒瀬ちゃん」


「寝るなら部屋へ行け」


「まだ寝てない。死刑囚の社会貢献について考えてた」


「答えは?」


「社会は助かる。本人は疲れる」


黒瀬は無視して歩き出した。


伊吹は起き上がる。


「怒られた?」


「いつも通りだ」


「まだ一日目なのに、もう“いつも通り”があるのすごいね」


黒瀬は答えない。


共有スペースには、灰原もいた。


テーブルの上に小型ドローンを置き、無言で分解している。


任務から戻ったばかりなのに、もう整備を始めていた。


「壊れたのか?」


黒瀬が聞く。


「少し」


灰原はドローンの羽根を外した。


「遊戯室のカーテンに擦った」


「使えるか?」


「直す」


「そうか」


灰原は顔を上げずに言った。


「次は、もっと小さいのがいる」


「ドローンか」


「そう。あと、熱に強いカメラ」


「申請しろ」


「通る?」


「必要ならな」


灰原は一瞬だけ黒瀬を見た。


「必要」


「なら出せ」


「分かった」


そのやり取りを聞いて、伊吹が笑う。


「ナギちゃん、黒瀬ちゃんのこと少し信用した?」


灰原は工具を持ったまま、伊吹を見る。


「してない」


「即答だ」


「でも、指示は早い」


伊吹が目を細める。


「それは結構な褒め言葉だね」


「褒めてない」


灰原はまたドローンに視線を戻した。


黒瀬は共有スペースの奥を見る。


獅堂がいた。


一人で壁際のベンチに座り、両手を組んでいる。


目の前には、使い終わった大型シールド。


弾痕の残ったそれを、ずっと見ていた。


黒瀬は近づく。


「獅堂」


獅堂は顔を上げた。


「なんだ?」


「怪我は?」


「ない」


「腕は」


「平気だ」


黒瀬はシールドを見る。


「三発受けた」


「軽い方だ」


獅堂は短く言った。


そして、少しだけ間を置く。


「子どもは」


「全員、生きてる」


「そうか」


獅堂は目を伏せた。


その顔からは、何を考えているのか読みづらい。


だが、黒瀬には分かった。


あの女の子の言葉が、残っている。


おじさんも、悪い人?


