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私の家の壺の中から、時折『転生者』が出てきます。  作者: 溝端翔
リョクが出てきた!

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門番さん、だめかな?

「はあ。ラズ、まだかな」


 ラズが包丁を取りに行って五分ほど経っただろうか。

 なかなか帰ってこないラズを待ちながら、なんとなくツボを鑑定アナリシスしてみた。


『鑑定結果……ランクSS 転生のツボ 時折転生者が出てくるツボ。女神の髪から出来ている。絶対に壊れない』


「転生のツボ?」


 そのとき宿屋の中からラズの慌てた声が聞こえた。


「おまたせー! ていうか走って! ついてきて!」

「え、ええ?」


 リョクは驚きながらもラズの声に従って、立ち上がりラズに続いて走り出した。


「おい! ラズ! 包丁返しなさい!」


 ラズは右手に剥き出しの包丁を持って走っている。後ろから、ぽっちゃりしたラズの父親のブラウンが手をあげて追いかけてきていた。


「ちょっと借りるだけだから!」

「ちょっ! 怒られてるじゃん!」

「いいの! 逃げ切れるから! お父さん足遅いし!」


 しばらくラズについて走っていると、村の門までたどり着いた。


 門の横には一人の門番が立っていた。さっきまで追いかけてきていたラズの父親はいつの間にかいなくなっていた。


「もーんばんさん! とーおーしーてー!」


 ラズは包丁を後ろ手で隠して首をくいっと傾けた。


「ラズちゃんじゃないか。外に出たら危ないよ?」

「大丈夫、今日は強靭な護衛がいるの。この人だよ!」


 ばばーん。と二人の門番に突如紹介されるリョク。少し照れながら、リョクは挨拶をした。


「あ、リョクです」

「なんだ、みない顔だな? いつこの村にきた?」


 槍を持った門番が、リョクの顔を覗き込みながら訝しむ。


「き、今日です」

「なるほどな。北側の門から来た冒険者か……いや、その服装を見ると転生者か」


 やっぱこの服転生者のお決まりなんだ。やっぱりなんかショックだな。


「通してもいいが見たところ武器を持ってないみたいだが?」


 背にも腰にもなんの武器も持っていないリョクを見て、門番は槍で入り口を塞いだ。


「これがあるよ?」


 ラズはリョクに出刃包丁を渡した。


「武器ってなあ。それはただの包丁だろ? そんなもので魔物を退けられると思って……」

「ねえ、お願い?」


 ラズは目をきゅるきゅるさせてお願いする。谷間が強調されて、門番は必死に目を逸らした。


「通して? ちょっとだけだから……?」

「いや……」

「ね? おねがい?」

「あーもう。あまり遠くまで行かない。何かあったら私をすぐに呼ぶ。それが条件だ。さすがのラズちゃんもこれ以上は譲れない」


 ラズの魅了チャームの勝利だった。


「えへへ。ありがとー。なにかあったら絶対助けに来てね!」

「もちろんだ」

「じゃあ行こ、リョク」

「うん」


 手を繋いで門を出た。明らかに門番に睨まれていた。この町でラズに好かれるというのはこういうことなのか。いや、この町以外でもこうなのかもしれない。


 村の外はかなり開けた場所だった。右手には鬱蒼と生い茂る森が見えたが、魔物の姿は一つも見えなかった。


「あれ? 魔物は?」

「うーん、この辺は魔除けの効果があるからあんまりいないかな。だからもっと先に進まないとだね」

「え。でもさっき門番の人が遠くまで行っちゃいけないって」

「いいのいいの。さ、行こ。……あ!」


 急にラズが大きな声を出した。正直びっくりした。けれど、揺れた胸はしっかりと見た。


「カバン忘れちゃった。魔石入れる用のカバン」

「い、いいよ。取れるかもわかんないし。それにこのズボンのポケット大きいから結構入ると思う」

「そっか。それじゃあレッツゴー!」


 広大な草原には明らかに人工的にできたような道が続いていた。


「この道はね、商人さんや冒険者が通る道なの。隣町にまで続いてるよ。といっても隣町に着くまで三日くらいかかるけど」

「じゃあ、着くまでは野宿?」

「途中に魔除けの小屋があったりするけど基本は野宿かな。だからリョクも行くなら食べ物とか飲み物とかちゃんと用意しとかないとだよ」

「そうだったのか。知れて良かったよ。ありがとう」


 しばらく歩いていると、魔物の姿がちらほら見えてきた。


「ほらね、だんだん魔物が増えてきたでしょ? この辺からは魔物が多くて危険だから絶対行っちゃダメって言われてるの」

「そんなとこ来ていいの?」

「だってリョクがいるもん。強化スキル強そうだったし、大丈夫かなって」


 てへっとラズは舌を出した。


 こうなったら絶対にラズを守らないといけない。リョクは目に見えて張り切った。


「あ! あそこにスライムいるじゃん。スライムなら包丁でも倒せるかも!」

「本当だ。じっとしてるな。鑑定できるかな」

「うん! やってみよ!」


 リョクは遠く離れたスライムを視界の中央に捉えて鑑定アナリシスを発動した。


『鑑定結果……ランクF スライム コアを破壊すると粘度のある体は完全な液状と化し死亡する。今のレベル、装備では苦労するが、スキルを使えば簡単に倒せるレベル』


「おお。自分にとって相手がどうなのかも教えてくれるのか。ていうかレベルなんてものがあるのも知らなかった。隠しパラメーターか?」

「どう? 倒せそう?」

「うん。スキルを使えば倒せるって」

「よかった!」

「じゃあちょっと行ってくる。ここでじっとしてて」

「うん。行ってらっしゃい。気をつけてね!」


 リョクの心はキュンとなった。完全にラズに心を掴まれている。もはやリョクはラズの虜だ。


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