でも、助けてくれたから。


いい人だよ。


獅堂は低く言った。


「変なガキだった」


「そうだな」


「俺を見て、いい人だとよ」


獅堂は自嘲するように笑った。


「見る目がねえ」


黒瀬は答えた。


「子どもは、たまに見えるものしか見ない」


獅堂が黒瀬を見る。


「どういう意味だ」


「あんたは今日、子どもを守った」


獅堂は黙った。


黒瀬は続けない。


それ以上は、必要なかった。


真神は少し離れた場所に立っていた。


壁にもたれ、腕を組んでいる。


視線は黒瀬へ向いている。


「何だ」


黒瀬が聞く。


真神は言った。


「なぜ止めた」


「何を」


「犯人を殺せば早かった」


伊吹が肩をすくめる。


「出た。真神くんの効率論」


真神は伊吹を見ない。


黒瀬は真神を見る。


「人質の近くで死体を増やせば、現場が崩れる」


「それだけか」


「それだけで十分だ」


真神は黙った。


黒瀬は続ける。


「ここは救助部隊だ」


「死刑囚の、だろ」


「それでもだ」


真神はしばらく黒瀬を見ていた。


やがて、視線を外す。


「面倒な部隊だ」


「最初からそう言った」


「聞いてない」


「今聞け」


真神は小さく息を吐いた。


返事はしなかった。


だが、部屋を出てもいかなかった。


伊吹がソファの背にもたれた。


「いやあ、初日からなかなか濃いね。命令違反、爆弾処理、人質救出、子どもからの道徳判定」


「黙ってろ」


黒瀬が言う。


「はーい」


伊吹は軽く手を上げた。


だが、すぐに真面目な顔になる。


「でもさ、黒瀬ちゃん」


「何だ」


「今日、あの子たちを助けたのが警察じゃなくて僕らだって、誰も知らないんだよね」


共有スペースが静かになる。


伊吹は続けた。


「ニュースでは、警察特殊救助班が救出。犯人全員逮捕。以上」


灰原がドローンをいじる手を止める。


獅堂はシールドから視線を外さない。


真神は何も言わない。


黒瀬は短く答えた。


「知らなくていい」


伊吹は黒瀬を見る。


「そう?」


「ああ」


「感謝されたいわけじゃない?」


「必要ない」


伊吹は少しだけ笑った。


「黒瀬ちゃんらしいね」


「俺の何を知ってる」


「知らないから、観察中」


伊吹はそう言って、またソファに寝転がった。


その時、共有スペースの壁面モニターが起動した。


表示されたのは、美月だった。


『全員、聞いてください』


隊員たちがそれぞれ顔を上げる。


美月は画面越しに言った。


『本日の任務結果により、第6部隊リコードの継続運用が決定しました』


伊吹が小さく口笛を吹く。


「おめでとう。僕ら、まだ使ってもらえるって」


美月は無視した。


『高危険救助任務成功により、参加隊員全員に残刑日数三日が加算されています』


全員のWRISTに、再び通知が走る。


《残刑日数加算:+3》

《反映完了》


獅堂は見なかった。


真神も見なかった。


灰原は一瞬だけ見て、すぐにドローンへ戻った。


伊吹だけが、表示を眺めて笑った。


「三日分の延命、ありがたく使わせていただきます」


美月は続ける。


『ただし、今回の任務では隊長による命令逸脱が確認されています。今後同様の行為があった場合、処分申請を行う可能性があります』


「可能性」


伊吹が小さく呟いた。


黒瀬は何も言わない。


美月の視線が、画面越しに黒瀬へ向いた。


『次の任務まで待機。隊舎内での移動は許可します。外出は不可。通信、面会、記録閲覧は申請制です』


「自由な檻だね」


伊吹が言う。


美月は淡々と返した。


『檻であることに変わりはありません』


それだけ言って、通信は切れた。


共有スペースに、再び静けさが戻る。


黒瀬は天井を見た。


白い照明。

監視カメラ。

空調の音。


拘置施設の独房よりは広い。


だが、空はない。


「黒瀬ちゃん」


伊吹が言った。


「今度は何だ」


「明日、朝食って出るのかな」


黒瀬は伊吹を見る。


「知らん」


「死刑囚救助隊の初任務成功祝いとかない?」


「あると思うか」


「ないね」


伊吹は笑った。


灰原が小さく言う。


「食堂は二十時まで」


伊吹が顔を上げる。


「ナギちゃん、そういうの知ってるんだ」


「案内に書いてた」


「じゃあ行こうよ。祝勝会じゃなくて、生存確認会」


獅堂が立ち上がる。


「腹は減った」


真神も壁から離れる。


「食える時に食う」


灰原は分解していたドローンを手早く組み直し、立ち上がった。


伊吹が黒瀬を見る。


「黒瀬ちゃんは?」


黒瀬は一瞬だけ考えた。


そして言った。


「行く」


伊吹が笑う。


「決まり」


五人は共有スペースを出た。


廊下には監視カメラが並んでいる。


首にはNOX。

腕にはWRIST。

外へ出る自由はない。


それでも、五人は同じ方向へ歩いていた。


まだ仲間ではない。


信頼もない。


ただ、同じ任務から帰ってきた。


それだけだった。


同じ頃。


特務公安庁上層区画。


白羽宗一郎(しらはそういちろう)は、任務記録を見ていた。


画面には、遊戯室へ踏み込む黒瀬の姿が映っている。


待機命令を無視し、赤く光るNOXを首につけたまま、子どもへ向かって走る男。


宗一郎は映像を止めた。


黒瀬が、起爆端末を持つ犯人へ踏み込む瞬間だった。


部屋には、宗一郎以外に誰もいない。


画面の下には、任務結果が並んでいる。


《第6部隊リコード初任務》

《人質三十二名生存》

《犯人八名確保》

《隊長命令逸脱:あり》

《統括官処分申請:なし》

《法務省監査ログ:転送済》


宗一郎は、しばらく画面を見ていた。


統括官判断。

処分申請。

監査ログ。


制度の中に残された、いくつもの承認と記録。


それらは本来、死刑囚部隊を暴走させないための鎖だった。


だが、宗一郎にとっては違う。


それは、現場の速度を奪う重りだった。


宗一郎は、画面に表示された一文を見た。


《統括官判断:処分申請なし》


「美月」


彼は静かに娘の名を呼んだ。


怒りではない。


失望でもない。


ただ、確認するような声だった。


「まだ、迷うか」


宗一郎は端末を操作し、黒瀬玲央の個人記録を開く。


元内閣危機管理局・特殊即応隊隊長。

部下四名殺害。

死刑確定。

高危険現場指揮適性、極めて高。


宗一郎は小さく笑った。


「やはり、止まらない男か」


その声に、感情はほとんどなかった。


だが、目だけは違った。


興味。


評価。


そして、利用価値を見つけた者の目。


宗一郎は、もう一度映像を再生した。


黒瀬は、起爆端末へ向かっている。


待機命令は出ている。


NOXは警告している。


それでも、止まらない。


宗一郎は呟いた。


「承認を待っている間に、人は死ぬ」


画面の中で、黒瀬が床を蹴る。


「会議をしている間に、国は壊れる」


黒瀬の投げたスタンバトンが、犯人の手首を弾く。


「ならば、迷わない仕組みを作るしかない」


宗一郎は映像を止めた。


そこには、子どもを救う死刑囚の姿があった。


その首には、黒い輪。


極刑囚制御機構《NOX》――ノクス。


宗一郎は言った。


「第6部隊リコード


画面の中の黒瀬は、何も知らない。


自分の初任務が終わったその瞬間から、別の視線に捕まったことを。


宗一郎は最後に、処分申請なしの記録を閉じた。


「面白い部隊になりそうだ」


第6部隊リコードの初日は、まだ終わっていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